松尾光太郎 de 海馬之玄関 FC2版 | 海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙
こんにちは。ご来訪ありがとうございました。
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オバマ大統領に対する期待と不安が渦巻いている。少なくとも、日本ではバラク・オバマ氏の若さと経験不足が「変化への期待」と「混乱への危惧」というアンビバレントな感情を人々に抱かせているように思われます。例えば、朝日新聞の社説は「オバマ大統領就任―米国再生の挑戦が始まる」(2009年1月20日)、「オバマ氏と世界―柔らかく、したたかに」(2009年1月21日)と大統領の就任式の前後2日に亘ってオバマ大統領への期待を吐露しており、他方、米国共和党人脈と親しい日高義樹氏は『不幸を選択したアメリカ〜「オバマ大統領」で世界はどうなる』(PHP研究所)の中でオバマ大統領とオバマ大統領を選択したアメリカへの不安を率直に語っておられる。

朝日新聞曰く、「オバマ大統領の就任で、米国再生への挑戦が始まる。経済危機やイラク戦争で傷ついた米国を「対話と国際協調」で再建し、「賢い政府」による底上げで、厚みのある中流社会を目指せ」(1月20日)、「オバマ新大統領はイスラム世界に関係改善を呼びかけた。米国がイスラム世界と反目していては、中東和平もない。まずイラクからの米軍撤退を進めて、対米不信を解くべきだ」(1月21日)、と。而して、日高氏曰く、「アメリカは未曾有の危機にある。変わらねばならない」。この言葉によってアメリカ国民は魔法をかけられて、「オバマ大統領」を誕生させてしまった。それは、不幸な選択だったのではないか」、と。

而して、日高氏の主張の通り、(政府財政と貿易収支の)膨大な双子の赤字を抱えるアメリカが、オバマ民主党政権下で更に「公共土木事業」を推進し、「膨大な公的資金を金融界と自動車産業に投入」するならば、アメリカの経済はブッシュ(子)政権の時代よりも「もっと惨めで貧しい状態に落ち込む」可能性もなくはないでしょう。また、米軍の世界、就中、「アジアからの撤退」を志向するオバマ民主党政権によって、世界は「弱肉強食」の不安定な時代に突入する怖れもある。

私は、しかし、オバマ大統領への過度な期待もオバマ大統領のアメリカを絶望視するのも間違いではないかと考えています。畢竟、現代の福祉国家における大衆民主主義下の政治において(行政権の肥大と裏腹に)政治指導者がその個性や資質や哲学に基づき独自性を発揮しうる余地は極小化しているというパラドキシカルな現象が一般的に観察されるからであり、それは強大な大統領権限が憲法によって与えられているフランスやアメリカにおいても例外ではないからです。蓋し、日高氏が不安視する(1)財政と経済の破綻、(2)ハードパワー(軍事的プレゼンス)の縮小は(日高氏も認められる通り)「オバマ大統領」の属性ではなく「2009年ー2013年のアメリカ」の属性であり、(a)緊急避難的な財政出動と「実需要をともなわない投機的な金融商品の開発とその取引を規制する金融ルールの再構築」、(b)軍事的にも政治的にも他国の面倒を見る余裕のない状況下でのアメリカ外交の再編という対処指針の大枠は誰が大統領であっても民主共和のどちらが政権を取ったとしても不変であろうと私は考えています。

では、政治指導者の「顔」は政治的に無意味か? もちろん、それも正しくない認識でしょう。国民と世界に対して自分が実現しようと欲する具体的な政策ビジョンと明確な理念を繰り返し訴えることで、僅かとは言え残されたフリーハンドの余地を最大限に効果的に利用して現実を一歩でも半歩でも変革改善すること。それが大衆民主主義における保守政治の神髄であり、実際、新古典派総合(要は、ケインズ派)の財政緩和の中で行き詰まった福祉国家におけるスタグフレーションの閉塞を打ち破ったものは、サッチャー首相・レーガン大統領・小泉純一郎首相というそのような練達の保守政治家の継続的な努力であったと私は考えるからです。畢竟、総論から各論の時代にアメリカも世界も突入したのではないか。ならば、練達の政治家は現実改革の理念とビジョンのみならず政治を機能させるスキルを持たなければならないのではないか。

敷衍すれば、グリーバリゼーションの深化の中での社会主義の崩壊、そして、グローバリゼーションの一層の昂進の中での「世界の唯一の超大国アメリカ」の普通の大国への大政奉還。この課程の中で世界の政治はイデオロギーがせめぎあう総論の時代からスキルの練度が問われる各論の時代に移行しつつあるのかもしれない。他方、一国レヴェルの政治は「経済成長を前提にできる牧歌的な時代」から「環境との共生をにらんだ伝統的価値と地方の再生が不可避な定常型社会」への移行にともない<イデオロギー=国と社会の形>がそれを具現する政治スキルとともに問われる重層的課題の時代、言わば「両正面作戦」が不可避な時代に入ったのかもしれません。そう私は考えています。

では、オバマ大統領にそのような哲学と資質、イデオロギーとスキルが備わっているか否か。正直、それは現在においては不明としか言いようがない。けれども、リアリズムに立った政権運営のスキルの有無はアメリカ国民のみならず日本を含む世界が新しいアメリカ大統領に関して注目すべきポイントであろう。而して、このような問題意識から参考になる記事を目にしましたので以下紹介します。出典は、Washington Postに投稿されたMax Stier 氏の"Obama Signals Shift in Governing Philosophy," January 26, 2009「オバマ大統領、政府統治指針の変更を示唆」です。



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"The question we ask today is not whether government is too big or too small, but whether it works."

With this declaration from his inaugural address last week, President Barack Obama laid out a new governing philosophy, elevating the importance of basic government operations to rival political ideology and policy development. Although this shift may seem innocuous to some, it is potentially radical and could eventually make this line the defining passage of the president's historic speech and a hallmark of his administration.

To appreciate the significance of this statement, one needs to understand two things: the nature of government's operational challenges and Obama's actions that add considerable weight to these words.

The American people are looking to the new administration to rejuvenate our economy, resolve the conflicts in Iraq and Afghanistan, revitalize our schools and repair our environment. On each count, even if Obama gets the policy right, the public's expectations will only be met if these policies are well executed. Without dramatic improvements in the way government does its work, they won't be.

There are some fundamental reasons why our federal government's operational health has been allowed to steadily deteriorate. It's hard to change what you don't measure, and our government operates in an environment with very few meaningful and useful measurements for performance. Perhaps more significantly, it is run by short-term political leadership that has little incentive to focus on long-term issues.


「我々が今日問うている問題は、政府が大きすぎるか小さすぎるかなどではなく、政府が機能しているかどうかである」

先週の【2009年1月20日の】就任演説の中のこの宣言をもってバラク・オバマ大統領はそれにより政府を運営する新しい統治指針を提示した。すなわち、政府の基本的な機能を重視して、政治イデオロギーや政策立案にはあまり重きを置かないという姿勢を明らかにしたのだ。この政府運営の指針転換はそう大した影響はないように見えるかもしれない。けれども、この指針転換は潜在的には抜本的な方針転換であり、歴史的な大統領就任演説をこの線で解釈するべきガイドラインであり、而して、オバマ政権が本格的な改革派政権であることの証左となるものだ。

この宣言が帯びる意味の重大さを認識するためには二つのことを理解することが必要である。一つは、政府の機能が変化するということ自体の理解であり、他の一つは、これらの言葉に極めて重要な意味を付加するオバマ氏の行動の理解である。

アメリカ国民は 新政権がアメリカの経済を回復させ、イラクとアフガニスタンにおける紛争を解決すること、アメリカの教育を再活性化、そして、アメリカにおける環境破壊を治癒すること期待している。これらの諸論点に関して、オバマ大統領が正しい政策を選択したとしても、それら選択された政策がきちんと実行された場合にのみ大衆の期待に応えたことになるだろう。つまり、これらの諸論点において政府が問題を解決する方法において劇的な改善なしには政策は実行されたことにはならないだろう。

アメリカ連邦政府の作用の健全性が今まで悪化するがままになってきたについては幾つかの根本的な理由がある。測定されない事柄を変革することは誰に取っても困難であり、その活動に対して意味があり使い勝手のよい測定基準がほとんど存在しない状況でアメリカ連邦政府は活動してきたのだ。蓋し、もっと率直に言えば、アメリカ連邦政府は長期的に取り組むべき課題に焦点を当てる動機をほとんど持っていない短期間の政治的指導力によって運営されてきたのである。




A typical presidential appointee stays in government for roughly two years and is rewarded for crisis management and scoring policy wins. These individuals are highly unlikely to spend significant energy on management issues, when the benefits of such an investment won't be seen until after they are long gone.

To be clear, previous administrations have launched serious efforts to improve government operations, leading to limited, but not insignificant, improvements. But Obama's approach appears to be significantly different. He is not just saying we need to improve government operations. He's saying we need to put this issue front and center. We need to commit as much energy to policy execution as we do to policy development. This interpretation is based not on wishful thinking, but on the president's actions.

Start with the transition. Despite criticism that it was presumptuous, the Obama team heeded the advice of experts and began planning the transition to power months in advance of the election. The result: it was able to fill key White House posts and identify Cabinet nominees faster than any administration in history.


大統領に任命される政府スタッフは通常は約2年間そのポストに留まり、指名された対価として危機管理に従事し政策的な成功を収めることに邁進する。而して、彼等がそのポストを離れるまで投資のご利益がほとんど見られない以上、これらの大統領に任命されたスタッフ諸個人が経営管理的な事柄にかなりのエネルギーを割くなどということはほとんどありそうにないことである。

白黒はっきり言えば、これまでの政権も政府機能を向上させるために極めて真剣に努力してきものの、限られた、しかも、大して意味のない成果を出すにとどまってきた。しかし、オバマ大統領のアプローチはこれらとは根本的に異なるように見える。オバマ大統領は、単に政府の機能を向上させる必要があると述べているのではない。彼はこの論点を中心的で主要な争点にする必要があると述べているのだ。我々は今まで政策立案に割いてきたのと同じ熱意と労力を政策の遂行に注ぐ必要がある。この言葉の解釈は希望的観測に基づくものではなくオバマ大統領の行動から導き出されたものである。

政権の移行期から話しを始めよう。僭越との批判にかかわらず、オバマ氏のチームは専門家の助言に留意しながら、大統領選挙に先立つ数ヵ月前から政権移行の計画を立て始めた。而して、その結果、歴代のどの政権よりも早くホワイトハウスの枢要なポストを埋め、また、政権の閣僚候補を絞り込むことができたのである。



Look at the people the president appointed and their confirmation hearings. Time and again, they were willing to get into the weeds and talk about the importance of management issues to agency success.

Hillary Clinton described the State Department's career employees as "unsung heroes," adding that "they need and deserve the resources, training and support to succeed."

Office of Management and Budget Director Peter Orszag said, "We need to make government work better and smarter; [that] means restoring the prestige and building the capability of the federal workforce."・・・


大統領が指名した人士と彼等の指名を承認する公聴会を想起していただきたい。何度も繰り返し、彼等、指名された候補者は難局に喜んで立ち向かう意思を表明して、而して、彼等が任せられる官庁の成功のためには経営管理的な諸問題が重要であることを自ら進んで述べたではないか。

ヒラリー・クリントン女史は国務省のキャリア職員を評して「縁の下の力持ち的な英雄」と述べた。「彼等は成功するための研修と支援を必要としており、また、それらに値する人々である」とも。

大統領府行政管理予算局のピーター・オルスザグ局長は、「我々【オバマ政権の幹部スタッフ】は政府をより良くかつより洗練された形で動くようにしなければならない。而して、このことは連邦政府の職員の声望を回復させ彼等の職務遂行能力を構築することを意味する」と語った。(中略)



Less than 24 hours after being sworn in, President Obama issued his first two Executive Orders, both of which focused on government operations. One will make government more open and transparent, helping to improve public trust in government. The other raises the ethical and professional standards for those who will serve in his administration, assuring the public that those who work on their behalf will be highly qualified and committed to public service, not their private enrichment.

On day two, he traveled to Foggy Bottom to speak to career employees at the State Department, a powerful acknowledgment of perhaps the most fundamental tenet of effective federal organizations: good government starts with good people.・・・

Barack Obama didn't campaign the past two years to pass legislation. He did it to achieve a set of ambitious goals. That requires not only approving policies, but implementing them. All indications are that our new president understands the importance of government operations. But making government work won't be quick. It won't be easy. But it must be done. Nothing less than the president's pledge to bring real change to America is at stake.


大統領就任の宣誓から24時間以内に、オバマ大統領は彼にとって最初の二本となる大統領令を発行した。而して、それらは両方とも政府の運営に焦点を当てたものだった。すなわち、その一つは政府をより開かれた透明性の高いものにする大統領令であり、政府に対する公衆の信頼を増進することを助けることになろう。他の大統領令は、彼の政権を担うスタッフの倫理的と専門的な行動基準を高い水準に設定するもの。それにより、彼等のために働く職員が上司たる彼等のためではなく公的な職務に邁進できることを国民に対して保障するものである。

就任二日目、オバマ大統領は【国務省のある】フォギー・ボトムに足を延ばして国務省のキャリア職員に話しかけた。それは、効率的な連邦政府組織に関するおそらく最も基本的な考えを述べた力強い表明だった。すなわち、政権の上首尾な始動は士気の高い有能な人々にかかっている、と。(中略)

バラク・オバマ大統領は過去2年間立法活動に指導力を発揮することはなかった。その代わり、彼はより野心的な目的を達成することに注力してきた。而して、それは政策評価のみならず政策の実現をも要求するものだ。蓋し、あらゆる徴候を鑑みるに、我々の新しい大統領は政府機能の重要性を理解している。もちろん、政府を機能させるためには時間が必要であろうし、それは容易なことでもあるまい。けれども、それは必ずや成し遂げられるに違いない。アメリカに真の変化をもたらすという大統領の誓いは何ものにも妨げられるはずはないからである。



(2009年2月9日:yahoo版にアップロード)

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2009.02.10(09:27)|海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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At yesterday's news conference, however, questions focused less on policy than on how the eclectic personalities standing behind Obama -- particularly Clinton, Gates and Jones -- would mesh. Asked how he would avoid having a "clash of rivals" rather than the smoothly functioning team he portrayed, Obama said he expected "vigorous debate" and described himself as "a strong believer in strong personalities and strong opinions."・・・

Obama turned playful when a reporter reminded him of the sharp criticisms he leveled at Clinton during the campaign, including equating her travels as first lady to having tea with foreign leaders. Obama waved off the question, saying the press was merely "having fun" by stirring up quotes from the campaign.

"Differences get magnified" during campaigns, Obama said. "I did not ask for assurances from these individuals that they would agree with me at all times. I think they understood and would not be joining this team unless they understood and were prepared to carry out the decisions that have been made by me after full discussion."

"On the broad core vision of where America needs to go," he said, "we are in almost complete agreement. There are going to be differences in tactics and different assessments and judgments made. That's what I expect; that's what I welcome. That's why I asked them to join the team."

"But understand, I will be setting policy as president," he added. "I will be responsible for the vision that this team carries out, and I expect them to implement that vision once decisions are made."


昨日の記者会見では、しかし、次期政権の政策に関するものよりも、オバマ氏の背後に控えている選ばれた人士、就中、クリントン氏、ゲーツ氏、および、ジョーンズ氏が【オバマ氏とその政権の中で】協調してやっていけるかどうかを質すものの方が多かった。自身が心に描く円滑に機能するチームどころではなく、むしろ「有力な対抗者達との対立」に陥ることをいかにして避けるつもりかと問われオバマ氏は、「精力的な議論」を通じてそのような事態を避け得ると思っていると語り、而して、自分自身を彼は「しっかりした人格と説得力に富む意見をどこまでも強く信じている者」との自己分析を披露した。(中略) 

1人の記者からオバマ氏に対して選挙期間中クリントン氏を打ち倒すべく彼が投げつけた辛辣な批判、例えば、大統領夫人としての彼女の【外国】訪問とは外国の首脳とお茶を飲むことだったという批判を想起させるような質問が出された時、オバマ氏は少しおどけてみせた上での質問に答えることを拒絶した。而して、選挙期間中の発言を引用することで新聞は単に「楽しんでいる」にすぎないと言い添えた。

選挙の期間中は「差異は針小棒大に伝えられる」とオバマ氏は述べた。「私は【次期政権の外交安保チームのメンバーとして】ここに紹介した方々に対して、これからは常に私に同意してくださるという保証など求めません。けれども、彼等は私の真意を理解された。そして、そのような十分な議論を経た上で、私が下している判断を理解されたのでなければ、また、その判断を実行に移す準備ができているのでなければ彼等がこの【次期政権の外交安保】チームに参加されることはなかっただろうと私は思っています」とも。

「アメリカはどこに行くべきなのか、このことに関する広範なる理想像の中核部分において、我々はほぼ完全な合意に達しました。もちろん、戦略の相違、および、状況認識や判断の相違はこれからも存在するでしょう。それこそ私が期待するものであり、蓋し、私が歓迎するものです。而して、それこそがこのチームに参加するように私が彼等に要請した理由なのです」とオバマ氏は述べた。

「しかし、このことは理解していただきたい。大統領として私が政策を設定していくことになるということを」とオバマ氏は語り、またこう付け加えた。「このチームが実行していく計画の責任は私にあり、一度政策判断がなされたならば、私は彼等にその実行を期待しています」と。


The announcements confirmed weeks of speculation and secret negotiations. Gates had never closed the door on staying in office but repeatedly insisted that he wanted to retire to his home in Washington state. Discussions with Clinton were not solidified until agreement was reached over public release of the names of donors to the foundation established by her husband, the former president.

Jones was said to have resisted repeated entreaties from Obama until early last week. His concerns, according to a source who discussed the matter with the former NATO commander, centered on avoiding the problems that plagued Bush's first term, including a weak National Security Council and end runs around national security adviser Condoleezza Rice by then-Defense Secretary Donald H. Rumsfeld and Vice President Cheney.

Another Obama adviser said the president-elect's team has studied Bush's attempt to put together a first-term team of national security heavyweights, only to see discipline collapse among warring factions. With Jones, the adviser said, Obama felt he had found "a very substantial person who can make the system work."・・・


今回の【次期政権の外交安保チームの】陣容の発表は数週間に渡る熟慮と秘密裏の交渉の結果であることは間違いない。ゲーツ氏は留任を否定こそしてこなかったものの、繰り返し、引退して故郷のワシントン州に帰る希望を口にしてきた。クリントン氏との話し合いは、彼女の夫である元大統領が設立した基金の寄贈者の氏名リストが公にされることで【国務長官要請・受諾の】合意に達したことが判明するまで表沙汰になることはなかった。

ジョーンズ氏は今週の最初までは、オバマ氏からの【次期政権の外交安保チームに参加するようにとの】度重なる懇願にも首を縦に振らなかったと伝えられている。この元NATO軍司令官の口説き落としに加わった人物によると、ジョーンズ元海兵隊大将の懸念事項は、一期目のブッシュ政権の外交安保チームを苦しめた諸問題、例えば、弱い権限しか持たされていない国家安全保障会議、および、国家安全保障担当大統領補佐官のコンドリーザ・ライス氏の頭越しにラムズフェルド国防長官やチェーニー副大統領がことを進めたことだったとのこと。

他のオバマ氏側近によれば、次期大統領の外交安保チームは外交安保領域の大立者達によって一期目のチームを構成しようとして派閥争いの中で空中分解するに至ったブッシュ政権の試みを研究してきたとのこと。この側近の言うところでは、オバマ氏はジョーンズ氏に関して「組織的な活動を可能にする正に適材」を得たと感じているとのことだ。(中略)


Clinton stood without expression yesterday as Obama, the former rival she once called "naive" on some aspects of foreign policy, praised her "extraordinary intelligence and remarkable worth ethic." Obama continued: "She is an American of tremendous stature who will have my complete confidence, who knows many of the world's leaders, who will command respect in every capital, and who will clearly have the ability to advance our interests around the world. Hillary's appointment is a sign to friend and foe of the seriousness of my commitment to renew American diplomacy and restore our alliances."

Clinton cracked a smile when Obama described her as a "tough campaign opponent." In her own remarks, she said that "if confirmed, I will give this assignment, your administration and my country my all."

A source close to the transition and familiar with discussions between Clinton and Obama described her as confident that she will have the president's ear when she needs it, and unconcerned about the potential for rivalry with Jones and Gates. "She knows how the White House works," the source said of the former first lady.・・・


クリントン氏は、オバマ氏、かっての競争相手にして外交のある面においては「単純」と評したことのあるオバマ氏が彼女を「途方もない知性と際立って高い仕事における倫理観」と褒めちぎる間、表情を変えることなく立っていた。これに続けてオバマ氏は「彼女は私が全幅の信頼を置く所の極めて有能なアメリカ人であり、世界の多くの政治指導者の知己。彼女が世界中の首都で尊敬を勝ち取る【諸外国政府から尊敬を受ける】ことは間違いないだろうし、而して、彼女が世界におけるアメリカの利益を増進する能力を備えていることは明白。ヒラリー女史の指名は敵味方双方に対して、アメリカ外交を刷新する、および、同盟国との連携を修復するという私の約束が言葉だけのものではない真面目なものであることを示すものだ」と述べた。

オバマ氏が彼女を評して「手強い選挙戦の対抗馬だった」と語ったときにクリントン氏も破顔一笑。而して、自身の会見では「改めて決意の程を語るとすれば、この職務と政権、そして、我が母国に私のすべてをささげます」と語った。

オバマ氏とクリントン氏の話し合いに通じていて、ことここに至った経緯に詳しい人物によれば、クリントン氏は自分がもしそれが必要な時には大統領の耳を持つこともできる、そして、ジョーンズとゲーツというライバルの両氏に対しても能力において彼女は何の心配もしていないという自負を持っているということ。「彼女はホワイトハウスがいかにして動くかを知っている」と、この情報をくれた人物はこの元大統領夫人に関してそう述べてくれた。(後略)


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【解題】
大統領制には「議会の多数派」と行政権の主宰者が異なっても政策の連続性が保たれるという利点(あるいは、欠点?)がある。毎回、アメリカ大統領選挙をウォッチしていて痛感するのは、アメリカにおける、最高指導者の育成と選考の「タフ」な制度を我が国も見習うべきだということです。もともと、(誤解を怖れずに記せば)「アホ」でもそのプロセスの中で「指導者」としての資質・スキル・覚悟・マナーを身につけられる制度と、日本のように(大甘に言っても)「本来優秀だったはずの素材」がアホになってしまいがちな制度との差は歴然と思うから。

真面目な話し、大統領制を導入しないのであれば日本の首相は、暫定的にでも「元首相の子孫」に限定するとかの<擬似摂関家制度>を導入しないかぎり、日本の政治は政治として機能しないのではないか。日本の場合、現状では「緊急避難的」にこの宰相(諸家)による世襲制か、外国から有能な宰相をスカウトしてくるくらいしか手はないように思います。例えば、支那の胡錦濤主席とかロシアのプーチン現首相とか、「引退後、日本の首相はどうですか?」と。昔、メジャーリーグの4番バッターだった引退した選手を日本のプロ野球球団が三顧の礼を尽してスカウトしてきていたように。自虐ではなく、率直な自己認識からはそう言わざるを得ない。


今回の大統領選挙戦を鳥瞰して、また、幾たびかその演説を聞いて感じたのは、オバマ氏は「機械のように精確な政治サイボーグ」なのではないかということ。しかも、アメリカという「路面の良悪が極端な長距離道路」を走るためのサイボーグなので激震への耐久性も優れている。けれど、彼が、砂漠もあればモンスーンもあり、ツンドラもありという国際政治に対応できるかは正直未知数。

その点、今の評判は歴代最低クラスですが、「地頭が悪くない、生まれつきのリーダー」である(「リーダーしか務まらない」?)現ブッシュ大統領と、「リーダーになるべく自己改造を重ねてきた目から鼻に抜けるサイボーグオバマ」との大統領としてのトータルなパフォーマンスの差は今から30年くらいしないと本当は分からないのかもしれません。蓋し、カーター大統領はその再選に敗れた時には「歴代最低の大統領」という評価でしたが(第一次世界大戦後、再選に敗れた大統領は、フーバー、カーター、ブッシュ父の3人だけ!)、当時の外交資料が漸次公開されるに伴い(所謂「人権外交」という綺麗ごとではなく)「カーターこそ冷戦の勝利を決定づけた大統領」として最早その歴史的評価は動かなくなっていますから。この意味でも、アメリカ政治の叡智は深い。蓋し、実に、アメリカ侮り難し。



(2008年12月08日:yahoo版にアップロード)

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2008.12.09(11:18)|海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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2008年12月1日、オバマ次期政権の外交安保チームの人選が発表され、バラク・オバマ次期大統領は「米国が指導力を発揮し、21世紀の課題に取り組む新たな時代が来るべき時だ」とその抱負を吐露された。而して、「米国が安全であるためには、軍事力と強大な外交を組み合わせなければならない」とも。ところで、日本ではオバマ政権はブッシュ政権と比べ、

(1)軍事力より外交重視の外交スタイル
(2)単独行動主義ではなく国連中心主義の対外政策
(3)新自由主義的経済政策ではなく福祉重視の経済政策
を採るものと伝えられている向きもあります。

もちろん、ブッシュ現政権との比較においては(1)〜(3)は間違いではないかもしれな。けれども、しかし、それは日本で伝えられているものとはかなり濃淡を異にすると私は思っています。

まず、軍事力より外交重視の外交スタイル。畢竟、オバマ次期大統領もまた必要とあればその「軍事力の行使」を毫も躊躇うアメリカ大統領ではないです。むしろ、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争というアメリカが係わった大規模戦争はすべて民主党政権下の出来事であったこと、前回の民主党政権(クリントン政権)下でもアメリカ主導のNATO軍はユーゴ空爆を敢行しユーゴの再分割を促したことを想起すればこのことは自明ではないでしょうか。

また、アメリカにおける国連の評価、国連の権威なるものは(日本を除く世界の大部分の国におけるのと同様)「常設の国際会議場」を大きく超えるものではない。要は、「単独行動主義」なるものをオバマ政権が採用しないということは、アメリカは自国の問題にのみ専念してそれ以外の問題には他国との連携が取れる範囲でかかわるという、一種の「モンロー主義」をオバマ次期政権が採用することと同値だと考えておいた方がよいとさえ思います。

而して、新自由主義的経済政策の放棄。経済運営においてはかなりドラスティックな変化が起きるかもしれない。しかし、ここでも(大東亜戦争の戦後、否、1940年体制以降、小泉構造改革までの60年余の間)「世界で成功した唯一の社会主義国」であった日本が肝に銘じて置くべきは、アメリカは徹頭徹尾、自由競争と自助努力、すなわち、自己責任の原則に価値を置く「資本主義−自由主義」の国だということです。

而して、次期オバマ政権下で新自由主義的経済政策の放棄なるものが実施されるとしてもそれは、所謂「勝ち組−負け組み」の現出を嫌う「平等主義」的の心性からのものではなく(自由な競争を歪める独占を排除すべく、資本主義的な競争を守るために「独占禁止法」が制定されたのとパラレルに)、むしろ、現在の(特に、野放図な金融業界の)競争のあり方が「自由な競争」や「敗者復活」の余地を狭めており、富の不公正な社会的配分を引き起こしているという資本主義的な競争の再生と貫徹を望む心性からのものかもしれない。そう私は考えています。

いずれにせよ、オバマ政権下のアメリカは、世界唯一の超大国でなくなったアメリカをアメリカ国民が現実に直視せざるをえないアメリカ。前途多難ではあると思います。而して、アメリカの同盟国の我が日本も。

今回発表されたオバマ政権の陣容を目にした第一印象は「安定基盤の上で改革断行を目指す布陣」というもの。ある意味、オバマ氏の<老獪>さを感じました。蓋し、民主党支持者から見ればゴアがしくじったときから、そして、共和党支持者に言わせれば先代ブッシュ大統領が再選に失敗した時から、つまり、1992年から16年間、アメリカは「分裂」していたのがこれでようやく「挙国一致」に向かう予感を感じる。而して、この「分裂からの再統合」こそオバマ次期大統領が大統領選挙期間中から、否、あの伝説の2004年7月27日の民主党全国党大会での基調演説から2008年12月4日の勝利演説に至るまで繰り返し国民に語りかけてきたものだと思います。勝利宣言でオバマ氏は共和党支持者にこう語りかけています。

Let's remember that it was a man from this state who first carried the banner of the Republican Party to the White House, a party founded on the values of self-reliance and individual liberty and national unity. Those are values that we all share.


思い出してください、共和党の旗を掲げて初めてホワイトハウス入りしたのは、この【イリノイ】州の人【エイブラハム・リンカーン】でした。共和党とは、自助自立に個人の自由、そして国家の統一という価値観を掲げて作られた政党です。そうした価値は、私たち全員が共有するものです。


・オバマ次期大統領の勝利演説
 http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/world/gooeditor-20081105-06.html


これから共和党は冬の時代だと思いますが、アメリカ政治が好むと好まざるとにかかわらず「内政中心」になることは避けられず、そうなると、アメリカ人のアイデンティティの再構築がアメリカ政治の一つの争点になるのかもしれない。具体的には新しい移民層をどうアメリカが社会的に既存の「アメリカ人」と融和的に統合できるかどうか。その場合、アメリカ社会の地下を流れる大水脈「キリスト教的心性」がどう変容していくのか。これがこれからのアメリカ社会の相貌を決定していくのではないか。そう私は考えています。

以下、紹介したのはWashington Postの記事、”Obama Names Team to Face A Complex Security Picture, “December 2, 2008,「オバマ氏、混沌とする安全保障状況に対応すべく外交安保チームの人事を発表」。尚、アメリカ大統領選挙一般と英文法に関しては私が作成した「アメリカ大統領検定」と「再出発の英文法」をご参照いただければ嬉しいです。下記URL参照。



・アメリカ大統領選挙観戦資格検定(四級)(五級)(六級)
 http://minna.cert.yahoo.co.jp/ormh/cert_list?order=0

・『再出発の英文法』目次&完全準拠「英文法検定」案内
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/c/5fdc86510e61126eda55a6d3ee4133da


obama3


President-elect Barack Obama's high-powered national security team, introduced yesterday at a Chicago news conference, faces the challenge of managing two wars and various ongoing foreign policy crises even as it helps the president-elect shape what he called "a new beginning, a new dawn of American leadership" in the world.

In announcing his choices of Sen. Hillary Rodham Clinton (D-N.Y.) to be secretary of state, Defense Secretary Robert M. Gates to continue in office and retired Marine Gen. James L. Jones to serve as national security adviser, Obama laid out a vision of an America whose global stature is restored and whose military, diplomatic and economic power are balanced with one another and with "the power of our moral example."

But he acknowledged that "grave" and "urgent" national security issues, including the wars in Iraq and Afghanistan, potential conflict between Pakistan and India, and economic crisis at home and abroad, require immediate attention. The challenge will be balancing those immediate priorities handed over by the Bush administration -- what the Obama camp calls the "inheritance issues" -- with national and international expectations for the longer-term changes he pledged during the campaign.


昨日【12月2日】、シカゴの記者会見でその顔ぶれが発表されたバラク・オバマ次期大統領の重厚な国家安全チームは、次期大統領を輔弼し、次期大統領自身が世界における「アメリカのリーダーシップの再起動、アメリカのリーダーシップの新たな夜明け」と呼んでいるものの具現化に邁進する中で二つの戦争の舵取りと外交における現下の多様な危機に直面することになる。

ヒラリー・クリントン上院議員(民主党−ニューヨーク州選出)を国務長官に、国防長官のロバート・ゲーツ氏の【共和・民主両党の政権を跨いでの】留任、ジェームズ・L・ジョーンズ元海兵隊大将の【ホワイトハウスで国家安全保障会議(NSC)を取り仕切る】国家安全保障担当大統領補佐官への補任を発表することで、オバマ氏はこれからのアメリカの理想像を示した。すなわち、アメリカの名声を回復させ、アメリカの軍事力と外交力と経済力、そして、「道徳的な模範としてのアメリカの権威」を相互に緊密に連携させるべきことを示唆したのだ。

しかし、他方、オバマ氏は、イラクとアフガニスタンにおける戦争、パキスタンとインドの間の紛争勃発の潜在的な危機、そして、アメリカ国内における経済危機を含む「重大」かつ「緊急」の国家安全にかかわる諸問題に直ちに取り組まなければならないことも認めた。ブッシュ政権から引き継がれる、優先的に取り組まれるべきこれらの緊急の課題(オバマ陣営ではそれを「遺産的懸案」と呼んでいるけれども、そのような諸課題)に取り組む営為と、オバマ氏が選挙戦の中で誓約してきた長期的に取り組まれるべき諸変革に対する国内外からの期待に応える営為とのバランスを取るという試練がオバマ氏を待ち受けているだろう。


The members of his new team, Obama said yesterday, "share my pragmatism about the use of power, and my sense of purpose." Three other Cabinet selections announced were Eric H. Holder Jr. as attorney general, Arizona Gov. Janet Napolitano as secretary of homeland security and Susan Rice as U.S. ambassador to the United Nations.

Obama repeatedly emphasized his intention to expand U.S. diplomacy while buttressing the size and capabilities of the military, and he stressed the interconnectedness of national security and economic issues. Rice, who served as a senior foreign policy aide to Obama during the campaign, listed an ambitious global agenda -- "to prevent conflict, to promote peace, combat terrorism, prevent the spread and use of nuclear weapons, tackle climate change, end genocide, fight poverty and disease."・・・

In addition to the pressing issues in Iraq, Afghanistan, Pakistan and India, Obama must quickly decide whether to continue negotiations begun by President Bush on North Korea and the Israeli-Palestinian conflict, how to deal with Iran, and what to do about the U.S. detention facility at Guantanamo Bay, Cuba. Preparations must be made for three major summits -- NATO, the Group of 20 and the Summit of the Americas -- scheduled within three months of the inauguration.


オバマ氏の新しいチームは、オバマ氏自身の言う所では「権力行使に関する私のプラグマティズムと私の目的意識を共有している」とのこと。他に発表された閣僚級の3ポストは、司法長官にエリック・H・ホルダー氏、国土安全保障長官にアリゾナ州のジャネット・ナポリターノ知事、国連大使にスーザン・ライス氏の面々である。

オバマ氏は繰り返し米軍の規模と能力を強化しつつアメリカ外交を拡大する意向を強調した。他方、オバマ氏は国家の安全保障と経済問題の相互連関の重要性をも力説。ライス氏は、大統領選挙期間中はオバマ氏の外交問題を担当する側近として彼を支えたのだけれども、彼女は世界戦略に関する野心的な行動指針を提示した。すなわち、「紛争を防ぎ平和を促進するために、テロと戦い、核兵器の拡散と使用を防ぎ、地球規模の気候変動に対処し、組織的大量殺戮を終らせ、而して、貧困および疫病と戦う」、と。(中略)

イラク、アフガニスタン、パキスタン、および、インドを巡る諸問題を重要視するのに加えて、オバマ氏はブッシュ大統領が開始した北朝鮮やイスラエル−パレスチナ間の紛争に関する交渉を継続するのか否か、更には、キューバのグァンタナモ湾【の米軍基地】にあるアメリカの収容所施設をどう処置するのかについて早急に決断することになろう。これらの諸問題に取り組む準備は、新大統領就任から3ヵ月の間に開催されることになっている三つの主要な首脳会議、すなわち、NATO首脳会議、世界経済20ヵ国首脳会議、および、アメリカ・サミットの間になされるに違いない。


<続く>
2008.12.09(11:14)|海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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2008年のアメリカ大統領選挙からちょうど3週間、結果はすでにhistoryの範疇。アフリカ系アメリカ人として始めての大統領が選出された歴史的選挙(the historic and historical election)における民主党バラク・オバマ上院議員の地滑り的勝利については多言を要しないでしょう。その詳細については、下記のNYTのURLおよび私が作成した「2008年大統領選挙情勢と州別人種比率一覧」(但し、両者の優勢劣勢の情報は投票10日前の予想))を見ていただければと思います。

・2008年アメリカ大統領選挙(上院・下院・州知事選挙)結果
 http://elections.nytimes.com/2008/results/president/votes.html

・2008年大統領選挙情勢と州別人種比率一覧
 http://www31.ocn.ne.jp/~matsuo2000/08uspelmaplast.html


選挙直前、私の友人である筋金入りの共和党支持者のある黒人の弁護士は「オバマがアフリカ系アメリカ人だからといって私達黒人が彼に投票するとは限らない。俺は保守の美徳を愛しこの国を愛する共和党員として党のチケット(マケイン&ペイリン)に投票する」と語っていた。而して、選挙の帰趨が決した(このWPSTの記事が書かれた)11月5日に電話で話したとき彼は、「マケインが負けて残念だが、オバマが大統領に当選したのは黒人としても合衆国の市民としても誇らしい」とその気持ちを吐露してくれました。

畢竟、選挙中盤の9月15日。リーマンブラザーズの破綻に端を発するアメリカ発の国際金融危機が駄目押しとなり、オバマ圧勝の流れは決した。しかし、(歴史にifはないにせよ、結果から見るに)恐らく金融危機が惹起しなくとも民主党の圧勝は動かなかっただろう。それだけ、共和党現政権の不人気は凄まじく、逆に言えば、今回政権交代が起きないようなら「アメリカの民主主義は死んだ」とさえ言わなければならない状況だったと思うからです。しかし、「奴隷の子孫」ではないにせよ、また、「肌の色が白」ではないものの絵に描いたような東部エリートであるにせよ、アフリカ系アメリカ人をその大統領に選出するアメリカ合衆国の社会は侮りがたい。これが私の偽らざる感想です。

この感慨に関してはブログ仲間のANNE先生が素晴らしい詩を紹介されていました。記事URLと共に引用させていただきます。尚、 Rosaはローザ・パークス、そして、 Martinはもちろんマーティン・ルーサー・キング牧師のことです。

Rosa sat so Martin could walk.
Martin walked so Obama could run.
Obama ran so our children can fly.


 http://blogs.yahoo.co.jp/anne_in_pei/59031416.html

さて、オバマ民主党の勝利により日米関係はこれからどうなるのか。この点に関して私は率直に言って、今回の大統領選挙で民主党が勝とうが共和党が勝とうが結果はそう変わらなかったと考えています。蓋し、国際政治のプレーヤーは(グローバル化の時代こそ)「主権国家」にならざるをえず、その主権国家が対内的には「最高」の対外的には「独立」の存在である以上、(どんな友好国家間でも)利害の対立は避けられない。また、個々の国家の正当性を謳う<政治的神話>は両立しえない(例えば、米国建国の父は英国では大叛逆人!)。

他方、各主権国家がその産業構造も人口も歴史も言語も文化も異にする限り、他国との関係はすべて「非対称的」にならざるをえない。ならば、例えば、韓国はこの世に存在しないものとして扱い、支那とは(やはり、支那は大国だから。そのことを認めない国粋馬鹿右翼的認識はかえって日本を危うくすると思うから)「政凍経冷」の関係に入るべき。而して、今後衰退して行く米国にはそう大きな期待は持たず、ただ、相互に騙まし討ちがなければ「有難い」くらいのつもりで日米同盟のメンテナンスを進める親米独立路線でいくべきであろう。要は、アメリカとの同盟が不可欠でありアメリカが衰えて行くことが不可避だとすれば、日本はアメリカに頼るよりも、むしろ、<唯一の同盟国たるアメリカ>に日本が何を貢献できるかについてこそ脳髄に汗して考え断乎として行動に移すべきだと私は考えるのです。

以下紹介するのは大統領選挙翌日、11月5日のWashington Postの記事“Obama Makes History,”U.S. Decisively Elects First Black President; Democrats Expand Control of Congress,「オバマ歴史を創る:アメリカ合衆国、初の黒人大統を果敢に選択−議会の主導権を強化した民主党」です。


【補注】
アメリカの人種・オリジンから見た国民構成に関しては下記のURL参照。また、アメリカ大統領選挙に関する一般的な情報については私が作成した次のYahoo検定を参考にしていただければ嬉しいです。

・アメリカ国勢調査局レポート

 http://www.census.gov/prod/2001pubs/cenbr01-1.pdf

・アメリカ大統領選挙観戦資格検定(四級)(五級)(六級)
 
 http://minna.cert.yahoo.co.jp/ormh/cert_list?order=0


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Sen. Barack Obama of Illinois was elected the nation's 44th president yesterday, riding a reformist message of change and an inspirational exhortation of hope to become the first African American to ascend to the White House.

Obama, 47, the son of a Kenyan father and a white mother from Kansas, led a tide of Democratic victories across the nation in defeating Republican Sen. John McCain of Arizona, a 26-year veteran of Washington who could not overcome his connections to President Bush's increasingly unpopular administration.・・・


イリノイ州選出のバラク・オバマ上院議員が、昨日【11月4日】、第44代の大統領に選出された。変化を求める改革派の声に押され、また、ホワイトハウスに駆け上がる最初のアフリカ系アメリカ人になることを熱望する時代の趨勢に押された結果である。

オバマ氏はケニア人の父と白人の母の間に生まれたカンサス州出身の47歳。そのオバマ候補は、中央政界歴26年のベテランにしてアリゾナ州選出、共和党のジョン・マケイン上院議員を打ち負かし民主党に全国津々浦々で大勝をもたらした。マケイン氏は日々不人気の度を増しているブッシュ政権と自身との結びつきからくる劣勢を挽回することができなかったのだ。(中略)


It ushered in a new era of Democratic dominance in Congress, even though the party's quest for the 60 votes needed for a veto-proof majority in the Senate remained in doubt early today. ・・・

Democrats will use their new legislative muscle to advance an economic and foreign policy agenda that Bush has largely blocked for eight years. Even when the party seized control of Congress two years ago, its razor-thin margin in the Senate had allowed Republicans to hinder its efforts.

McCain congratulated Obama in a phone call shortly after 11 p.m. and then delivered a gracious concession speech before his supporters in Phoenix. "We have had and argued our differences," he said of his rival, "and he has prevailed."・・・


民主党が上院で目標にしていた、少数党の議事妨害を阻止すのに必要な60議席が達成できたかどうかは今日の早い段階では不明なままであるにせよ、議会もまた民主党支配の新しい時代に入ることがこの投票日に確実になった。(中略)

民主党は彼等が議会で得た新たな勢力を使い、ここ8年間ブッシュ政権が封じてきた民主党の経済と外交政策を推進していくものと思われる。2年前【の中間選挙で】民主党が議会の主導権を握った時でさえ、上院における両党のきわどい議席数によって共和党は民主党の意図を封じてきたのだから。

マケイン氏は午後11時を過ぎてすぐオバマ氏に電話で祝福を送った。而して、フェニックスにおいてマケイン氏は彼の支持者を前にして従容と敗北宣言を行う。曰く、「我々(共和党と民主党)はその違いを明確にした上でその優劣を競ってきました」。そして、マケイン氏は彼のライバルについてこう語った「その結果としてオバマ候補が我々に打ち勝ったのです」、と。(中略)


Obama became the first Democrat since Jimmy Carter in 1976 to receive more than 50 percent of the popular vote, and he made good on his pledge to transform the electoral map.

He overpowered McCain in Ohio, Florida, Virginia and Pennsylvania -- four states that the campaign had spent months courting as the keys to victory. He passed the needed 270 electoral votes just after 11 p.m., with victories in California and Washington state.


オバマ氏は1976年のジミー・カーター候補以来となる、一般投票者の50%を上回る支持を獲得した民主党の候補になった。そして、彼は選挙の勢力地図を塗り替えてみせるという支持者への約束を見事にやってのけたのだ。

オバマ氏は、オハイオ州、フロリダ州、バージニア州、および、ペンシルバニア州でマケイン氏を圧倒した。これら四つの州は大統領選挙の鍵を握るものと考えられ、実際、これらの州で支持を得るべく両陣営が数ヵ月に渡り激しい運動を展開した所なのである。カリフォルニア州とワシントン州でとともに午後11時過ぎに確定した勝利によってオバマ陣営は当選に必要な270の大統領選挙人を超えた。


The Democrat easily won most of the Northeast, the Rust Belt, the West Coast and mid-Atlantic states that normally back Democrats. By midnight, he appeared to be running strong in North Carolina, Indiana, Missouri and Montana, each of which was too close to call.

Obama melded the pride and aspirations of African Americans with a coalition of younger and disaffected voters drawn to his rhetorical style, and a unified base of Democrats worried about the economy and frustrated with the war in Iraq.

He is the fifth-youngest man elected to a first presidential term, after Theodore Roosevelt, John F. Kennedy, Bill Clinton and Ulysses S. Grant. He is the 16th senator to ascend to the office, and the first since Kennedy's election in 1960.・・・


民主党は東北部、北部の旧工業地帯、西海岸、および、一般的に黒人民主党員が多い中部大西洋側の大部分の州で余裕の勝利を飾った。夜半までにはノースカロライナ、インディアナ、ミズーリー、および、モンタナという接戦ゆえに勝敗の判定が容易でない諸州でもオバマ氏の優勢が明らかになった。

オバマ氏はアフリカ系アメリカ人の誇りと大志を結集すると同時に、若い世代と政治に不信を抱く有権者を彼一流の演説のスタイルによって引き付けた。而して、民主党の支持基盤は一丸となって経済の現状や先行きに不安を抱き、そして、イラク戦争に不満を堆積していったのだ。

オバマ氏は当選した一期目の大統領としては、セオドア・ルーズベルト、ジョン・F・ケネディ、ビルクリントン、そして、ユリシーズ・S・グラントの各大統領に次いで5番目に若い大統領候補である。また、オバマ氏は大統領に当選した16番目の上院議員であるが、これは1960年のケネディ大統領以来のこと。(中略)


The election was in many respects a referendum on the two-term president, whose popularity has plunged to the lowest levels since the 1930s, because of his administration's handling of the economy, Hurricane Katrina, and the wars in Iraq and Afghanistan. Bush has not been seen with McCain since May, and the president has made no public appearances since late last week.・・・

During a sometimes chaotic race, McCain promised voters that he would reform a broken and corrupted Washington and bring change that he said the American people demand. But his economic and national security proposals largely echoed Bush's policies, a charge that Obama made repeatedly.

Republicans watched yesterday as the electoral map turned blue in places where they have labored for a decade to cultivate a permanent, conservative voter base that would ensure presidential victories.

The party -- now clearly a minority one -- is left wondering whether the Democratic rout is the result of a coincidental marriage of a powerful personality and a terrible political and economic environment or if it signals a deeper change in voter patterns and beliefs that will make it difficult for them to recapture the White House for years.・・・


今回の大統領選挙はいろんな意味で2期目を務めている大統領に対する国民投票であった。而して、現在の大統領の支持率は、彼の政権の経済運営、ハリケーンカトリーナ、そして、イラクとアフガニスタンにおける戦争によって1930年代以降の最低水準に陥っている。それもあって、ブッシュ大統領は5月以来マケイン氏を同伴する姿を見せることはなかったし、先週後半以降は公に表れることさえなかったのである。(中略)

幾らか選挙の先行きが混沌としていた時に、マケイン氏は彼がワシントンの退廃した政治の仕組みを改革するつもりであること、そして、マケイン氏が語る所のアメリカ国民が求めている変革をもたらすつもりであると有権者に約束した。しかし、彼の経済政策や国家の安全保障政策に関する提案はその大よそにおいてブッシュ政権のそれらの亜流でしかなかった。つまり、マケイン氏の提案はオバマ氏が繰り返し非難した事柄そのものだったのである。

共和党の支持者達は、昨日、選挙結果を表示する地図で幾つもの州が青色に変わるのをまんじりともせず見つめていた。10年にも及ぶ彼等の努力により永遠に続くとさえ思われる保守派の牙城とした、而して、大統領選挙で彼等の勝利を保証するものだったはずの幾つもの州が【民主党の勝利を示す青色に塗られるのを】目撃したのである。

共和党は、最早、間違いなく少数派になってしまったのだが、その共和党は現在自問自答している。すなわち、この壊滅的な敗北は民主党の大統領候補の力強い資質と政治・経済における極めて劣悪な状況が重なった結果にすぎないのか、それとも、共和党が大統領のポジションを奪還するのに何年もかかるような困難さを意味する変化、つまり、有権者の投票パターンと政治信条が深い所で変化した兆候なのかを問うている。(中略)


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In a sign that Obama's race did not hold him back, he won as large a share of the white vote as any Democrat in the past two decades, although he still fell short of a majority. Preliminary exit polls showed him winning among 43 percent of white voters, while Sen. John F. Kerry won 41 percent in 2004 and Vice President Al Gore won 42 percent in 2000.・・・

Obama appeared to have made huge gains among Hispanic voters, earning about two-thirds of their support, according to exit polls. He also captured 95 percent of black voters. Obama also won a majority of women and took the support of 49 percent of men.

McCain appeared to have performed more poorly than his GOP predecessors, especially among young people. He earned about 30 percent of voters aged 18 to 29; in 2004, Bush captured 45 percent of that group.・・・


オバマ氏の人種的な属性が彼の選挙戦を妨げなかった兆候として、過半数には僅かに届かなかったもののオバマ氏は過去20年のどの民主党大統領候補に優るとも劣らない白人有権者からの得票率を記録したことが挙げられる。予備的な出口調査の結果では、白人有権者の43%の支持をオバマ氏は集めたのだが、2004年大統領選挙のジョン・F・ケリー上院議員は41%、そして、2000年の大統領選挙での副大統領のアール・ゴア氏の得票率は42%だったのだから。

出口調査によれば、オバマ氏はヒスパニック系有権者の中で大量得票したものと推測されている。すなわち、彼等の三分の二から支持を得たもよう。他方、オバマ氏は黒人有権者の95%から得票した。而して、オバマ氏は女性有権者の過半以上、および、男性有権者の49%の支持を得た。

マケイン氏の得票は、歴代の共和党大統領候補に比べても振るわなかった。特に、若い世代の有権者に対してはその傾向は顕著であった。畢竟、18歳から29歳までの有権者に関して、2004年の選挙でブッシュ大統領が45%獲得したのに対して、今回、マケイン氏は30%の支持しか集められなかったのだから。(後略)



(2008年11月25日:yahoo版にアップロード)

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2008.11.26(08:41)|海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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◆2008年アメリカ大統領選挙の趨勢

2008年のアメリカ大統領選挙もその趨勢がほぼ見えてきたようです。New York Timesなどは、実質、民主党のオバマ上院議員に「当確」を打ったほどですから(下記URL参照)。

http://www31.ocn.ne.jp/~matsuo2000/08uspelmaplast.html

http://elections.nytimes.com/2008/president/whos-ahead/key-states/map.html

けれど、アメリカの大統領選挙は「Winner Takes All」システム。要は、人口比に基づき各州毎に割り当てられた大統領選挙人を、その州(+Washington D.C.)の選挙投票で一票でも上回った候補がすべていただく仕組み。州の人口にかかわらず各州に2名ずつ割り当てられる連邦上院議員の制度と同様、この大統領選挙人の配分におけるこの「州毎の勝者総取り方式」はアメリカが「アメリカ合州国」であり独立性の高い諸州の連邦であること、正に、United States に他ならないことを痛感させるものだと思います(アメリカ合衆国憲法1条3節1項。ちなみに、下院議員の定数は10年ごとに行われる人口調査に基づき人口比によって州毎に割り当てられています)。

而して、オバマ候補断然有利とは言え、現在も激戦が伝えられているネバダ・ミズーリー・インディアナ・オハイオ・ノースカロライナ・フロリダの6州(この6州に配分された大統領選挙人は選挙人総数全538名中の89名)、また、マケイン候補の逆転の可能性が皆無ではないとされるコロラド・アイオワ・ミネソタ・ニューハンプシャー・ニューメキシコ・ペンシルバニア・バージニア・ワシントン・ウィスコンシンの9州(この9州に配分された大統領選挙人は90名)の結果次第ではマケイン共和党の逆転サヨナラ勝利の芽もなくはない。すでにマケイン&ペイリンの共和党チケットが固めた大統領選挙人は163名と報じられていますから、それにこれら179名を加えれば大統領選挙で勝利するための選挙人の過半数270名に届くことも、少なくとも数字の上では可能なのですから。

而して、11月4日の大統領選挙の投票日に「やはり黒人の大統領はお断りだ!」「宗教心に疑問のある、都会に住む黒人のエリート夫妻には自分の子供の将来を任せられない!」と魂の叫びを上げて共和党のマケイン候補に土壇場で投票先を鞍替えする民主党の白人層とヒスパニック層、就中、民主党予備選挙でヒラリー・クリントン女史を勝たせた、白人人口比率もしくはヒスパニック人口比率の高い諸州、例えば、マサチューセッツ・ニューハンプシャー・ニューメキシコ・ニューヨーク・ペンシルバニア・ロードアイランド、そして、カリフォルニアの諸州で「オバマ→マケイン」の地滑り的な投票先の変更が起きれば、今回、2008年の大統領選挙は歴史に残る大逆転が起こった選挙としてアメリカの政治史に記録されることになるでしょう。

実際、労働者階級をその金城湯池とする民主党、富裕層とキリスト教右派をその支持母体とする共和党というかっての構図とは異なり、オバマ候補のその怜悧さに皮膚感覚で自分達との距離を嗅ぎ取っている白人貧困層は少なくないと報道されている。ならば、ペンシルバニア・ウィスコンシン・バージニアの3州の結果は、世論調査で予想するには限界があり投票箱が閉じられるまでは誰もわからないというのが正直な所かもしれないのです。

朝日新聞はさる9月18日の朝刊一面で「来月26日総選挙へ−3日解散自公合意」と報じました。今日はその10月26日。つまり、今日は朝日新聞の大誤報が確定した日なのですが、New York TimesやWashington Postを始めオバマ候補に当確を打ったアメリカのメディアはマケイン逆転勝利となれば世界的な大誤報を流したことになる。けれども、大統領選挙の世論調査、および(毎回大統領選挙と同時に行われる)全下院議員と三分の1の上院議員の改選に関する各州の世論調査の結果からはマスメディアは「オバマ当確」を打つしかないのであって、その結果が外れるとすればそれは「世論調査の手法には馴染まない投票先決定要因」が作用したことになる。畢竟、New York TimesやWashington Postの「オバマ当確」が結果的に誤報になったとしてもそれは仕方のないことであり、それは、「10月26日総選挙」や所謂「従軍慰安婦」なるものの存在を報じた朝日新聞の誤報のような「嘘」ではなかったと言うべきだと思います。


◆アメリカ政治は州の独立性の理解なしには理解できない

それにしても、アメリカは「United States」の国。大統領選挙の結果も、(ニューヨークとカリフォルニアだけをアメリカと考えるような)金太郎飴的な理解では到底予測は不可能。そして、これはアメリカ憲法に根ざしアメリカ政治の日常風景に垣間見えることなのです。

例えば、1787年制定の合衆国憲法を支持する連邦派(フェデラリスト:ワシントンを頭領に戴きハミルトンとアダムス率いる中央集権派)とこれに批判的な反連邦派(アンチ・フェデラリスト:ジェファーソン率いる州権擁護派)の二つがアメリカ建国後最初の政治的党派。一応、前者が今日の共和党、後者が民主党の源流とされますが、最初期には反連邦派が自派をリパブリカン(共和派)と名乗ったのでややこしい。また、フランクリン・ルーズベルト大統領(民主党)以降は、民主党が大きな政府による福祉国家を、共和党が小さな政府による自己責任の原則が貫徹する自由な国家を標榜しており、「州権の擁護−連邦政府の権限拡大」という軸でアメリカ政治史を鳥瞰することは現在でも有効であるものの、共和党と民主党の政治的立場は歴史的には「あざなえる縄の如き様相を呈してきた」と言わざるを得ないと思います。

而して、上で記した大統領選挙における「勝者総取り方式」(Winner Takes All)は「不合理とも見える結果」をしばしば引き起こすことで、外国のメディアからは「民主主義に反するルール」として評判が悪いのですがそれはアメリカの政治文化に根ざしている。

例えば、ブッシュ前テキサス州知事とゴア副大統領の間で争われた2000年の大統領選挙では、総得票数ではゴア候補がブッシュ候補を上回りながらもこのルールのために涙を飲みました。逆に、言えば、2000年も前回の2004年の大統領選挙でも共和党は全米の30余州で勝利しており、民主党は割り当てられた選挙人数の多いカリフォルニア州やニューヨーク州で効率よく選挙人を積み上げるのがいつものパターンと言える。

2008年の大統領選挙で最大の選挙人数を割り当てられているのは55人のカリフォルニア州ですが、それ以下は、テキサス(34)、ニューヨーク(31)、フロリダ(27)、ペンシルバニア(21)、オハイオ(20)、ミシガン(17)と続きます。この上位7州だけで全選挙人数の38%を占めている。他方、選挙人割当が最低の3人の州が7州(憲法で最少の州より多い選挙人を持てないことになっているワシントンD.C.を含む)、4人が4州、5人が5州。これら割当の少ない15州とD.C.を併せても選挙人は57人であり、これはほぼカリフォルニア1州と互角なのです。

では、なぜ「勝者総取り方式」(Winner Takes All)はアメリカの政治文化に根ざしていると言えるのか。それは、アメリカ憲法の解釈改憲によって漸次連邦政府の権限が強まってきているとはいえ、歴史的にも憲法的にも現在に至るもアメリカは独立性の高い「諸国」が連合した連邦国以外の何ものでもないからです。

よって、日本では親米派に対して「そんなにアメリカの<ポチ>になりたかったら51番目の州にでもしてもらえれば」と揶揄されることもままあるけれども、日本が51番目の州になった場合(2003年の人口統計では)538人の選挙人の160人が日本に割り当てられることになる(この場合、カリフォルニア州は55人→45人に削減)。畢竟、既存の州の政治的な影響力を著しく減じるこの結果を鑑みれば、政治力学的な観点からはアメリカが日本の州としての加盟を認めるはずがないことは自明なのです。

アメリカは地方自治どころかやはり連邦制の国であり、アメリカの政治指導者はこのアメリカ政治の原理を体得した人物にしか務まらない。よって、フランクリン・ルーズベルト大統領から現在のブッシュ大統領まで、第二次世界大戦以降の12人の歴代アメリカ大統領の中で州知事経験者は5名と41.6%を占めていることも偶然ではないと思います。


アメリカ政治は諸州と地域に根ざしている。ある意味、本当のアメリカの心性はニューヨークやカリフォルニアの浮ついたリベラルな表層ではなく、中西部から南部を大河のように貫く大平原地域にこそ横たわっている。まだ、インターネットが普及していなかった15年以上前に私はこのことを体感しました。

1980年代半ば、無線を使った遠隔地教育のあり方を見学させていただいていた中西部はミネソタ州のある大学のディスタンスエデュケーションの光景が今でも目に浮かぶ。ちょうど、3月頃のこと、それこそ隣家まで車で30分という大平原に住んでいる高校生から「HarvardとUniversity of Chicagoからどちらも奨学金付きでアドミッション(合格通知)が来ました」と無線が入ったとき、そのデパートメントの全スタッフが歓声をあげた光景をです。

世論調査の結果通り今回の大統領選挙はオバマ候補の圧勝で終るのかもしれない。しかし、マケイン候補の逆転の可能性も真面目にゼロではない。世論調査を超越したこの状況の背景にある「地域に根ざしたUnited States」としてのアメリカという現象に思いを馳せる時、私はこのミネソタ州の片田舎で立ち会った、自己責任の原則と隣人愛の精神に価値を置くアメリカの人々の心性の発露を連想せざるをえない。地平線を望む大平原にいながらも、国家レヴェルの競争に参加して能力開発を怠ることのない、健全な野心と潔い自己責任の姿勢に満ちた1人の女子高校生をアメリカという社会は応援し誇りに感じる。それは貧困や自己実現が思うようにいかない現状を連邦政府の無策に帰してこと足れりと考えるリベラルなsomethingとは好対照をなしている。

而して、そのような「保守主義の粋が息づく社会」は日本の社会統合の理念とも極めて整合的ではないでしょうか。ならば、アメリカが世界唯一の超大国から極普通の世界一の大国になりつつある現在、他方、日本がその安全保障においても国際政治・経済においてもアメリカとの枢軸関係に頼らざるをえない現在においては、畢竟、日本はアメリカに何かを期待することはそろそろ止めて、政治的価値と社会的価値を共有するこの唯一の同盟国のために何が貢献できるかということこそを考えるべきである。大統領選挙の投票日を10日後に控えて、また、大統領選挙の結果の如何にかかわらず私はそう考えています。

尚、アメリカ大統領選挙に関しては、私が作成した下記の「Yahoo検定」をご参照くだされば嬉しいと思います。



・アメリカ大統領選挙観戦資格検定(四級)(五級)(六級)
 http://minna.cert.yahoo.co.jp/ormh/cert_list?order=0




(2008年10月26日:yahoo版にアップロード)

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2008.10.26(16:30)|海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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