◆アメリカ大統領選挙というクラインの壺:Federal Democracy

なぜ、「州毎の勝者総取り方式:Winner Takes All」はアメリカの政治文化に根ざしていると言えるのか。それは、アメリカ憲法の解釈改憲によって漸次連邦政府の権限が強まってきているとはいえ、歴史的にも憲法的にも現在に至るもアメリカは独立性の高い「諸邦」が連合した連邦国以外の何ものでもないからです。

ことほど左様に、アメリカは各々相矛盾する「連邦制」と「主権国家=国民国家」、および、「自由」と「民主主義」が紡ぎ出す、謂わば「二重螺旋構造の緊張関係」の上で建国以来その形を漸次変えてきたと言えるでしょう。蓋し、「National Republic」若しくは「Federal Democracy」という(「燃えない火」や「液体の氷」ほど形容矛盾には陥ってはいないものの、ある意味、空想上の)「麒麟」や「鳳凰」を追い求めてきた歴史がアメリカの国家と憲法の歴史だったの、鴨。

例えば、1787年制定の合衆国憲法を支持する連邦派(フェデラリスト:ワシントンを頭領に戴きハミルトンとアダムス率いる中央集権派)とこれに批判的な反連邦派(アンチ・フェデラリスト:ジェファーソン率いる州権擁護派)の二つがアメリカ建国後最初の政治的党派。一応、前者が今日の共和党、後者が民主党の源流とされますが、最初期には後者の反連邦派が自派をリパブリカン(共和派)と名乗ったのでややこしい。

また、フランクリン・ルーズベルト大統領(民主党)以降は、民主党が大きな政府による福祉国家を、共和党が小さな政府による自己責任の原則が貫徹する自由な国家社会を標榜しており、「州権の擁護-連邦政府の権限拡大」という対立軸でアメリカ政治史を鳥瞰することは現在でも有効ではあるものの、共和党と民主党の政治的立場は歴史的には「あざなえる縄の如き様相を呈してきた」と言わざるを得ないと思います。閑話休題。


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日本では親米保守派に対して「そんなにアメリカの<ポチ>になりたかったら51番目の州にでもしてもらえば」と揶揄されることもままある。

けれども、日本が51番目の州になった場合(2010年の人口統計では)538人の選挙人の128人が「日本州」に割り当てられることになり、この場合、カリフォルニア州は「55人→39人」に減少します。蓋し、既存の州の政治的な影響力を著しく減じるこの結果を鑑みれば、政治力学的な観点からはアメリカが日本の州としての加盟を認めるはずがないことは自明でしょう。

畢竟、アメリカは地方自治旺盛な国どころかやはり連邦制の国である。よって、アメリカの政治指導者はこの政治の原理を体得した人物にしか務まらないの、鴨。

而して、フランクリン・ルーズベルト大統領から現在のオバマ大統領まで、第二次世界大戦以降の13人の歴代アメリカ大統領の中で州知事経験者は5名と38.46%を占めていることも(前マサチューセッツ州知事であった共和党のロムニー氏が大統領に当選すれば、第二次大戦後の6人目の州知事経験者の大統領になり、知事経験者の占める割合は42.86%になることも、)偶然ではないのだと思います。


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◆アメリカを貫く保守主義の心性とエートス

アメリカの政治は諸州と地域に根ざしている。本当のアメリカの心性はニューヨークやカリフォルニアの浮ついたリベラルな表層ではなく、中西部から南部を大河のように貫く大草原にこそ横たわっている。

実は、私自身、まだインターネットが普及していなかった20年近く前にこのことを皮膚感覚であらためて体感したことがあります。1980年代半ば、無線を使った遠隔地教育のあり方を見学させていただいていた、中西部はミネソタ州のある大学のディスタンスエデュケーションの光景が今でも目に浮かぶということ。

それは、ちょうど、3月上旬のこと、それこそ隣家まで車で30分という大平原に住んでいる高校生から「HarvardとUniversity of Chicagoからどちらも奨学金付きでアドミッション(合格通知)が来ました」と無線が入ったとき、そのデパートメントの全スタッフが歓声をあげた光景をです。



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現在の世論調査の結果通り今回の大統領選挙は、中道左派のオバマ候補または中道右派のロムニー候補の勝利で終るのかもしれません。そう私も思います。コースト・ツー・コーストで幅広い有権者の支持を獲得して、日本で言えば「真正保守」なるイデオロギー過剰な候補では、最後の勝利を、11月第1月曜日の次の火曜日の<関ヶ原>で収めることは難しいでしょうから。

しかし、民主党が勝とうが共和党が勝とうが、アメリカの本質は「健全なる保守主義」にこそある。要は、伝統の尊重と、左右の教条主義への懐疑、加之、小さな政府を好ましく感じ、自己責任の原則に価値を置く心性こそアメリカのエートスの基盤である。と、そう私は考えます。

ならば、「the 99%」なるルソーの「一般意志」ばりの妄想が(要は、この世に「the 99%」という具多的な個人は存在せず、まして、「the 99%」の具体的な利害なり特定の政治的意思なるものも存在しないのです!)世間を騒がせたことに端的な如く、アメリカ社会の閉塞感を打破するには、「茶話会運動:Tea Party movement」に具現するアメリカの健全な保守主義を尊重する政策しかどの政権も取れるはずはないとも。

蓋し、このことは、「the 99%」が、結局、二大政党を通じても第三の政党を押し立てるにせよ今回の大統領選挙に駒を進める、資金力もなく政策の統合もできないでいるのを尻目に、「Tea Party」に親しいリバタリアンは第三の政党を通じても、あるいは、既存の二大政党を通してもいずれも大統領選挙に大きな影響を与えていること。このことを見ても(おそらく、誰が共和党の大統領候補になろうとも、大統領候補か副大統領候補は間違いなく保守派の人物が指名される趨勢であることからも)これはそうそう荒唐無稽な私の願望ではなかろうと思います。尚、アメリカ大統領選挙における「副大統領」と「宗教」の持つ意義については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。

・2012年大統領選挙の火蓋切られる

 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60963193.html


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ことほど左様に、世論調査の描く状況を超越した/貫く「地域に根ざしたUnited States」としてのアメリカという現象に思いを馳せる時、私は、自己責任の原則と隣人愛の精神に価値を置くアメリカの人々の心性を連想せざるを得ないのです。

先の実体験に引きつけて敷衍させていただければ、ウィスコンシン州やアイダホ州の、地平線を望む大平原に育ちながら、国家レヴェルの競争に参加して能力開発を怠らない、健全な野心と潔い自己責任の姿勢に満ちた1人の女子高校生がいたとすれば、そんな彼女をアメリカという社会は応援し彼女の存在を誇りに感じる社会である。すなわち、アメリカは彼女に遠隔地教育の便宜を与え奨学金を手配して、彼女のハーバードやシカゴ大学への進学を支援してやまない社会ということです。

加之、更に実例を加え敷衍します。
それはアメリカ出張の帰りに偶々隣に座った在日米軍兵士との出会い。

20歳の空軍兵士。彼女は感謝祭の休暇を郷里のモンタナ州ですごして東京に帰る途中でした。そう、家庭が貧しく、また、奨学金を獲得するGPA(高校の成績)も取れなかった田舎娘。彼女は、しかし、グラフィックデザイナーになる夢を叶えるため、大学・大学院に進む機会と資金を得るために、迷わず軍隊に志願したとのこと。


而して、自己紹介がすんでから成田に着くまでの10時間余り、私がアメリカの大学・大学院をクライアントとするコンサルタントと知るや、彼女からは、日本駐在中の進学準備のノウハウ(就中、中近東や南アジアに移動している際の米軍内の大学とe-learning併用のノウハウ)、そして、日本での就職のTipsを求める質問の嵐でした。しかも、情報のgive and takeのマナーを弁えた清々しい嵐。

Ask, and it shall be given you;
seek, and ye shall find;
knock, and it shall be opened unto you. 


そう、「求めよさらば与えられん!」なのです。アメリカの社会では、give and takeとAsk, and it shall be given youのマナー、並びに、僅かばかりのユーモアと勇気があれば、そして、十分な努力があれば与えられるのです。各人が欲してよいものがですよ。

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而して、「アメリカ軍の兵士は貧困層出身者が多い、戦死者もよって出身家庭の所得に反比例する」等々の左翼・リベラル派の物言いは、彼女の前向きの姿勢、芳紀二十歳のレディーが漂わす気品に比べればいかにさもしく薄汚れたものか。

そのような左翼・リベラル派の物言いは、それが嘘でも本当でも、本当でも嘘でも、(与件としての不平等と個人の個性としての能力差が、寧ろ、自然である人間の現存在性のあり様を鑑みれば)問題を解決するという意味での正解にはけっしてたどり着けない不平不満にすぎない。それは、事実認識としては間違いではないのだろうけれど、与えられた人生を良く善く強く生きるという目的のためには不毛なもの、すなわち、自己を<神>の高みに置く、無責任な評論家の傲岸不遜にすぎない。と、そう私は考えます。

畢竟、彼女達の心性とその心性を受け止めるアメリカ社会のエートスは、貧困からの脱却や自己実現が思うようにいかない現状を連邦政府の無策に帰してこと足れりと考えるリベラルなsomethingとは好対照をなす保守主義の発露・顕現であるとも。

而して、そのような「保守主義の粋が息づく社会」は日本の社会統合の理念とも極めて整合的ではないでしょうか。ならば、この20年の間に、アメリカが世界唯一の超大国から極普通の世界一の大国になった現在、他方、日本がその安全保障においても国際政治・経済においてもアメリカとの枢軸関係に頼らざるをえない現在、蓋し、日本はアメリカに何かを期待することはそろそろ止めて、政治的と社会的の価値を共有するこの唯一の同盟国のために何が貢献できるかということをこそ考えるべきである。

2012年の大統領選挙の火蓋が切られた(日本時間・2012年1月4日の)今回のアイオワ州の共和党党員集会(Iowa Republican caucuses)の日、私はそう考えました。

尚、アメリカ大統領選挙に関しては下記の拙稿と「Yahoo検定」をご参照くだされば嬉しいと思います。

・来年はなんの年? アメリカ大統領選挙-観戦資格検定案内

 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60927803.html



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◆アメリカ大統領選挙の特徴:Winner Takes All

アメリカの大統領選挙(the U.S. Presidential Election)は「Winner Takes All」システム。要は、メイン州とネブラスカ州を除く48州とWashington D.C.では、各州(+D.C.)毎に割り当てられた大統領選挙人を、その州(+D.C.)の投票で一票でも上回った候補がすべて獲得する仕組み(presidential electors→the electoral college of a state)です。

州の人口にかかわらず各州に2名ずつ割り当てられる連邦上院議員の制度と同様(アメリカ合衆国の連邦憲法1条3節1項および修正17条1項参照;ちなみに、同連邦憲法1条2節1項に従い、連邦下院議員の定数は10年ごとに行われる人口調査に基づき人口比によって州毎に割り当てられています。尚、今回2012年の大統領選挙の選挙人の各州への割り当ては2010年の国勢調査の結果、前回の2008年のものから変更されています。)、この大統領選挙における「州毎の勝者総取り方式」はアメリカが「合州国」であり独立性の高い諸州の連邦であること、正に、united states のUnited Stateに他ならないことを痛感させるものだと思います。

・Play Back 2008年アメリカ大統領選挙

 


・2008年アメリカ大統領選挙の構図



 
・資料:アメリカ合衆国憲法1条2節1項および3節1項、並びに、修正17条1項

Section 2. The House of Representatives shall be composed of members chosen every second year by the people of the several States, and the electors in each State shall have the qualifications requisite for electors of the most numerous branch of the State legislature.
(下院は、2年ごとに各州の公民によって選出された議員によって組織される。各州における選挙人は、州議会の議員数の最も多い部門の選挙人に必要な資格を有していなければならない)

Section 3. The Senate of the United States shall be composed of two Senators from each State, chosen by the legislature thereof, for six years; and each Senator shall have one Vote.【*Article I, section 3, of the Constitution was modified by the 17th amendment.】
(合衆国上院は、各州から6年の任期でその州の議会によって選出された2名の上院議員によって構成される。各上院議員は、1票の投票権を有する)【*連邦憲法1条3節は同憲法修正17条によって修正】

AMENDMENT XVII (Passed by Congress May 13, 1912. Ratified April 8, 1913.)
The Senate of the United States shall be composed of two Senators from each State, elected by the people thereof, for six years; and each Senator shall have one vote. The electors in each State shall have the qualifications requisite for electors of the most numerous branch of the State legislatures.
(合衆国の上院は、各州からその公民によって選ばれた任期6年の2名の上院議員から構成され、各上院議員は1票の投票権を有する。それぞれの州の選挙人は、州議会の議員数の最も多い部門の選挙人として必要な資格を有していなければならない)




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重要なことは、アメリカの50州(+D.C.)は、この「Winner Takes All」システムによって、①民主党と共和党の地盤が強固であり、その「投票結果」はよほどのことがない限り変動しない「鉄板の州:Safe States/Solid States」と、②両政党の地盤の堅さが拮抗しているか/4年なり8年なりの比較的短い期間で有権者の属性(所得・職業・教育水準・エスニシティー等々)が変動して、その「投票結果」は神のみぞ知る領域に属する「激戦州:Tossup States/Battleground States」の両極に分かれて分布しているということです。

そして、後者②の中でも4年に一度の大統領選挙の度に、民主党と共和党の勝敗が変わる、
各陣営の選挙参謀泣かせの州は「揺れる州:Swing States」とも呼ばれています。

・Swing States


 

例えば、前回2008年の大統領選挙、激戦が伝えられていたネバダ・ミズーリー・インディアナ・オハイオ・ノースキャロライナ・フロリダの6州(この6州に配分された大統領選挙人は選挙人総数全538名中の89名)、加之、敗れたマケイン候補の逆転の可能性が皆無ではないとされていたコロラド・アイオワ・ミネソタ・ニューハンプシャー・ニューメキシコ・ペンシルバニア・バージニア・ワシントン・ウィスコンシンの9州(この9州に配分された大統領選挙人は90名)の結果次第では共和党の逆転サヨナラ勝利の芽もなくはなかったわけです。

実際、労働者階級と都市部のインテリ層をその金城湯池とする民主党、富裕層とキリスト教右派をその支持母体とする共和党というかっての構図とは異なり、オバマ候補のその怜悧さに皮膚感覚で自分達との距離を嗅ぎ取った白人貧困層も少なくないと報道されていました。ならば、ペンシルバニア・ウィスコンシン・バージニアの3州の結果は、世論調査で予想するには限界があり投票箱が開けられるまでは誰もわからないというのが正直な所だったのです。而して、今回2012年の大統領選挙ではこの「共和党が逆転する場合の台本」の構図は更に強固になっているの、鴨。と、そう私は考えます。


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◆アメリカ大統領選挙の中軸:United States

アメリカは「United States」の国。大統領選挙の結果も、(ニューヨークとカリフォルニアだけをアメリカと思い込む)金太郎飴的な理解では到底予測は不可能です。30年近くアメリカ大統領選挙を日米双方の目線で観察していてつくづくそう思います。そして、これはアメリカ憲法に根ざしているアメリカ政治の日常風景に垣間見えることなの、鴨とも。

要は、大統領選挙における「Winner Takes All」は、不合理とも見える結果をしばしば引き起こすことで、外国のメディアからは「民主主義に反するルール」として評判が悪いのですが、それは「余計なお世話」であり、この総取り方式は、少なくとも現在に至るまでのアメリカの政治文化に根ざしているもの。

例えば、ブッシュ前テキサス州知事とゴア副大統領の間で争われた12年前の大統領選挙、2000年の大統領選挙では、総得票数ではゴア候補がブッシュ候補を上回りながらもこのルールのために民主党は涙を飲みました。逆に言えば、2000年も前々回の2004年の大統領選挙でも共和党は全米の30余州で勝利しており、民主党は割り当てられた選挙人数の多いカリフォルニア州やニューヨーク州で効率よく選挙人を積み上げるのがいつものパターンと言えるのです。

・2008年大統領選挙-Solid or Swing?



・2004年大統領選挙-Solid or Swing?


 
2010年の国勢調査を受けて変更された結果、今回2012年の大統領選挙で最大の選挙人数を割り当てられているのは55人のカリフォルニア州ですが、それ以下は、テキサス(38)、ニューヨーク(29)、フロリダ(29)、ペンシルバニア(20)、イリノイ(20)、オハイオ(18)、ミシガン(16)、ジョージア(16)、ノースキャロライナ(15)と続きます。この上位10州だけで538人の全選挙人数の47.58%を占める。他方、選挙人割当が最低の3人の州が(憲法で最少の州より多い選挙人を持てないことになっているWashington D.C.を含む)8州、4人が5州、5人が3州、6人が5州。割当の少ないこれら20州とD.C.を併せても選挙人は89人であり、それはカリフォルニアとテキサスの2州の合計にも及びません。

・2000年大統領選挙-Solid or Swing?

 

・1996年大統領選挙-Solid or Swing?



 

<続く>



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昨日、2012年1月3日のアイオワ州の共和党党員集会(Iowa Republican caucuses)で今回2012年のアメリカ大統領選挙の火蓋が切られました。而して、共和党と民主党でその大統領候補が絞り込まれるプロセス(The series of presidential primary)においても、アメリカの大統領選挙の観戦Tipsの一つは「その「大統領候補の候補」が誰を「副大統領候補」に指名するだろうか」ということ、鴨。

その点、ここ40年程のことにせよ慣例によれば、現職の大統領と副大統領のコンビで今年11月6日、11月の第1月曜日の次の火曜日の<関ヶ原>に臨むことがほぼ確実な民主党オバマ陣営に比べて共和党側により「観戦の楽しみ」があるということでしょう。

前回2008年の「the tickets」(大統領候補-副大統領候補のコンビの名が書かれた投票名簿)は民主党の「オバマ-バイデン」に対する共和党の「マケイン-ペイリン」でした。それらの副大統領候補は、民主党が上院議員歴35年の党重鎮、他方、共和党が一期目のアラスカ州知事。

・2008年大統領選挙のthe two ticketsのプロフィール

 

正に、好対照な人選。好対照な二人ではありますが、しかし、それぞれ「自党の大統領候補にない資質を持っている」という点では共通していた。蓋し、この共通点は偶さかのことではなく、むしろ、アメリカ政治の一つの定番と言ってもよいものです。

なぜならば、(名目上は連邦上院議院の議長でもありますが)アメリカの副大統領の最重要な使命は大統領が欠けた際に大統領に昇格すること。逆に言えば、大統領が暗殺でもされない限り副大統領には特に定まった職務はない(★)。よって、副大統領候補の最大の役目は大統領選挙で自党の大統領候補を勝利させることだからです。

すなわち、大統領選挙で国民からより広範な支持を自党の「ticket」に獲得すべく、アメリカでは大統領と副大統領の候補は、政治的立場-出身地-支持基盤-エスニカルバックグラウンド-所属するキリスト教の宗派等々、多様な側面で異質な組み合わせになることも稀ではない。もって、両者併せて<集票の守備範囲>を広げる戦略は(20世紀中葉、大衆民主主義下の福祉国家にアメリカ社会が移行して以降の、就中、1870年に全人種の成人男子の普通選挙権が、また、1920年に女性の普通選挙権がアメリカ合衆国憲法修正15条と19条によって導入されて以降、)一種アメリカ政治の常道なのです。

例えば、東部出身のJFKとテキサスのジョンソン副大統領、(このticketで大統領選自体を戦ったわけではないのですが)カリフォルニアのやり手弁護士ニクソンと中西部の党人政治家フォード副大統領のタッグがその典型だったと言えるでしょう。而して、この点、前回2008年の「本番の大統領選挙:popular vote」の二つのticketsは共に、黒人の大統領候補とカトリックの白人副大統領候補、中道リベラルの老獪な大統領候補と保守系の若き女性副大統領候補というアメリカ政治史上で最も<守備範囲>の広いものになったと思います。

★註:大統領継承順位

連邦憲法2条1節6項および修正25条1節によれば、大統領が欠けた場合には副大統領が大統領に昇格する、大統領と副大統領がともに欠けた場合の大統領継承順位については法律でこれを定めると規定しています。而して、その「法律」、「大統領継承法:The Presidential Succession Act」(1947年)はそのa条1項で、

「If, by reason of death, resignation, removal from office, inability, or failure to qualify, there is neither a President nor Vice President to discharge the powers and duties of the office of President, then the Speaker of the House of Representatives shall, upon his resignation as Speaker and as Representative in Congress, act as President.」(もし死亡、辞任、解任、執務不能などの理由により、大統領と副大統領の双方が大統領の責務を果たし権限を執行できない場合には、下院議長が、下院議長と下院議員を辞職したのちに、大統領としてこれを行う)

と規定しており、加之、下院議長以下の大統領継承順位も(具体的には、上院仮議長→国務長官→財務長官→国防長官→司法長官→・・・の如く)詳細に定められています。

実際、トルーマン大統領はフランクリン・ルーズベルト大統領の、ジョンソン大統領はJFKの、ニクソン大統領はアイゼンハワー大統領のそれぞれ副大統領でしたが、オバマ大統領までの歴代44代-43人の大統領の中で、副大統領経験者は14名の32.56%であり(大統領の暗殺・病死にともなう昇格は内9人)、副大統領のポジションは大統領になる上での主要なステップなの、鴨。

尚、日本ではその公職選挙法で、国会議員や知事などが他の公職の選挙に出馬するときは、立候補届け出が受理された段階でそれまでの公職を辞したとみなされ失職する旨定められていますが、アメリカでは連邦議員や知事はその職に留まったまま大統領選挙に出馬することが可能です(アメリカ大統領選挙のトリビア、および、アメリカ大統領選挙に直接関わるアメリカ合衆国憲法の条項に関しては下記拙稿と私が作成したYahoo検定をご参照いただければ嬉しいです)。閑話休題。


・来年はなんの年? アメリカ大統領選挙-観戦資格検定案内

 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60927803.html


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大急ぎで補足。それは、福祉国家における行政権肥大化の趨勢、加之、現下のグローバル化の進行にともないホワイトハウスがかってないほど大量かつ多様なタスクを抱えるようになったことの裏面でしょうけれども、漸次、少なくともここ20年あまり(ゴア副大統領やチェイニー副大統領を想起すれば明らかなように)大統領選挙後も副大統領は単なる「名誉職」ではなくなってきているということ。

而して、必然的に、遅くとも90年代半ば以降は、副大統領候補と大統領候補は政治的傾向の近しいコンビ(ticket)にならざるをえなくなった。これは、(単一の大統領選挙の結果、1位の候補者が大統領に2位の候補者が副大統領になる仕組みの下で、往々にして)不倶戴天のライバルが正副大統領のコンビを形成していた連邦憲法の当初のルール(2条1節3項)が、大統領と副大統領を別々に選挙するよう1804年に改められ、政治上もより近しい同志の二人がa ticketを形成するようになったジェファーソン第3代大統領時代の憲法修正(修正12条)の趣旨から見れば、より憲法に沿った形に現状が変わってきたということなの、鴨。

蓋し、ならば、前回の両党のticketは表面的-形式的には90年代半ば以前のそれに戻った観さえあるのですが、それは様々な面でのアメリカ社会の分裂が更に昂進していることの証左なのかもしれません。両党ともに<守備範囲の拡大&既存の陣地の確保>を少しでも怠れば大統領選に勝ち残れないということでしょうから。

・歴代アメリカ大統領のキリスト教宗派

 

前回の大統領選挙。民主党のオバマ候補は自身に対する「外交経験不足」という批判に対抗すべく外交専門家バイデン氏を副大統領に指名した。そう噂されています。もちろんこれも間違いないでしょうが、オバマ候補は自身が打ち負かしたヒラリー・クリントン候補(否、クリントン家)の金城湯池的の票田であった白人労働者階級とスペイン語を話す中南米系グループの票を確保するために、白人労働者階級出身のカトリック、バイデン氏を副大統領に指名した側面もあると私は考えています。

その多くはいまだに低所得層に分類される中南米系の人々の大部分は敬虔なカトリックであり、前々回2004年の大統領選挙では、彼等にとってはより好ましいはずの民主党の経済雇用政策ではなくキリスト教倫理の堅持を唱えたブッシュ大統領の主張に共感して少なくないこのグループの票が共和党に流れたと言われていますから。

ならば、今回2012年の共和党大統領候補選挙でも、例えば、アメリカ社会では少数派の「モルモン教:末日聖徒イエス・キリスト教会」に属する、(下馬評では最有力とされる)中道右派のミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事にとってはこの宗教の契機は他の候補にもまして重要になるの、鴨。と、そう私は考えます。

蓋し、例えば、下馬評通りロムニー氏が共和党の大統領候補の指名を確実にした段階では、現在、全米を席巻している保守主義の潮流、「茶話会運動:Tea Party movement」のマスコットになった感のある(この4年間で、降りかかる数多のスキャンダルをものともせず、否、麻薬・異性問題・身内びいき批判等々の攻撃を肥やしにしてコースト・ツー・コーストでの政治力を涵養してきた)ペイリン氏に代表される保守派の支持を得るために「福音派と親しい保守派の、かつ、南部/西部を地盤とする人物」を副大統領候補に指名することは確実であろうとも。

・2004年アメリカ大統領選挙の争点

 


2012年の大統領選挙戦が開幕したばかりでもあり昔話に終始しますけれども。前々回2004年の選挙では、全有権者の22%が「誰に投票するかを決める上で候補者の倫理観(倫理宗教的立場)を最も重視した」と回答しています。これは、宗教と倫理の問題が8年前の2004年のアメリカ社会においては経済・雇用(20%)やテロ対策(19%)よりも重要な問題だったということです。

畢竟、それがアメリカ社会。而して、サブプライムローンの破綻(2007年)、それに引き続いたリーマンショック(2008年)もあって不調が続くアメリカ経済の状況の裏面として、「the 99%」による徒花的な騒動に端的な如き経済不如意が加速させるアメリカ社会の閉塞感を打破するに足りる、理念と腕力が大統領に求められている今回の2012年は、2008年とは違い、寧ろ、2004年とパラレルに、宗教と倫理観が(すなわち、妊娠中絶と同性愛を巡る是非が)大統領選挙でも有権者の投票行動決定の重要な要因になる可能性は低くはないの、鴨。

そして、この予想が満更間違いではないとするならば、ドングリの背比べの共和党大統領候補のリストとは別に、その彼や彼女が共和党の大統領候補になって指名する副大統領候補は、繰り返しになりますが、福音派の保守系有権者と中南米系の敬虔なカトリックの有権者を狙い撃ちした人物にならざるを得ない。と、私はそう考えています。

б(≧◇≦)ノ ・・・楽しみ~♪
б(≧◇≦)ノ ・・・興味津々~♪

それに比べて、日本の

б(≧◇≦)ノ ・・・民主党政権の凄まじさと自民党現執行部の情けなさよ-!
б(≧◇≦)ノ ・・・世界の保守派はアメリカの「茶話会運動」と連帯すべき、鴨!


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テーマ : 2012アメリカ大統領選挙
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来年はオリンピックイヤーにして閏年(Olympic year and leap year)。要は、来年、2012年はアメリカ大統領選挙の年(the presidential (election)year)。いやー、廻る<季節>の回転スピード、最近、加速していませんか。ビックバンの勢いも収まり、宇宙が縮み始めてる? その逆?

やはり、光よりも時間(?)の方が速いの、鴨(←「速度=移動距離/所要時間」の定義からも出鱈目だし、これ、受験生の皆さん、眉唾ですよ!)。いずれにせよ、アメリカ大統領選挙が廻り来るたびに、近頃は、1年とか4年とかの中途半端な時間の単位ではなく、例えば、「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」と喝破した宮本武蔵の言葉に倣って、「千日=鍛」「万日=錬」とかのスパンの方がまだ実際の時間感覚に合うように感じないではないです。





他方、オリンピックは陸上100メートルのメダリスト達が口々に「10秒は長い」と語っているように、そう、我が母校、同志社大学の先輩にして、甲子園を沸かせた池田高校野球部のあの蔦文也監督の言葉、「鍛錬千日之行/勝負一瞬之行」という経緯もまた時間を巡る実感覚。蓋し、<稽古>と<勝負>との、畢竟、<鍛錬>と<瞬間>の狭間に置かれている存在であろう人間にとって、このあい矛盾する時間感覚もまた共に真理なのでしょう。


而して、ヒンズー教の箴言に曰く、「自分が変われば相手も変わる」、と。加之、

心が変われば態度も変わる。
態度が変われば行動も変わる。

行動が変われば習慣も変わる。
習慣が変われば人格が変わる。

人格が変われば運命が変わる。
運命が変われば人生が変わる。 



鍛錬と一瞬という時間の両義性。そして、変わる自分と変わらない自分。

これらのあい矛盾する時間感覚を同時に帯びて生きている人間同士が、よって、世の中で<変化するもの>と<不変なるもの>とを巡って、加之、<変化する自分>と<変化しない自分>の両義的存在である<自分>を演じることが人生なの、鴨。そんな人生の集積が、世間であり歴史なの、鴨。とかとか、考える<2011年3月11日午後2時46分>の年の師走の午後。

ということで、今後掲載するであろう「アメリカ大統領選挙関連記事」の露払いまたは太刀持ちとして、4年前に作成したYahoo検定の案内をアップロードさせていただきます。来年新春には、引き続き、3級(政党史)、2級(アメリカ憲法)、1級(宗教・地域・エスニシティー)の検定続編も作成する予定。でも、予定は未定、未定は願望ですけどね(笑)

・アメリカ大統領選挙観戦資格検定(六級)
 http://minna.cert.yahoo.co.jp/ormh/220420

・アメリカ大統領選挙観戦資格検定(五級)
 http://minna.cert.yahoo.co.jp/ormh/219954

・アメリカ大統領選挙観戦資格検定(四級)
 http://minna.cert.yahoo.co.jp/ormh/219512










と、前にトライいただいた方も、この機会に「復習」どうですか~♪
よろしければお試しください。ところで、「時間」って、それ美味しいの?


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◆資料:アメリカ合衆国憲法抜粋


The Constitution of the United States


Article. II.
Section. 1.
The executive Power shall be vested in a President of the United States of America. He shall hold his Office during the Term of four Years, and, together with the Vice President, chosen for the same Term, be elected, as follows:

Each State shall appoint, in such Manner as the Legislature thereof may direct, a Number of Electors, equal to the whole Number of Senators and Representatives to which the State may be entitled in the Congress: but no Senator or Representative, or Person holding an Office of Trust or Profit under the United States, shall be appointed an Elector.

・・・

The Congress may determine the Time of chusing the Electors, and the Day on which they shall give their Votes; which Day shall be the same throughout the United States.

No Person except a natural born Citizen, or a Citizen of the United States, at the time of the Adoption of this Constitution, shall be eligible to the Office of President; neither shall any Person be eligible to that Office who shall not have attained to the Age of thirty five Years, and been fourteen Years a Resident within the United States. 


アメリカ合衆国憲法

第2条 
第1節[大統領と副大統領、選出方法]
[第1項]執行権は、アメリカ合衆国大統領に属する。大統領の任期は4年とし、同一の任期で選任される副大統領とともに、つぎの方法で選出される。

[第2項]各々の州は、その立法部が定める方法により、その州から連邦議会に選出することのできる上院議員および下院議員の総数と同数の選挙人を任命する。但し、上院議員、下院議員および合衆国から報酬または信任を受けて官職にあるいかなる者も、選挙人に選任されることはできない。

・・・

[第4項]連邦議会は、選挙人を選任する時および選挙人が投票を行う日を定めることができる。投票日は合衆国全土を通じて同一の日でなければならない。

[第5項]出生により合衆国市民である者、または、この憲法の成立時に合衆国市民である者でなければ、大統領の職に就くことはできない。年齢満35歳に達していない者、および合衆国内に住所を得て14年を経過していない者は、大統領の職に就くことはできない。


AMENDMENT XII
(Passed by Congress December 9, 1803. Ratified June 15, 1804.)

The Electors shall meet in their respective states and vote by ballot for President and Vice-President, one of whom, at least, shall not be an inhabitant of the same state with themselves; they shall name in their ballots the person voted for as President, and in distinct ballots the person voted for as Vice-President, and they shall make distinct lists of all persons voted for as President, and of all persons voted for as Vice-President, and of the number of votes for each, which lists they shall sign and certify, and transmit sealed to the seat of the government of the United States, directed to the President of the Senate;・・・


修正第12条 [正副大統領の選出方法の改正] [1804年成立]

選挙人は、各々の州で集会して、無記名投票により、大統領および副大統領を選出するための投票を行う。そのうち少なくとも1名は、選挙人と同じ州の住民であってはならない。選挙人は、一の投票用紙に大統領として投票する者の氏名を記し、他の投票用紙に副大統領として投票する者の氏名を記す。選挙人は、大統領として得票したすべての者および各々の得票数、ならびに副大統領として得票したすべての者および各々の得票数を記した別個の一覧表を作成し、これらに署名し認証した上で、封印をほどこして上院議長【=現職の副大統領】に宛てて、合衆国政府の所在地に送付する。・・・



AMENDMENT XX
(Passed by Congress March 2, 1932. Ratified January 23, 1933.)

Section 1.
The terms of the President and the Vice President shall end at noon on the 20th day of January, and the terms of Senators and Representatives at noon on the 3d day of January, of the years in which such terms would have ended if this article had not been ratified; and the terms of their successors shall then begin. 


修正第20条[正副大統領と連邦議員の任期] [1933年成立]

第1項 
大統領および副大統領の任期は、この修正条項が承認されていなければその任期が終了していたはずの年の1月20日の正午に終了し、上院議員および下院議員の任期は、同じ年の1月3日の正午に終了する。後任者の任期はその時に始まる。



AMENDMENT XXII
(Passed by Congress March 21, 1947. Ratified February 27, 1951.)

Section 1.
No person shall be elected to the office of the President more than twice, and no person who has held the office of President, or acted as President, for more than two years of a term to which some other person was elected President shall be elected to the office of President more than once. ・・・ 


修正第22条[大統領の三選禁止] [1951年成立]

第1項 
何人も、大統領の職に2回を超えて選出されることはできない。他の者が大統領として選出された任期の間に、2年以上大統領の職を保持しまたは大統領の職務を行った者は、大統領の職に1回を超えて選出されることはできない。・・・


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テーマ : 2012アメリカ大統領選挙
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