ワシントン・ポスト「拡大する中国の影に怯え右傾化する日本」(1)





下記拙稿に引き続き、「右傾化する日本」という切り口から現下の日本をレポートしたアメリカ有力紙の報道を紹介します。出典は、"With China’s rise, Japan shifts to the right"(The Washington Post, September 21, 2012)、而して、記事タイトルの意味は「支那の興隆に押され右傾化する日本」あるいは「拡大する中国の影に怯え右傾化する日本」といったところでしょうか。先ず、出典記事を俎上に載せた日本側の報道を転記させていただきます。

・ウォールストリート・ジャーナル
「日本でナショナリストの影響力が拡大」(上)~(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/61521616.html

・安倍総理の逆襲-「従軍慰安婦」という空中楼閣に依拠した
 New York Timesの自民党新総裁紹介記事(上)~(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/61507543.html



▼「日本は右傾化」戦後最も対決的と米紙

21日付の米紙ワシントン・ポストは、沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国との対立などを背景に、日本が「緩やかだが、かなりの右傾化」を始めていると指摘、周辺地域での行動は「第2次大戦後、最も対決的」になっていると1面で報じた。

同紙は、日本の政治家が与野党問わず集団的自衛権の行使容認を主張するようになり、憲法改正論が高まっていると分析。沖縄県・与那国島への陸上自衛隊配備計画などを挙げ、自衛隊にも「より強力な役割」が与えられつつあるとの見方を示した。

背景として海洋進出を活発化させる中国の存在に加え、20年にわたる経済停滞の下で「失われた影響力を回復すべきだという感覚」が日本国内で広がっていることを指摘した。一方で、日本には軍事力保持への複雑な感情が根強く残り、右傾化には一定の限界があるとの専門家の見方も紹介している。


(共同・2012年9月22日


▼「右傾化」→「普通の国家並み」 米メディア、尖閣対立で日本側対応分析

米国メディアが日中の尖閣諸島をめぐる対立での日本側の対応の分析を頻繁に報じるようになった。中国への強固な態度を集団的自衛権の解禁や憲法改正への動きと結びつけ「右傾化」と単純に決めつける向きが一部にある一方、日本がついに他の国家並みになってきたとする見方が多い点で、解釈は客観的になったともいえそうだ。

尖閣問題を機とする日本の変化については、ワシントン・ポスト(21日付)の「日本が右寄りのシフト」という見出しの東京発の長文記事が目立った。「(日本が)中国のために外交、軍事のスタンスが強硬にも」という副見出しをつけ、野田首相をタカ派と呼び中国への強い態度を「右寄り」と評しつつも、「日本はこれまで世界一の消極平和主義の国だったのがやっと(他国並みの)中道地点へと向かうようになった」と強調した

さらに、日本の憲法や集団的自衛権の禁止が世界でも異端であることを説明し「これまでは中国との対決や摩擦を避ける一方だったが、日本国民はその方法ではうまくいかないことがわかったのだ」とも論じた。

同紙は22日付でも「アジアの好戦的愛国主義者たち=中国と日本の政治家はナショナリズムに迎合する」という見出しの一見、日本の動きにも批判的にみえる論文を載せた。だが内容はほとんどが中国政治指導層への非難で、「日本の政治家も中国の暴徒扇動には温和な対応をみせたが、なお政治的な計算は忘れなかった」とする程度だった。

AP通信は24日、東京発の「日本の次期政権ではナショナリズムが高まり、中国との緊迫が強まる」という見出しで、自民党総裁候補の安倍晋三氏や石破茂氏が対中姿勢を強くしていることをやや批判的に伝え、日中関係がさらに悪化する見通しを強調。しかし、同時に「日本国民全体が特に民族主義的になっているわけではない」と付記した。

ニューヨーク・タイムズ(23日付)は「中日両国のナショナリストたちがこの領土紛争を利用している」という見出しをつけた。しかし内容は、中国側が官民で民族主義を高め日本糾弾を強めているのに対し、日本側は「第二次大戦以来の平和主義傾向のため対決を避ける様子だったが、中国側の激しい野望がそれを変えてしまった」とし、日本の対中姿勢も自衛上、やむをえずとの見方を示した。


(産経新聞・2012年9月26日、下線はKABUによるもの)


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このワシントン・ポスト紙の報道が<逆輸入>された当初は(安倍晋三総理の自民党総裁への返り咲き、<安倍総理の逆襲Vol.1>が現実のものになりつつあった9月下旬のこととて、その現実に対する左翼・リベラル派を襲った恐怖感が「枯れ木→幽霊」ならぬ「日本の憲法や日本の戦争責任について些か無知ではあるにせよそこそこ公平な観客→右翼を批判している援軍」と見誤らせた節もなきにしも非ずだったのか)、「世界は日本の右傾化や日本における民族主義の復活を危惧している」かの如く論じる向きも少なくありませんでした。けれども、上の産経新聞記事が冷静に分析しているように、これら一連の米有力紙の報道は「右傾化する日本」なるものや「民族主義の日本での復活」に対して批判一色のものではありません。

もっとも、日本における現下の民族主義運動が旧来の時代遅れで強面のものから広範な支持を獲得可能な理性的でお洒落で今時のものに変わりつつあることに焦点を当てた、前稿紹介の記事"Nationalist Movements in Japan Gain Influence"「変化する日本-影響力を益す民族主義の動き」(The Wall Street Journal, August 15, 2012)とは違い、本稿で紹介する"With China’s rise, Japan shifts to the right"(The Washington Post, September 21, 2012)は、その記述が日本国憲法の意味内容により重点を置いたものだけにその<無知>は隠しようもない。そのような文化帝国主義の傲岸に染まった無知や「群盲象を撫でる」が如き無謀が炸裂するこのワシントン・ポストの記事も、しかし、例えば、文芸評論と区別できない空虚な朝日新聞社説や脱原発原理主義の信仰告白を謳いあげた東京新聞の記事に比べれば遥かに生産的で有意味ではなかろうか。と、そう私は考えます。

もっとも、(土台、社会のインテリ層やエリート層しか新聞を読む習慣のないドイツ、あるいは、斎藤緑雨の一句「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」どころか「ル・モンドとはフランス共産党の機関誌でしたよね、とフランスの庶民(the 99%)言い」という揶揄が満更中傷でも冗談でもないフランス程ではないにせよ)本稿末尾に「資料」として転記させていただいた別の産経新聞の記事が伝えているようにアメリカでは国民・有権者から、左翼・リベラル派のマスメディアはあまり信用されてはいないのですけれども。閑話休題。

いずれにせよ、海外報道を読む上で私が重要と考えることは、(戦後民主主義が跳梁跋扈し猖獗を極めた日本の戦後社会とは全く異なって、必要悪的な例外としてではなく)「右傾化」や「ナショナリズム」というもの自体が欧米では原則的にも好ましからざるものとは毫も考えられてはいないことです。

この彼我の差が存在する経緯は、我が国では「日本列島は日本人だけのものではない」と言い放つ、<地球市民>どころか<宇宙人>が首相になるような歪な社会であること、他方、欧米においては、一世を風靡したハーバーマス(1929-)の「憲法愛国主義」国家社会における社会統合軸を、歴史的に特殊かつ排他的な「民族性」などではなく、人類に普遍的であると左翼・リベラル派が勝手に思い込んでいる人権と民主主義に見いだす/人々が国家の命令に従わなければならない根拠を人権や民主主義や立憲主義といった政治哲学的価値を守護する国家の責務と機能に見いだすアイデア)まで遡るまでもなく、2012年の現在、所謂「富裕層:The 1%」に一層の社会貢献を要請する局面にそのロジックの定義域はおおよそ限られるにせよ、「同じアメリカ人/ドイツ人/英国人じゃないか、ならここは一肌脱いでちょうだいよ」といったご都合主義的でさもしいロジック。すなわち、「リベラルナショナリズム」のロジックなるものを(個別具体的で歴史的に特殊な個々の国家の現存在は否定できず、かつ、その国家社会における社会統合軸もまたそのような国家の現存在性と矛盾したものであり得るはずもない以上、)左翼・リベラル派も欧米では真顔で論じていることからも自明なの、鴨。と、そう私は考えます。

尚、この「リベラルナショナリズム」に象徴される、近代国家における<ナショナリズム>の死活的な重要さについては下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。以下、翻訳の紹介。

・戦後責任論の崩壊とナショナリズム批判の失速
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59898544.html

・愛国心の脱構築-国旗・国歌を<物象化>しているのは誰か? (上)~(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60640144.html

・「偏狭なるナショナリズム」なるものの唯一可能な批判根拠(1)~(6)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59953036.html


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With China’s rise, Japan shifts to the right

Japan is in the midst of a gradual but significant shift to the right, acting more confrontationally in the region than at any time since World War II.

The shift applies strictly to Japan’s foreign policy and military strategy, not social issues, and has been driven both by China’s rapid maritime expansion — particularly its emphatic claims on contested territory — and by a growing sense here that Japan should recover the clout squandered amid two lost decades of economic stagnation.



拡大する中国の影に怯え右傾化する日本

日本は徐々にではあるけれど明らかに右傾化に向けて舵を切った。第二次世界大戦以降のどの時期に比べても、東アジア地域における現在の日本の行動は自国の主張を誰にはばかることなく押し通すタイプのものになってきたということだ。

右傾化する日本の姿は、社会政策的の課題ではなく外交政策や軍事戦略の領域でより明瞭である。而して、ある二つの契機が日本の右傾化を促進している。急速な支那の海洋進出--就中、日本と支那との間で領有権の争いが存在する領土を巡る高圧的な支那の姿勢--がその一つであり、他の一つは、この失われた20年の経済不振の中で大幅に目減りしたかっての影響力を日本は取り戻さなければならないという認識が日本社会の中で力を持ってきたこと。これらが現下の日本の右傾化の熱源と言えよう。



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б(≧◇≦)ノ ・・・なんでやねん!



<続く>


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