総選挙総括報道雑感-独善的かつ情緒的で文芸評論的な言説(下)





◆「保守派」「右傾化」「鷹派」それ自体に欧米では特にネガティブな語感はない


OED(Oxford English Dictionary)にはこう書いてあります。

nationalist:民族主義者/国家主義者/愛国主義者
・a person who advocates political independence for a country
・a person with strong patriotic feelings, especially one
 who believes in the superiority of their country over others.
・自国が政治的に独立・自立していることの重要さをつとに主張する人々
・強い愛国的の感情を抱いている人々、就中、他国に対する自国の優位性・優越性を毫も疑わない人々

hawk:鷹派の政治家や論客
・a person who advocates an aggressive or warlike foreign policy.
・積極的で攻撃的な、武力行使も躊躇しない好戦的な外交政策を主張する人々
・(ソフトバンクホークスのファン←OEDにはこれは書いてありません!)

right:右派・右派の(cf. 「shift to the right:右傾化」 )
・relating to a person or group favouring conservative views
・保守的なものの見方を好ましいと考える人々に関する性質

conservative:保守派・保守的な
・favouring free enterprise, private ownership, and socially conservative ideas.
・a person who is averse to change and holds traditional values
・自由な経済活動、私的所有権、および社会関係において保守的な思想を好ましいとする立場
・変化を嫌い、伝統的な価値を保持しようとする人々


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蓋し、「nationalist」も「hawk」も、「right」も「conservative」も必ずしもそう否定的なニュアンスばかりが憑依している語彙ではなく、よって、「保守派」「右傾化」「鷹派」「民族主義」それ自体に欧米では特にネガティブな語感はありません。もちろん、ポジティブな語感もないけれど。そして、ナチス・ドイツに象徴される「差別排外主義」の傾向をそれらが帯びる場合は別ですけど。

要は、その語彙が否定的な意味かどうかはその語彙が用いられるコンテクスト、もしくは、その語彙を用いる論者が懐くイデオロギーや彼や彼女が属する党派によって決まるということです。

畢竟、保守主義と差別排外主義、民族主義と差別排外主義とは取りあえずは無関係(歴史上と言わず、現下の支那政府を見れば自明のように、左翼の鷹派、そして、現在の北朝鮮社会を見れば思い半ばに過ぎるように、マルクス主義者を自認する差別排外主義者など掃いて捨てる程存在するけれど、必ずしも、マルクス主義と差別排外主義との間に直接の関係はないのとパラレルに無関係)と言える。

蓋し、その個人がある民族や人種に属することだけを理由に、彼や彼女の評価を行えるものとする態度を差別排外主義と呼ぶならば、それは(「人権」や「民主主義」や「平和」、更には、「生命」の価値という、西欧近代に歴史的に特殊なこれらの価値を絶対視する文化帝国主義を含む、あらゆる教条主義を嫌悪忌避する思想という意味で、)価値相対主義を基盤に据える現在の保守主義とは相容れないものだ。と、そう私は考えます。

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けれども、例えば、朝鮮学校の生徒に対しては高校無償化にともなう補助を行わない等、その「教育機関」と称する<学校>が、国際法を蹂躙して毫も恥じ入ることのない北朝鮮政府の影響下にあることを理由にした措置を始め、一般的に国籍を理由とした権利や利益の制限は(国際人道法等の制約は一部分で受ける余地はあるものの)国際法上もなんら問題になることはない。それらは全く正当な措置であり制度であり、それらは差別排外主義とはそもそも位相を異にする事柄なのです。

ことほど左様に、だから、上でも批判したように、海外報道から自分の主張をサポートする記事を(その多くは、特定アジア諸国のメディアの記事であるか、よしんば、欧米メディアの記事にしても欧米におけるそのロビースト的記者が書いた寧ろ特異な記事が大部分なのですけれども、そのような自分の主張に会う記事を)探し出してくること。それによって「海外では安倍自民党の圧勝を危惧している」等の主張が、あたかも、普遍的一般的な認識の如く語るのは姑息ではありますが、そもそも、その海外報道が土台欧米社会で帯びている意味自体がずれている。と、そう私は考えます。


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◆政治の論評で文学的表現を常套するのはやめようよ

それは我々保守派についても言えることではありますが、「勇ましい」「前のめり」これらの文学的表現の使用はそろそろ日本でもやめるべきだと思います。それは論者の「評価」や「印象」であって言われた方も含め誰も事実に基づいた<反論>はできませんから。

安倍自民党の圧勝とは違う事柄についてのものですけれど、例えば、2012年12月12日、総選挙の4日前、北朝鮮の弾道ミサイル打ち上げの時、それを報じるある番組のMCに「では、この事態に日本はどう対応すればいいんでしょうか」と聞かれた北朝鮮通とかいう毎日新聞編集委員の鈴木琢磨氏が、

毅然とした対応を取りつつ、冷静に、そして、
したたかな外交で北朝鮮に圧力をかけるべきだ


と答えた。私はこんな「絶対に正解であるがゆえに、結局、何も言っていないに等しい言葉」はそろそろやめようよと言いたくなりました。

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而して、こんな「官僚よりも官僚的な発言」よりもまだ、筋金入りの反日派の、例えば、和田春樹氏などの言説、「アメリカから北の体制保障を引き出すために日本もアメリカに働きかけることで、北朝鮮の危険性を北朝鮮自らが減少させることを促すべきだ」とかの、(北朝鮮性善説、百歩譲って、北朝鮮が合理的行動を選択するという妄想、すなわち、)当然我々が受け入れられない前提に立った主張の方がまだまともだと思います。だって、和田氏とかの発言に対しては事実とイデオロギーを根拠にして反論できますから。

而して、「集団的自衛権を巡る政府解釈の変更」「尖閣諸島に公務員を常駐させること」を、ある論者が「前のめり」や「勇ましい」と表現するのは自由だけれど、それらを「前のめり」や「勇ましい」と言っただけでは、それら安倍総理が目指す政策の当否や是非はなんら検討されたことにはならない。ならば、「集団的自衛権を巡る政府解釈の変更」「尖閣諸島に公務員を常駐させること」を批判したいのなら、論者は根拠を明示した<反論>を行うべきである。と、そう私は考えます。


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◆消極的選択は否定されるべきか
◆「棄権」を否定的に見る見方は危険であり傲慢ではないか


グローバル化の昂進する大衆社会の福祉国家においては消極的選択こそ投票行動を決定する普通の原理ではないでしょうか。すなわち、

(α)多様な価値観とニーズが重層的に存在し、かつ、(β)行政サービスが国民生活のほとんどの領域に及ぶがゆえに、要は、(γ1)利害得失から見て一つの政党の政策に満足するコア支持層は極めて少数でありながらも、(γ2)それにもかかわらず左右にウイングを伸ばして多くの国民大衆から支持をうけなければ政権がとれない。


これが日本を含む現在の先進国共通の政治状況でしょう。ゆえに、アメリカ大統領選挙をその好例として現在の先進国では一般的に、

б(≧◇≦)ノ ・・・すべての政権は消極的選択の結果である!

と、そう私は考えます。ならば、今般の「自民党圧勝」が「消去法-消極的選択」の結果だったからといって、毫も、安倍自民党政権の権力の正当性が低減されることはない。と、そう私は考えます。

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加之、この「消去法-消極的選択」と通底している現象でもあるでしょうけれども、「どこに入れていいかわからない」「入れたい政党が見当たらない。というのも、本来自分は民主党支持者やアンチ自民党支持者なんだけれど、民主党にだけは今回は/今回からは投票したくない」、と。

このような理由である有権者が棄権することは、それはそれで誠実に熟慮された立派な投票行動ではないかということです。

要は、今回は民主党支持者の少なからずが、「3年3カ月の悪夢を招いた民主党とその民主党に政権を与えた自分への懲罰や謹慎」の営為として選挙をボイコットしたの、鴨。3年3カ月前にも判断を誤らなかった「自民党支持者」にこの国の次の舵取りをする政権の選択は任せるのが賢いのだろう、と。そう私は考えます。

而して、もし棄権した多くの民主党支持者の思いの少なからずがこのようなものであるとすれば、正に、彼等の「棄権=自民党圧勝」という選択は正解だったのだろうとも。


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◆資料-独善的で文芸評論的な言説の有害性

▼「右傾化」批判の誤り ワシントン駐在編集特別委員・古森義久

「安倍政権誕生となると、北京の論客たちはあらゆる機会をとらえて『日本はいまや右傾化する危険な国家だ』と非難し続けるでしょう。しかし『右傾化』というのが防衛費を増し、米国とのより有効な防衛協力の障害となる集団的自衛権禁止のような旧態の規制を排することを意味するのなら、私たちは大賛成です」

ブッシュ前政権の国家安全保障会議でアジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏が淡々と語った。日本の衆院選の5日ほど前、ワシントンの大手研究機関、ヘリテージ財団が開いた日韓両国の選挙を評価する討論会だった。日本については自民党の勝利が確実ということで安倍政権の再登場が前提となっていた。

CIAでの長年の朝鮮半島アナリストを経て、現在は同財団の北東アジア専門の上級研究員であるブルース・クリングナー氏も、「右傾」の虚構を指摘するのだった。

「日本が右に動くとすれば、長年の徹底した消極平和主義、安全保障への無関心や不関与という極端な左の立場を離れ、真ん中へ向かおうとしているだけです。中国の攻撃的な行動への日本の毅然とした対応は米側としてなんの心配もありません」

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確かに「右傾」というのはいかがわしい用語である。正確な定義は不明なまま、軍国主義や民族主義、独裁志向をにじませる情緒的なレッテル言葉だともいえよう。そもそも右とか左とは政治イデオロギーでの右翼や左翼を指し、共産主義や社会主義が左の、反共や保守独裁が右の極とされてきた。

日本や米国の一部、そして中国からいま自民党の安倍晋三総裁にぶつけられる「右傾」という言葉は、まず国の防衛の強化や軍事力の効用の認知に対してだといえよう。だがちょっと待て、である。現在の世界で軍事力増強に持てる資源の最大限を注ぐ国は中国、そして北朝鮮だからだ。この両国とも共産主義を掲げる最左翼の独裁国家である。だから軍事増強は実は「左傾化」だろう。

まして日本がいかに防衛努力を強めても核兵器や長距離ミサイルを多数、配備する中国とは次元が異なる。この点、グリーン氏はフィリピン外相が最近、中国の軍拡への抑止として日本が消極平和主義憲法を捨てて、「再軍備」を進めてほしいと言明したことを指摘して語った。

「日本がアジア全体への軍事的脅威になるという中国の主張は他のアジア諸国では誰も信じないでしょう。東南アジア諸国はむしろ日本の軍事力増強を望んでいます」・・・


不当なレッテルに惑わされず、安倍政権の真価を日米同盟強化に資するべきだという主張だろう。


(産経新聞・2012年12月18日


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