安倍総理の歴史認識を批判する海外報道紹介(5)




(3)One Man’s Invasion Is ・・・

(WSJ社説・2013年4月26日)

One Man’s Invasion Is …

Japan’s Prime Minister reinterprets the history of World War II

Who started World War II? We thought that one belonged to the Department of Settled Questions, along with any lingering doubts about whether the Earth orbits the sun. But Japan’s Shinzo Abe has a fresh, er, interpretation.

“The definition of what constitutes an ‘invasion’ has yet to be established in academia or in the international community,” the Prime Minister told the Japanese Diet Tuesday. “Things that happened between nations will look different depending on which side you view them from.”


甲にとって侵略に見えるものも乙にとっては・・・

第二次世界大戦を再解釈する日本の首相

第二次世界大戦を始めたのは誰か? 我々【Editorial Board】はこのような問いは結着済みの問いであると考えてきた。確かに、それらの問いを巡っては執拗にいろんな疑問が次から次にいつ果てるともなく持ち出されるにせよ「誰が第二次世界大戦を始めたのか?」の如き問いは、地球が太陽の周りを廻っているのか(それともその逆か:地動説か天動説か)の問いと同様にとっくに結着し、謂わば「和解成立事案記録所」に送付されたものだと。しかし、日本の安倍晋三首相は斬新な、なんと言おうか、解釈をこの問いについて持っているらしい(★SA)。

「「侵略」という定義は、学界的にも国際的にも定まっていない」「国と国の関係で、どちら側から見るかで違う」と、この日本の首相は火曜日に【2013年4月23日】日本の国会で述べたのだから。


Mr. Abe’s foray into historical relativism will come as news to survivors of Pearl Harbor, the Bataan Death March or the Rape of Nanjing. Much of the world long ago forgave Japan its wartime atrocities. But it hasn’t forgotten them.

Meantime, the Prime Minister’s remarks come as the Korean crisis isn’t over, and as China tests Japan over its possession of the Senkaku islands (Diaoyu to the Chinese). Japan is a democracy and an ally, but Mr. Abe’s disgraceful remark will make his country no more friends abroad.

歴史相対主義の麻疹にでもかかったか、安倍首相のこの唐突な発言は、真珠湾攻撃で生き残った人々にとってはその耳目を引きつけるに充分なニュースだろう。そして、このことはバターン死の行進や<南京大虐殺>の生存者についても同じだろう。世界の大部分はとうに第二次世界大戦中の日本の残虐行為を許している。その「許し」は今回の安倍首相の発言によってもなんら変わることはない【「Although」等の譲歩の接続詞や接続副詞ではなく、前のセンテンスをピリオドで一旦終わらせた上で次のセンテンス、しかも、単文を否定の等位接続詞「But」で始めていることに注意! 本社説の最終センテンス「Japan is a democracy and an ally, but ・・・no more friends abroad」と比べてみてくださいね】。けれども、その日本を許した世界の大部分も日本の悪行を忘れたわけではないのだ。

この日本の首相の所見表明は朝鮮半島危機がまだ終わっていない状況下でなされた。加之、尖閣諸島(支那国民にとっての釣魚【島およびその付属島嶼】)の領有権に関する日本の出方を支那が諸々の手段を用いて探り続けている状況下で安倍首相はその所見を表明した。日本は【アメリカの】同盟国であり民主主義国家である。しかし、安部首相の恥ずかしい所見のせいで、今後、日本は国外に友人がいなくならないとも限らない。


★註SA:歴史の認識の正しさは相対的なものでしかない

すでに紹介した(1)「Shinzo Abe’s inability to face history」にも「there are such things as facts.」(事実というものは存在している)という主張がありました。けれども、例えば、(5)「Japanese Prime Minister Stokes Wartime Passions」の中の次の認識は正しいでしょうか? 

Japan officially annexed Korea in 1910 and occupied the peninsula
until the end of World War II in 1945.
(日本が正式に韓国を併合したのは1910年のことであり、
それ以来1945年の第二次世界大戦終結まで日本は朝鮮半島を占領し続けた)

逆に言えば、そう、

The United States officially annexed Hawaii in 1890 and has occupied it till now.
(アメリカは正式にハワイを併合したのは1890年のことであり。
それ以来現在に至るまでアメリカはハワイを占領し続けている)

というのは歴史の正しい認識なのかどうか。要は、(とりあえずは)自然科学とは異なる精神科学/文化科学としての歴史学や法解釈学の主要な部分は、単なる「事実判断」(認識)でも、赤裸々な「価値判断」(評価)でもなく「価値に関係づけられた事実判断」でしかないということです。

つまり、「国と国の関係で、どちら側から見るかで違う」どころか、「占領」や「併合」、「侵略」や「進出」、あるいは、「全体主義国家」や「民主主義国家」という歴史認識の<道具>となる概念自体に端からなんらかの価値が憑依しているということ。

けれども、<歴史>に関する客観的な知見は成立せず、100人いれば100人の歴史が存在するというわけでもない。「客観的な知見」などは(自然科学を含めて)成立するはずもないのですが、「間主観的な知見」は成立可能だから。その根拠もまた<言語>と、そして、時代時代の<常識>である。例えば、「時間」の観念について、人類史上次のようなパラダイムが成立していたことは了解できる。

(ⅰ)ヘレニズムの時間:円環としての時間
(ⅱ)ヘブライニズムの時間:不可逆的かつ有限なる線分としての時間
(ⅲ)原始共同体の時間:振り子運動体としての時間
(ⅳ)近代社会の時間:不可逆的で無限なる直線としての時間

そして、例えば、近現代において<歴史>は(ⅳ)の時間観念という多くの論者に共通の<常識>を踏まえている限り間主観的にも「正しい可能性がある」と了解されるということです。而して、「日本が侵略した」等の認識がアプリオリに正しいなどは、現在の歴史学方法論の地平からは、無知か単なる「旧戦勝国」の自己弁護、あるいは、その両方にすぎないのです。閑話休題。


3_20130512100813.jpg


ことほど左様に、歴史を認識する作業をゼロベースでこう捉えるとき、<歴史>とは歴史学方法論に従って再構成/再構築された過去に関する<物語>以外の何ものでもないと言える。そう思います。畢竟、(1)の「there are such things as facts.」(事実というものは存在している)という主張は全くの間違いなのです。

戦後半世紀以上も「日本軍の残虐行為」の証拠写真とされていたものが間違いだったことが判明するなど、実際、「事実関係」そのものの認識さえも「常に再解釈される性質のもの」でしかないのです(下記記事参照)。



・「死の行進」の写真を68年目にしてアメリカが修正
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59379553.html


ならば、まして、「第二次世界大戦を始めたのは誰か」のごとき複雑錯綜した事実関係を「価値に関係づけられた事実判断」を積み上げ、かつ、更にあるイデオロギーを軸に体系化して初めて解答可能な<大問題>は、(「侵略」等々の<道具>となる概念の意味を、ISOよろしく可能な限り統一したとしても)論者の歴史観やイデオロギーといった<立場>が異なればその解答が(「回答」はもとより「解答」も)全く異なってくるのは自明でしょう。

例えば、1951年5月3日にマッカーサー元帥がアメリカ上院軍事外交合同委員会の公聴会で、日本が大東亜戦争を開始した理由を「Their purpose, therefore, in going to war was largely dictated by security.」(ことほど左様に、日本が戦争に打って出たのは、大部分のところ国家の安全保障上の目的によるものだったのです)と証言している(原文は下記URL参照)。

実は、この部分から「マッカーサーは、大東亜戦争は日本にとっては自衛戦争だったと証言した」とは言えないと私は思いますし、もし、彼がそう思っていたからといって大東亜戦争の性質の究明、ひいては、「第二次世界大戦を始めたのは誰か」に答える決め手にはならないでしょう。しかし、(いずれにせよ、マッカーサー証言はかなりベーグな陳述であり、)満更、「マッカーサーは大東亜戦争は日本にとって自衛戦争だったと証言している」というのも間違いではないのです。

・マッカーサー証言(問題の箇所は、原文のpp.57-58)
 http://www.sankei.co.jp/seiron/koukoku/2005/maca/mac-top.html


蓋し、「第二次世界大戦はヒトラーを増長させた宥和政策の英国が引き起こした」、あるいは、「大東亜戦争は日本を追い込んだルーズベルトが始めた」、更には、「第二次世界大戦も大東亜戦争もコミンテルンが引き起こした」という解答/回答が間違いだと言える歴史学方法論は21世紀の現在存在していない(正しいとも言えないけれど)。ならば、安倍首相を嘲笑するかの如き本社説の理路にはなんの根拠もないのです。

尚、歴史学方法論を巡る私の基本的理解については、
下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。


・定義集-「歴史」(上)(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/61007370.html

・左翼にもわかる歴史学方法論☆沖縄「集団自決」を思索の縦糸にして
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60420308.html



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<続く>


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大東亜戦争終結後のこの社会で跳梁跋扈し猖獗を極めた戦後民主主義の批判を果敢に推進するための
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