橋下「慰安婦発言」批判の海外報道紹介--歪んだ論理の磁場の確認とその消磁化の契機として(8)




紹介した4個の記事を読み進めていると、誰しも、カフカの不条理小説や伝言ゲームの滑稽を連想したのではないでしょうか。「従軍慰安婦:comfort women」という語に対して橋下氏が「戦時下の戦地の公娼」をイメージした上で、(ⅰ:橋下発言)「comfort women」は必要だった、(ⅱ:橋下釈明)「comfort women」だった境遇の女性達が被った苦痛は同情に値すると述べているにもかかわらず、これらの海外報道は「comfort women」を「wartime sex slaves」の同義語と解して、徹頭徹尾、その語義に基づいて橋下氏の発言を理解し批評しているのですから。

すなわち、これらの海外報道は、橋下氏の見解を、(ⅰ':橋下発言)「戦時性奴隷:wartime sex slaves」は必要だった、(ⅱ':橋下釈明)個人的や主観的には「戦時性奴隷:wartime sex slaves」が必要だったにせよそれが人倫が許容するものとは思わないが、第二次世界大戦の戦時下では社会的には「戦時性奴隷:wartime sex slaves」は必要だったとする主張と理解している。蓋し、彼等のこの理解は歪んだ論理の磁場で紡ぎ出されたもの以外の何ものでもない、鴨。

実は、上記の海外報道紹介に際して、私は(橋下氏の発言や釈明の日本語原文に「従軍慰安婦」ではなく「慰安婦」とある箇所でも)英文記事の本文テクストに「comfort women」とあればすべて「従軍慰安婦」と訳しています。而して、日本語原文の「慰安婦」と本稿訳の「従軍慰安婦」のずれこそ、橋下氏と海外報道との間の<異文化コミュニケーション>の悲惨で滑稽な空中戦が最も赤裸々に炸裂している箇所、鴨です(★)。

comfort womenの二元論:橋下氏の理解
comfort women=慰安婦=公娼
wartime sex slaves=性奴隷

comfort womenの一元論:海外報道の理解
comfort women=従軍慰安婦
 =wartime sex slaves=性奴隷



★註:「comfort women」と「wartime sex slaves」を巡るアメリカ国務省の見解

この論理の磁場の歪み、すなわち、「comfort women」と「wartime sex slaves」の語義の差--シニフィエおよびシニフィアンの差-- に関して興味深い所見をアメリカ国務省が述べています。本稿の(6)の註「「橋下発言」に対するアメリカ国務省の認識」で紹介した当局者(Ms. Psaki)の発言の直後、朝日新聞の記者が行った関連質問とそれに対する同じ人物(Ms. Psaki)の返答。

QUESTION:
Do you describe this issue sex slave or comfort women?

MS. PSAKI:
Again, I don’t know that I’m going to define it. You kind of laid out the specific details there, and we have described this issue in the past as comfort women[原註].

[原註]
Rather than focusing on the label placed on these victims, we prefer to address the fact that this was a grave human rights violation of enormous proportions. The United States is also committed to working with our partners and allies around the world to denounce modern-day slavery and trafficking in persons no matter where it occurs.

朝日新聞記者の質問:
この問題を性奴隷と従軍慰安婦と、どちらの問題であると捉えていますか?

アメリカ国務省当局者の返答:
ここでもそう答えさせていただきますが、アメリカ国務省では、この問題が性奴隷の問題なのか、あるいは、従軍慰安婦の問題であるのかをより明確にするかどうか自体決まってはいません。性奴隷と従軍慰安婦との違いについて朝日新聞は些か詳しく検討しておられるのでしょうが、アメリカ国務省は現在に至るまでずうっとこの問題は従軍慰安婦の問題であると捉えてきています。

[原註]
これらの犠牲者に貼るラベルに注力するのではなく、アメリカ国務省は、寧ろ、それらの犠牲者を産み出したこの問題が人権の深刻かつ重大な侵害であることに焦点を当てて、問題の解決に向かいたいと考える。アメリカ合衆国は、世界中のアメリカのパート-ナーおよび同盟国と共に、それが世界のどこで起きたものであれ今日現下の奴隷制や人身売買を厳しく非難しなければならないと自覚している。


・Daily Press Briefing - May 16, 2013 - US Department of State
 http://www.state.gov/r/pa/prs/dpb/2013/05/209511.htm


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本稿の冒頭にも記した通り、大東亜戦争中に日本人以外のアジアの女性達を日本が「性奴隷」--すなわち、①日本軍が組織的に、②朝鮮等の日本本土以外の地で、③本人の意志に反して強制的に女性を集め、④専ら戦地における日本軍将兵を相手に売春をさせるべく、⑤それらの女性の自由を拘束し続けた、⑥組織的計画の被害者--にした事実はなど存在ません。

実は、その「事実は存在しない」という事実を知っているからなのか、少なくとも、「性奴隷=従軍慰安婦」が存在したということは証明できないということを知っているから--吉田清治『私の戦争犯罪』(1983年)の出版以来30年(戸塚悦朗氏が1992年2月の国連人権委員会で、 「comfort women=従軍慰安婦」と「wartime sex slaves=性奴隷」を同一視する、謂わば「comfort womenの一元論」を展開してからでも20年)に及ぶ、反日リベラル派の涙ぐましい努力によっても結局証明できなかったことを知っているからか--、朝日新聞や毎日新聞という日本国内の反日リベラル勢力(←「獅子身中の虫」とも言う!)は、

(α)日本軍に関しては「従軍慰安婦=性奴隷」は存在しなかった/その存在は証明できていないということが広く世間に知れ渡っている日本 国内においては、一旦、「comfort womenの二元論」に(彼等の場合には)逃げ込んだ上で、「日本占領下の戦地における日本人以外の「慰安婦=公娼」についても、彼女達が好きこのんで売春婦になった/売春婦の生業を続けたのではない限り、日本は彼女達に「広義の強制」なるものを課していたのであり道義的批判は免れない」と主張し、

(β)「comfort women=wartime sex slaves」という認識を引き出したいという狙いが見え見えの、上のアメリカ国務省の当局者に対する朝日新聞記者の「駄目もと」というか「物欲しげ」な質問に露呈しているように、日本の国外ではいまだに、「comfort womenの一元論」を維持しつつ反日プロパガンダ活動に鋭意邁進しているのだと思います。

本稿で紹介した海外報道を一読すれば自明のように、逆に言えば、海外では、大東亜戦争中とその前とにかかわらず、日本軍に関しては「従軍慰安婦=性奴隷」は存在しなかった/その存在は証明できていないということはほとんど知られていない(★)。


★註:内外の情報の非対称性の実例-アメリカ下院反日決議

所謂「従軍慰安婦」なるものに関してアメリカの第110回議会第1会期(2007年)の下院外交委員会(the Committee on Foreign Affairs)で提案された反日決議、所謂「従軍慰安婦」なるものを巡る対日非難決議(House of Representatives, 110th Congress 1st Session,Resolution 121, submitted on January 31, 2007)は、このイシューを巡る内外の「情報の非対称性」を確認する好個の実例であろうと思います。而して、そこには、歴史の改竄と歴史の不勉強が炸裂しており、これもまた、歪んだ論理の磁場の中で紡ぎ出され編み上げられたものだと思います。以下、同決議を要訳紹介。

Expressing the sense of the House of Representatives that the Government of Japan should formally acknowledge, apologize, and accept historical responsibility in a clear and unequivocal manner for its Imperial Armed Force's coercion of young women into sexual slavery, known to the world as `comfort women', during its colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II.

(下院は次のような見解を表明する。すなわち、日本政府は、1930年代から第二次世界大戦の全期間に亘り、アジアの植民地支配と太平洋諸島を占領していた戦時に、日本帝国の軍隊が強制力を行使し若い女性を性奴隷にしたことを(その性奴隷とは、現在では「従軍慰安婦」としてすっかり知れ渡っているのだが、)公式、かつ、平明・明瞭なやり方で認め謝罪すべきであり、また、そのような事実に対する歴史的な責任も同様に平明で明瞭な形式を通して受入れるべきである、と)

Whereas the Government of Japan, during its colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II, officially commissioned the acquisition of young women for the sole purpose of sexual servitude to its Imperial Armed Forces, who became known to the world as ianfu or `comfort women';

(以下の事実を鑑みるならば、すなわち、1930年代から第二次世界大戦の全期間に亘り、アジアの植民地支配と太平洋諸島を占領していた戦時に日本政府が、帝国の軍隊に供される性奴隷(性奴隷とは、現在では「慰安婦」や「従軍慰安婦」としてすっかり一般に定着しているけれども。そのような性奴隷)にすることを唯一の目的として、若い女性の調達を公式に委託した事実。この事実を考慮すれば、)


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<続く>



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