全国学力テスト結果の非公表には「盗人の三分の理」さえない




▽学力テスト:学校別の結果公表…知事の4割「賛成」
文部科学省は21日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果について、教育委員会や首長、保護者らに公表方法の意向をきいたアンケート結果を明らかにした。学校別の結果公表については、都道府県知事では賛成意見が一定程度みられたものの、市町村教委・首長と学校では否定的な意見が多く、見解が分かれた。文科省は調査結果を基に、11月末までに来年度以降の結果の公表方法をまとめる。

◇現場では否定的意見多く
学力テストの学校別結果の公表は、学校間の序列化や過度な競争を起こさないよう、実施要領で市町村教委に公表を禁止し、各学校が公表する場合のみ認めている。しかし「各地の判断に委ねるべきだ」との声が上がっていることから、文科省は7月、全国の全ての教委(1788)・首長(1789人)と、抽出した小中学校各500校、保護者約1万3000人にアンケートをし、21日の専門家会議で結果を示した。

市町村教委が学校別の結果を公表することについては、都道府県知事は賛成44%、反対24%と一定程度賛成が多かった。しかし、都道府県教委は賛成40%、反対43%▽保護者は賛成45%、反対52%−−と賛成派が一定数いるものの反対の方が多く、市町村教委は賛成17%、反対79%▽市町村長は賛成34%、反対62%▽学校は賛成20%、反対78%−−と否定的だった。文科省は今後、学校別公表の可否や方法について、専門家会議で検討する。

学力テストの結果公表については、下村博文文科相が今年9月、毎日新聞の取材に、自治体の判断を認めていく考えを示している。


(毎日新聞・2013年10月21日


「過度な競争や序列化を招く」なる公表反対理由は成立しない。そう私は考えます。まず、公表が「過度な競争や序列化を招く」かどうかは、神ならぬ身の人間には結局の所、「そうなる」とも「そうならない」とも誰も断定できない単なる危惧にすぎない。しかし、このことはとりあえず置いておくとして、そもそも「序列化」なるものはどういう点で問題なのか。この最初の点においてすでに公表反対論--官僚風や朝日新聞風にリライトすれば「公表には慎重であるべきだ」という主張--には疑義がある。

とある大手予備校の英語カリキュラム開発の総責任者を務め、MBAとロースクールを中心とする米英大学院に向けた留学予備校で教務部長を務め、更に、児童から中高生対象の英会話スクールの全国FCで教務の総責任者を務めた--要は、ほぼすべての学齢の教育に携わってきた--私自身の経験から断言しますが、個人間には学力差・学習能力差が厳然としてあり、また、地域にも学校間にも序列は間違いなくある。

実際、灘・筑波大附属駒場・東大寺・桜蔭等ではない、神戸女学院や県立浦和第一女子といった普通の進学校(笑)から東大理Ⅲに現役で合格する生徒と、あるいは、そんな普通の進学校から出願して、アメリカのIVYリーグの大学からスカラシップ付きでアドミッションレターを獲得する程の子と、他方、整式の展開はできるけれど因数分解は苦手、微積はなんとか理解できるが数列は苦手という普通の高校の普通の生徒を比べる場合、凄まじい実力差とその背後にある悲しいほどの能力差を誰しも感じるでしょう。

例えば、そのような県立千葉や平塚江南や府立北野といった普通の進学校から現役で理Ⅲに合格するような子は、大体、高校3年生の夏休み直前までは受験科目を一つか二つ手つかず状態で「受験の第三コーナー」に突っ込んでくる。そして、その子たちは夏の2週間か3週間ほどでその1科目か2科目を落第しないレベルに仕上げるのが普通ですから。


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而して、個人の学力差・学習能力差、もっと厳しく言えば「学習モティベーションの持続を巡る能力とスキル」の差に関しては、家庭の経済力などよりも--この点は重回帰分析を行えば誰しも容易に確認できることですけれども、そして、実は、それは日本だけの現象ではなく米英でも--家庭の教育水準や知的関心の度合いが遥かに大きい。尚、この「学力差の要因」を巡る議論については下記拙稿をご参照いただきたいと思います。

・所得と学力の相関関係と因果関係が投影する<格差論>の傲岸不遜
 http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11183555784.html

・ゆとり教育路線の前提と誤算-戦後民主主義的な教育観の魔界転生を許すな!
 http://ameblo.jp/kabu2kaiba/entry-11182604980.html



つまり--所謂「知能指数」等の個体の能力差は捨象するとして--その家庭で読まれている最高水準の書物が「岩波新書」の家庭と、「岩波新書」がその家庭で読まれている最低水準の家庭とでは、両クラスターの家庭の子供達がピカピカの1年生として小学校に入学した段階でおおよそ学力競争の面での勝負はついている。

だからこそ、逆に、おおよそ決着がついているはずの勝負に<ノイズ>を引き起こす、相性の良い教師やロールモデルとなる先輩との出会いは僥倖というべきであり、他方、優秀な講師陣を擁する秀逸な学習塾・予備校の値打ち(文字通り、そのサービスにつけられる市場での貨幣価値)は大きいの、鴨。

私の専門の「英語」に引き付けて敷衍しておけば、--例えば、TOEIC860点も取れない英語力の教師が過半を占めている--現在の公立学校に<ノイズ>を期待するのは、300円もってマック(マクド)に行き、フランス料理のフルコースが出ないと怒る類の非常識なの、鴨です。もちろん、英語科においても教師の優秀さはTOEICなどでは測れないのは当然です。けれども、ならば、逆に、TOEICでさえ730点も取れない程度の教師に教科指導を期待するなどは、--まして、そんな教科指導で「塾・予備校を含めた世間の平均点」も取れない教師に、平均点水準の進路指導を期待するなどは--丹沢の大山や八王子の高尾山にさえ登る体力のない人にチョモランマ登頂を期待するような無謀かつ無意味なことでしょうから。


序列は厳然と存在している。なぜならば、
個人の能力差と環境の差も厳然と存在しているから



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それが良いことかどうかは別にして序列は存在する。重要なことは--支那の「文化大革命」でもあるまいに、序列をなくすべく日本のすべての児童・生徒や学部生に学習をさせないようにしようとまでは流石の朝日新聞も主張しないでしょうから--もし、「序列」が悪いことであるとして「序列」をなくす施策をとる場合にもその序列を打ち破る過程で<序列>が再生産されるにちがいないということ。

これは「今の序列がなくなっても新たな序列ができるだけだっーの!」(例えば、美濃部都政の愚策によって、都立の名門高校が馬群に沈んだ代わりに私立の進学校が<名門校>を新たに形成した)といった表面的・静態的なことを述べているのではありません。

蓋し、ポイントは、<序列>は「序列を解消・強化する過程とは位相を異にする」ということ。つまり、ヘーゲル流に言えば、<序列>とは弁証法的な発展の原理である。ならば、このより抽象度の高い意味でも<序列>は不可避的に未来永劫存在する。つまり、学力に基づく序列が解消したとしても、(米英の大学における入学審査プロセスに顕現している如く)別の指標を基準とした序列が形成されるに違いないということ。

暇つぶしの哲学談義の展開は割愛するとして、現実の序列に焦点を当てる場合、地域コミュニティーが序列を直視する回路と仕組みを構築することなくどうやって序列をなくせるというのか。私は大変疑問です。


序列はそれが人間の世界認識の枠組みであり、世界形成の原理である以上、
序列を縮小廃止する営みの中においても<序列>は恒常的に再生産される。
なぜならば、人間は<差異>によって世界を理解・形成する存在だろうから



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而して、土台、序列は良くないことという前提自体、その根拠は極めて恣意的であり脆弱なものではないか。人間の個々の能力と置かれている境遇が千差万別である限り--子供も教師も保護者も千差万別である以上--天性の要因がより大きい身体能力や容姿の差ほどではないにせよ、掃除や料理が得意な度合いの分布や勤勉さの度合いの分布とパラレルに、学力差は不可避的に存在する。ならば、学力しかとりあえず取り柄のない「料理も下手で足も遅く容姿にもあまり自信のない子」には、学力テストの舞台くらい輝く機会を与えてあげてもいいのではなかろうか。と、読者の皆様もそう思われませんでしょうか。思われませんでしょうか。

例えば、私自身が遭遇した実話があります。それは、大阪にあったとある大学院留学予備校に務めていた頃、学生アルバイト受付嬢を募集すべく母校のアルバイト担当部署(同志社大学学生支援センター学生生活課)に求人票を出しに行ったときの話。


私が「応募者の方には面接させていただきたいのですが」と言ったら、担当の女性職員の眼鏡がキラリと光った。そして、「なぜ面接が必要なのですか、まさか、容姿とかの確認ではないですよね」と一言。「あのー、来訪のお客様への応対とか電話対応ができる方かどうかを確認させて・・・」と言いかける私の返答を遮り、その、多分、私より3学年ほど上の先輩の女史は私の人生でこれからも記憶に残る言葉を口にされた。

「当大学には来訪者への応対とか電話対応ができないような学生は一人もおりません!」、と。

私が--心の中で、「嘘つけ! そんなことさえできん「当大学」の学生を私は何ぼでも知ってるっーの!」と呟きながらも、愛校心溢れる女史の名言に粛々と従い--母校からの応募者は面接抜きで漏れなく採用することにさせていただいたことは言うまでもありますまい。



はい、同志社であれ京大であれ、学力以外はほとんど使い物にならない学生はなんぼでもいるんです。まして、ICUの卒業生は「文句ばかりで、口ばかりで戦力外」というのは、私が携わってきた業界の場合、人事部長層の共通認識、鴨ですから。

閑話休題。


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自分の人生、学力や学歴で勝負するのではなく度胸や愛嬌、勤勉さや俊敏さで勝負するのも立派な進路選択でしょう。ならば、学力や学歴で勝負するのではないタイプの子が無意味に高校や大学などに進まないことは合理的。而して、一刻も早く自分の適性により適合した進路を見つけ、胸を張ってその道にその子供達が進む上で、学力テスト結果の公表が与して力あるようであれば、公表は寧ろ道理にかなった施策ではありますまいか、ありますまいか。

それとも、学力と学歴で勝負する進路が唯一正しい進路であり、そうでない進路選択を子供達に強いることに通じかねない学力テスト結果の公表は「差別選別主義」からの主張(週刊金曜日の投書欄風にリライトすれば「戦争のできる国に日本をするための、自分でものを考える力の乏しい従順な非正規雇用者層を量産する主張」なる、それこそ到底自分の頭で考えたものとは思えないファンタジー)とでも反日リベラル派は言うのでしょうか。

蓋し、そのような主張は--すべての子供達に平等に微笑みを注ぐような優しい口調とは裏腹に--私には、「高学歴・高学校歴を備えた大企業や中央官庁のホワイトカーという進路」にのみ価値を認める<差別排外主義>ではないかと思えるのですけれども。

世間は狭いようで広いし、広いようで狭い。だから、--ドラフト上位でプロ野球に進むとか、鳴り物入りでJリーグのチームに入団するとかでなくとも、積極的か消極的かは問わず--自分の選んだ道で「世の一隅を照らす」営みを積み重ねるのであれば、その彼女や彼を世間はほってはおかない。ラーメン屋さんのスタッフでも、警備員さんでもいいじゃないですか。ディケアサービスの介護スタッフでも、コンビニのスタッフさんでもいいじゃないですか。文字通り、本当の意味で、職業に貴賤なしですから。そう私は確信しています。


畢竟、税金を投入して集められた全国学力テスト結果の情報は、各家庭が自分の子供達の進路を判断する上で重要なだけでなく--<教育>が国家の競争力と国家の社会統合のパフォーマンスの鍵である以上、保護者を超える--国民全体のものでしょう。ならば、そのような情報公表の是非を文部科学省の官僚や市町村の教育委員会が判断できると考えること自体が、筋違いな認識ではないでしょうか。しかも、その反対理由が、--単なる危惧でしかない--「学校間の過度な競争や序列化を招く」というものであってみれば、学力テスト結果の非公表論には「盗人の三分の理」すらないの、鴨。

いずれにせよ、その教育行政サービスのパフォーマンスが判定される「俎板の上の鯉」である「現場」、すなわち、都道府県教委・市町村教委・市町村長・学校などの意向などはこのイシューに関しては毫も参考にされるべきではないのです。而して、憶測やママ友間の噂ではない事実を踏まえた序列化の現実と現状を保護者と国民が直視できるようにするために、もって、その序列化をより良い序列化に移行させるためにも、テスト結果は公表されるべきである。と、そう私は考えます。


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