国家の分裂を巡る憲法と国際法



【川も国家も時に分裂する】


ある国家が分裂した場合、分裂前の元の国の憲法はその離脱した地域にとっては単なる「古新聞」にすぎません。それは、--例えば、連邦離脱の手続規定が憲法典に定められており、かつ、事態の進行がその規定に粛々と従ったようなケースではない、そう、今般のクリミア自治共和国の独立とロシアへの併合のようなケースは--立憲主義の否定ではなく<憲法>や<法>自体の限界というべきもの。

だから、そのような事態を避けようとすれば、元の国側が取りうる対応は、これまた<憲法>や<法>とは位相を異にする実力によって、つまり、内戦によって離脱した地域や人々を引き戻すしかない。この典型的な例が南北戦争でありフランス革命であり、あるいは、明治維新であり支那の国共内戦だった。他方、引き戻しが不成功の場合には、離脱した新しい国において、新しい<憲法>と<法>が成立して、そこからその新しい国において新たに立憲主義が起動し始める。と、それだけのことなのです。

重要なことは、この引き戻しは「自由・平等・博愛」なり「天賦人権」なるものの価値から基礎づけられることはなく、ダイレクトに<ナショナリズム>そのものから--エスニカルなものではなく「国民国家」のイデオロギーの裏面たる「フランス国民」や「アメリカの不可分の領土」なる政治的神話から--基礎づけられるということでしょう。と、そう私は考えています。


クリミアがロシアに併合されたように、分裂し離脱した地域が別の国の領土に編入される場合、
それは国際法が禁じる侵略なのでしょうか。そのような事態は、

(1)併合した国の侵略行為なのか
(2)離脱した地域の民族自決権の行使の帰結なのか



国連憲章には(1)(2)のいずれとも言える規定が存在する。すなわち、主権国家の「主権の平等と不可侵」(1章2条1項)、そして、人民の「民族自決権」(1章1条2項)の規定。つまり、今般のクリミアの事態は国際法的には表面的に相矛盾する二つの法規範の衝突に起因する事態なの、鴨。

けれども、実は、国際法上「侵略の定義」は定まっておらず--アメリカのニカラグア侵攻のケースでも明らかなように、国際司法裁判所の違法判決などは単なる「評論家のコメント」にすぎず--、ある事態が侵略かどうかは、個々の事件毎に国連の安全保障理事会が判断することなのです。そして、私の記憶が間違っていなければ、確か、ロシアは国連安保理の常任理事国。ならば、クリミアのロシア併合を侵略と看做す判断に対してロシアが拒否権を行使しないはずがない。もって、国際法上は今般のクリミアの事態は(1)侵略ではなく、よって、それは(2)正当な民族自決権の行使の自然な帰結と解すべきなのです。


蛇足ながら一言。すなわち、主権の平等や不可侵--主権の単一性や一体性--という表象は、ある時点の静態的な国際法秩序を理解するための認識枠組みやパラメーターにすぎず、それは、現実の国際秩序の変化の動態を規制する効力を帯びたルールでは必ずしもないということ。このことが日本ではしばしば誤解されているのではないでしょうか。

いずれにせよ、今般のクリミアの独立とロシアへの併合は、よりエスニカルな色彩の濃い<ナショナリズム>が--少なくとも、クリミア半島においては社会統合の神通力の点で劣る--ウクライナの<ナショナリズム>に優っただけのことであろう。と、そう私は考えています。尚、ナショナリズムとエスニシティーの関連、憲法とナショナリズム、および、憲法と国際法の関連については下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。


・ナショナリズムの祝祭としてのオリンピック
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/62341272.html

・「偏狭なるナショナリズム」なるものの唯一可能な批判根拠(1)~(6)
(特に(4)(6)で些か詳しく憲法と国際法の関連について述べています)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59953036.html


・立憲主義の無知が爆裂した朝日新聞(上)(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/62314363.html

・樋口陽一の文化帝国主義的憲法論の杜撰と僭越(上)(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/62298200.html


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テーマ : 国家論・憲法総論
ジャンル : 政治・経済

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