宗教と憲法--アメリカ大統領選の背景とアメリカ建国の風景(序)




2016年、オリンピックとならんで閏年のメインイベント、アメリカ大統領選挙ももうすぐですね。ところで、カミングアウトしますけれどもKABUはちょつとした「宗教フリーク」だったりします。で、実家の宗派(≒「信仰上の本籍地」?)は浄土真宗大谷派(東本願寺)と神理教(月読命系)なのですが、「分析哲学系・現象学組・新カント派・プロセス法学一家」が〈思想上の現住所〉である私の今現在のお気に入り〈宗教・宗派〉Top10はこんな感じです

①ルター派()
②天理教()
③カトリック()
④メソディスト派()
⑤イスラム教スンニ派()
⑥東方正教会()
⑦荻生徂徠系復古学派()
⑧原始仏教中観派()
⑨阿含宗()
⑩浄土宗()
次点:聖公会()


要は、インテリっぽい上から目線の禅宗・法華宗、カルヴァン派(長老派・オランダ改革派)・フレンド教会(クェーカー)・マルクス主義・戦後民主主義、他方、庶民にすりよるかの如ときーーその檀家筋は「寄り添う」なの!とおっしゃるのでしょうが、ーー感じがたまに鼻につかないではないーーうみゅ、母校の校祖・新島襄先生、ご免なさいですーー組合派(会衆派)とバプティスト各派、加之、モルモン教……。あるいは、その浮き世離れぶりがあざとくダサくも見えなくもない、例えば、日本の日蓮宗信徒集団系某巨大新興宗教(笑)や水戸学系朱子学・平田神道系の諸流派、更には、所謂「哲学の京都学派」は「敬して遠ざけ」たいって感じなのですよね。

まあ、宗教・宗派の好みはどこまでもどこまでも限りなく「霊的な事柄」、つまり、説明不可能な各人のフィーリングマターでしょうから、KABU版「Religious Top10ランキング」の理由開示はスキップさせていただきます。さて、而して、なぜにアメリカ大統領選挙の記事の枕から「宗教・宗派」の話しに跳んだのか? はい。それは、日本では同選挙に関して私には「大きな勘違い」としか思えない報道が少なくないからです そして、その「大きなお世話的の大きな勘違い」の基底にはかの地における宗教・宗派に関する無知がだらーんと横たわっているの、鴨。と、そう感じたから。

共和党=赤:トランプの支持層は、
・白人∧男性∧中高年∧低所得層∧低学歴層。而して、ウィルソン大統領以来、遅くともFDR(フランクリン・ローズベルト大統領)からは伝統的に民主党のコア支持層の中核である「北部都市圏の低所得の賃金労働者」が共和党のトランプ氏に流れている
・オバマとクリントン(夫妻)の「社会主義的厚生経済政策」∨「リベラルな社会政策・文教政策」∨「弱腰かつ親EU/親ラテンアメリカ的で不法移民および支那に寛容な外交政策と国境管理政策」に不満なーーティーパーティ緒派、または、「福音派⊃キリスト教原理主義グループ」を含むーー保守強硬派

共和党=象:トランプの支持層は、
基本的に保守派や共和党が強い南部、および、西部と中部の平原地帯に固まっているほか、伝統的に必ずしも民主党が弱くはなかったエリア、すなわち、IT化とグローバル化に取り残された「鉄錆地帯:ラストベルト」や中西部に広がっている。

民主党=青:クリントン(妻)の支持層は、
・マイノリティ∨女性・LGBT(性的マイノリティ)∨若者と高齢者∨中流以上の所得層∨高学歴層
・オバマとクリントン(夫妻)の「社会主義的厚生経済政策」∨「リベラルな社会政策・文教政策」∨「弱腰かつ親EU/親ラテンアメリカ的で不法移民と支那に寛容な外交政策と国境管理政策」を支持または容認するーー典型的には、ニューイングランドとかニューヨークやニュージャージーの有名大学とかマスメディアに集うインテリさんなどのーーリベラル派。而して、共和党の前身ホイッグ党以来、遅くとも、共和党初代・リンカーン大統領、千歩譲っても、第29代ハーディング大統領からは共和党の〈預金通帳〉だった「エスタブリッシュメントのビジネスエリートや富裕層」から広範な支持が民主党のクリントン氏に集まっている

民主党=驢馬:クリントン(妻)の支持層は、
元来、リベラル派や民主党が強い東部・西海岸地帯。よって、繰り返しになるけれど、これまた伝統的に必ずしも民主党が弱くはなかったエリア、すなわち、IT化とグローバル化に取り残されたーーオハイオ・ペンシルヴァニア・ミシガン等々のーー「鉄錆地帯」、加之、中西部ーー例えば、ウィスコンシン・ミネソタ・インディアナーーの支持が過去7回の大統領選挙と比べ比較的薄い


こんな()「総花解説deアメリカ大統領選2016」が、例えば、
(1)アメリカ大統領選挙は各州とDCに人口比で割り振られた、その州+DC配当の「選挙人」を1票でも多く獲得した候補者が全部取るーー実は、メーンとネブラスカの両州は一部、州内の選挙区得票率によって配分されたりしますけれどもーー「勝者総取り方式」ですよぉ~♪ とか、(2)大体、共和党(赤=象)、民主党(青=驢馬)が強い州は決まっているので、勝敗を決めるのは、選挙の度に「赤⇔青」が揺れる州ーーネバダ・アイオワ・オハイオ・ペンシルヴァニア・ノースカロライナ・フロリダ・ヴァージニア・ウィスコンシン・ミシガン・コロラドといったーー「Swing States」なんですよぉ~、

とかとかと併せて、日本では異口同音的に同工異曲的にマスメディアがカラオケBGM風に報道していますよね。私はこのような「こんなん、ネットでちょこっと検索したら中学生でも夏休みの自由研究で出すんちゃうか解説」に不満を感じるのです

ボイントはシンプル。すなわち、(甲)所得層を巡る共和党と民主党の伝統的支持層の襷掛け的ねじれを「総花カラオケ解説」は説明できていないこと。(乙)福音派やティーパーティの主流はーークルーズ上院議員に寧ろ期待したのであってーー必ずしもトランプ候補を支持していないこと。更には、(丙)低所得の白人有権者の相対的多数派は、低所得層により優しいはずの民主党のサンダース上院議員ではなくトランプ候補を大統領にするべく共和党に入党したこと……。而して、これらの現象を解く鍵は〈宗教・宗派〉なの鴨、そう私は考えるのです。


◆所得層別の支持傾向反転の背景としての宗教
共和党のブッシュ(子)大統領が、強敵ゴア副大統領を「連邦最高裁の写真判定」にせよ降せた最大の要因の一つが、所得要素とマイノリティ要素的には民主党候補の金城湯池のはずのヒスパニック有権者から民主党サイドの想定外の支持を得たからというのは、間違いない事実でしょう。要は、ラテンアメリカからの移民層の少なからずが、経済的な利得よりもーー敬虔なカトリック教徒である彼等にとってより重要なーー道徳的秩序の好ましさを基準に投票先を選んだということなのです。


ターナーの「フロンティア理論」と双璧をなす、アメリカ史学のレジェンド、金字塔、ビアード『アメリカ合衆国憲法の経済的解釈』(1913)および『アメリカ政党史』(1928)を引き合いに出すまでもなく、政治的な指導者層と支持層の職業、あるいは、所得や資産の量と種類に着目して、政党の盛衰を理解することは中庸を得たやり方でしょう。

しかし、再度書きますが、この観点からも、低所得層がーーラストベルトの所謂「白人∧中高年∧男性」に限ったとしても!ーーなぜ、民主党のサンダースではなく共和党のトランプを有意に選んだのかは説明できない。

他方、これまた繰り返しになりますけれども、共和党右派の有権者、すなわち、福音派はーーどちらかと言わなくても、英語圏以外のエリアからの移民の人びとに優しくはない、排外主義的でアメリカ一国主義の傾向濃厚な、よって、オバマとクリントン(夫妻)の移民政策を蛇蝎の如く嫌う彼等がーー、結局、福音派のペット候補(=クルーズ)のためにトランプをなぜ阻止しなかったのか/阻止できなかったのか。プロテスタントがあまたの宗派に分かれている関係で、一宗派としては人口の2割と「米国最大派閥=カトリック」の有権者動向は置いておくとしても、そうそれ、ーー3億2千万アメリカ国民の70%がクリスチャンであり、そのまた70%がプロテスタント、そして、その過半近くのーーアメリカ有権者国民の25%は緩やかな意味にせよ福音派なのに、です。


この二重螺旋的の知恵の輪を解く鍵は〈宗教・宗派〉ではないか。而して、その鍵もまた相矛盾するーーあるいは、二重性的な、クラインの壺的なーー形態をしているのではないか。と、そう私は思うのです。


※仮説1)サンダースの輪の鍵
低所得層のトランプ支持現象は経済的要因と宗教的要因の複合型の構造によって成立した

※仮説2)クルーズの輪の鍵
トランプに対する宗教的好感度は、「神との再遭遇」の如き個人の霊的体験に直接触れるタイプのものばかりではなく、寧ろ、信教の自由が朗らかに覆う〈自分達だけの政治共同体〉を具現せんとした、社会思想上の「北米英領植民地→WASP系13邦→アメリカ合衆国」の理念の再生により親和性の高いものではないか。

換言すれば、その「宗教的好感度」は、福音派の信仰規準の如き、例えば、a)聖書の神的霊的な権威と十分性の確信、b)神の三位一体性、および、イエスの復活の確信、c)原罪を背負う人間存在という前提の受容、d)信仰による救済の確信と感謝・歓喜…。これらに直接関わるものではない。それはより社会的で、寧ろ〈憲法的〉なもの、鴨と。

敷衍します。福音派は、あるいは、カトリックも理想は捨てて消去法的にーー例えば、同性愛や妊娠中絶のイシューに関わる、自己のキリスト教的の価値観との整合性は捨象してーーアメリカ建国の、半ば宗教的かつ半ば政治社会的な〈アメリカ合衆国の社会理念〉の再生をトランプ候補に賭けてみようと考えたのではないか。そう私は思うのです。


◆検算ーーアメリカ建国の風景
アメリカはどのようにしてできたのか、また、どのようなものとしてできたのか。このことについては、正に、汗牛充棟、良書・名著が和書でも洋書でも巷とウェブに溢れています。而して、ここでは上で述べた私の仮説を敷衍する範囲でアメリカ建国の風景を素描してみます。

といっても、「KABUお薦めの書籍/本稿を書く上で念頭に置いていた書物はなんですか」という問い合わせが来るのは見えている(笑)。数冊紹介しておきますね。


★註:アメリカ建国史関連推奨文献
ーー今のアメリカを知るために
・中村正志『アメリカ誕生の秘密ーー超大国アメリカの歴史遺伝子』(文芸社・2003年4月)
・ムルハーン千栄子『妻たちのホワイトハウスーー愛して泣いて闘った夫婦の列伝』(集英社・1999年6月)
・P.F.ボラー,Jr.『ホワイトハウスストーリーズーーアメリカ全大統領の逸話』(三省堂・1999年12月)最初の8人の大統領の箇所だけでもいい、鴨です
・ポール・ジョンソン『アメリカ人の歴史(Ⅰ・Ⅱ)』(共同通信社 ・2001年10月)間違いなく、(Ⅰ)は参考になる一書だと思います。而して、(Ⅱ)はone of them

・ラリー・ゴニック『まんがで学ぶアメリカの歴史』(明石書店・2007年12月, 原書の上梓は1999年)これはリベラル派のものですが、全体の4分の1を「建国以前」にあてがっておりーーかつ、大西洋経済システム(⊂資本主義世界システム)の確立・変遷の構図の中に「アメリカ建国」というイベントを位置づけたーー貴重で便利な一書だと思います

・Esmond Wright『Fabric of Freedom 1763ー1800』(1961)

・John H. Ely『Democracy and Distrust』(1980)KABUの「種本」の一つ

・Bruce Ackerman『We the people, volume 1』(1991)
本書は現在のアメリカにおける「リベラル系憲法基礎論」の一方の主柱。〈敵の手の内〉を知るためにも便利な一冊です。南北戦争の戦後復興期とFDRのニューディル期、加之、1950年代半ば以降の「市民的権利:civil righ
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大東亜戦争終結後のこの社会で跳梁跋扈し猖獗を極めた戦後民主主義の批判を果敢に推進するための
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