法概念論から見たリベラル派の荒唐無稽な「立憲主義」(予告編)






安倍政権による「集団的自衛権」を巡る政府憲法解釈の見直し、あるいは、安全保障関連法制の制定に対して、それは「立憲主義」に反するものだという主張が朝日新聞や毎日新聞、NHKや民進党といったリベラル派から出ているようです。安全保障関連法制は違憲であるという認識を越えて(★)、それらはーー多くの憲法研究者からの批判が寄せられているというのに、かつ、政府自体が長年唱えてきた占領憲法9条の解釈を180度変えた、正に、憲法によって縛られるべき国家権力が勝手に憲法の意味内容を読み替えたものなのだからーー立憲主義を踏みにじる所業だ、とかなんとか。

>安全保障関連法制は違憲だ!
>安全保障関連法制と集団的自衛権を認めた政府解釈の変更は立憲主義に反している!

蓋し、私はリベラル派のする「立憲主義」の援用は、単なる集団的自衛権を巡る憲法9条の彼等の私的な解釈にすぎないものを「立憲主義」という憲法的原理の1つを持ち出してきてーー「自分達の解釈と違う憲法解釈を政府が採用するのは反立憲、少なくとも、非立憲だ」とばかりに、「立憲主義」の四文字でーー正当化するもの。実は、かなり根拠脆弱な主張または赤裸々な謬論。蓋し、それは憲法基礎論、就中、「憲法の概念論」と「憲法解釈学方法論」からサポートされないリベラルイデオロギーの表白にすぎない、鴨。と、そう考えます。


★註:安全保障関連法制の司法審査
安全保障関連法制の合憲・違憲については、その母法であるアメリカ合衆国の連邦憲法と同様にーー警察予備隊事件最高裁判決(1952)で確定している如くーー、所謂「付随的司法審査制」を採用している現行の占領憲法下においては具体的な紛争事件において最高裁判所が最終的に判断するのでしょう。もっとも、リベラル派が提訴する事件なるものに事件性がないと司法府が判断すればーーすなわち、紛争類型と主張される権利の成熟性、ムートネスの継続的存在、原告適格の具備、なにより、司法による紛争解決の可能性と妥当性といった「争訟性・事件性の要件」(cf. アメリカ連邦憲法3条2節)をその訴訟が満たしていなければーーその訴訟は「門前払い」になるだけでしょうけれども。よって、本稿ではこの点については特にコメントはいたしません。はい、果報は寝て待てです(このイシューに関するKABUの見解については下記拙稿をご参照ください)。

〈安全保障関連法制の司法審査プロセス予想〉
〓〓>争訟性・事件性なしの場合→→訴訟が成立せず「却下」の門前払い!
〓〓>争訟性・事件性ありの場合→→統治行為論により実体的の司法審査を行わず「棄却」の判決!

・集団的自衛権を巡る憲法論と憲法基礎論(上)(下)
http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/65232559.html

・国連憲章における安全保障制度の整理(上)(下)
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/9a5d412e9b3d1021b91ede0978f0d241 


ただし、アメリカ憲法学で言われる「政治的事件:political questions」、日本では「統治行為論」として語られる法理。司法審査の対象が限定され司法審査権がそこには及ばない事案の存在が砂川事件最高裁判決(1959)、および、苫米地事件最高裁判決(1960)等々、これまた判例上も確定しています。すなわち、「日米安全保障条約の合憲性判断や天皇の衆議院解散権等々の高度の政治性を帯びる一群の案件:political questions」に関しては、現行の占領憲法の有権解釈者は立法府であり行政府ということですからーー畢竟、最終的には、国民有権者が選挙でそれを追認または拒否することになる、半法的-半政治的のマターなのでしょうからーー、而して、安全保障法制は、それが日本の存立に直結することは間違いない「高度の政治性を帯びる案件」として司法審査権限は司法府にはないと最高裁判所が判断することが「立憲主義」から見ても妥当なの、鴨ですけれどもね。尚、統治行為論と立憲主義の関係に関しては下記拙稿をご参照ください。

・立憲主義を守る〈安全弁〉としての統治行為論
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/d2b014fb5dcdcb6d9260f7aa8eec3c5f



◆リベラル派の「立憲主義」援用は我田引水的の戯言
繰り返しますけれど、安全保障関連法制が違憲だと言うのは、一応、各論者の勝手ではある。しかし、国政の中の統治行為マターに関する有権解釈者(立法府・行政府)の憲法解釈の変更をいかなる根拠と理路から立憲主義に反すると言えるのか。その主張は根拠薄弱どころか支離滅裂ではないのか。蓋し、リベラル派の主張を次のようなものと理解するとき、私にはそう思われるのです。


・集団的自衛権を日本は国際法上は保有してはいるけれども、占領憲法9条はその行使を認めていない
・この解釈は日本の憲法研究者コミュニティーの共通認識と言ってよいものだ
・日本政府もーー独立回復前、占領下の、所謂「個別的自衛権」さえも否定していた吉田茂首相の発言は参考にならないとしてもーー、1970年代前半から、遅くとも1980年代初頭からは明示的にこの解釈を堅持してきたではないか
・ならば、集団的自衛権の行使が違憲であること、このことは占領憲法の紛がうことなき規範意味と言える
・ところで、立憲主義においては「憲法は権力を縛るもの」であり、立憲主義とはーーa)その社会の多数者によっても侵害されてはならない権利の保障、および、b)権力の分立、c)望ましくは、立法府・行政府という政治部門から独立した司法府による権利保障制度の導入、更には、d)憲法典の改正手続きを通常の法改正よりもハードルを高め、その変更を慎重にならしめること等をコロラリーとしつつ、本質的には、ーー国家権力の行使はすべからく憲法に従ってなさればならないという原理である
・先進民主主義国において立憲主義は普遍的憲法の原理であろうし、ならば、日本が欧州のOECD加盟国の如き先進民主主義国であるのならば論理的にも政治的にも憲法は権力の〈前〉に存在する。換言すれば、権力はーー正規の手続きを踏んでそれを改正するのでなければーー自分の〈主人の命令〉である、その憲法の内容を〈命令の宛名人〉たる自分が恣意的に変更することなどできない
・客が「ラーメンライス」を注文しているのに、厨房が勝手に「炒飯餃子」をつくり、ホール係はお客に文句も言わせず、代金まで払えという支那みたいな中華料理屋はおかしいだろう。まして、大家さんとの約束で、「1200坪の庭の草むしりをするという条件で家賃・水光熱費ただでゴージャスな洋館に住んでいる居候」が勝手に「私には庭なるものは見えない/草が生えているようには見えない」と、なにもせずに居座っているとしたら犯罪だろう
・而して、権力を縛る憲法の内容を、就中、明確かつ確定している憲法規範の内容を権力自体が勝手に変更するが如きこと、今般の安倍内閣による集団的自衛権を巡る政府解釈の変更と安全保障関連法制の制定は、先進民主主義国ではあってはならない北朝鮮や支那におけるような事態であり、ーー加之、国民に義務を課す規定をもうけ、あるいは、人権を公益なるものによって制限しょうとする自民党の改憲草案は、ーー立憲主義に反する「反立憲」少なくとも「非立憲」の所業である


もしも、リベラル派の「立憲主義を援用しての安倍内閣批判」が上記の如き理路のものだとすれば、それは憲法基礎論からは我田引水的の戯言にすぎない。と、私は思うのです。換言すれば、憲法の規範意味の内容はそれほど明確でも不変なものでもないし、まして、日本のリベラル派がいうような意味での「立憲主義」などは、それは「OECD加盟国なる先進国に普遍的なものなどでは断じてない」ということ。畢竟、例えば、社会学的に観察する場合、ーー所謂「近代的意味の憲法」であれ、更には、所謂「立憲民主制」下の国家社会においてであれーーー憲法が社会統合のための制度装置でありイデオロギー装置であること、更には、それが統治の道具でもあることは誰も否定できない事実でしょう。加之、支配する者と被支配される者との自同性を建前とする国民主権下の実定法秩序においては、憲法が権力を縛るものであると同時に国民の行動を縛るものであることは毫も矛盾しないのですから。


ポイントは3つ。

(甲)立憲主義と憲法規範の内容
(乙)立憲主義と憲法の概念
(丙)立憲主義と憲法の機能ーー統治の〈道具〉、あるいは、社会統合の装置としての憲法



以下、本編をお楽しみに

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