移民の国アメリカが移民を排斥することは矛盾だという論理の論理の破綻について

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1)アメリカは移民がつくった国である
2)そのアメリカが移民を排斥することは矛盾している

このような議論がトランプ大統領が「シリア難民などの受け入れを停止する大統領令に署名」したことを受け流布しているようです。しかし、このような議論は--アメリカ史の解釈においても実は必ずしも正しくはないのですけれど、そもそも--論理的になりたちません。なぜか、それはこのロジックは次のような根拠不明な第3の媒介項を密輸した疑似論理(イデオロギー)にすぎないから。

1)アメリカは移民がつくった国である
2)そのアメリカが移民を排斥することは矛盾している
3)なぜならば、移民がつくった国は移民を排斥してはならないからだ

すなわち、3)の「移民がつくった国は移民を排斥してはならない」という規範命題は事実に関する認識にかかわる1)と2)とはなんの論理的な関係を持っていません。それは、単に、文化帝国主義のリベラル派の仲間内でのみ共感を獲得可能かもしれない。けれども、その傲岸不遜なリベラル派のコミュニティー内においてさえも論理的には、1)「アメリカ=移民の国」、および、2)「アメリカの移民排斥は矛盾」という認識とは結びつかない類の、謂わば「密輸品」なのだから。畢竟、価値と事実を峻別する新カント派の方法二元論の地平を持ち出すまでもなく「移民の国アメリカが移民を排斥することは矛盾だ」という論理は破綻している。

ダメ押ししておけば(笑)。私のこの指摘に対して、「殺人事件や朝日新聞んの誤報が繰り返されるとしても、「人を殺めるべからず」とか「報道機関は真実と事実を報道すべきだ」という規範が間違いであったり存在しないわけではないでしょう。ならば、「移民がつくった国は移民を排斥してはならない」という規範命題は「アメリカ=移民の国」という事実命題と共存可能なのではないですか」というカント哲学のイロハもわかっていない論者からの反論があるかもしれない。しかし、この反論自体すでに「お前はすでに死んでいる」の<北斗の拳>の類のもの。

なぜならば、殺人事件や朝日新聞の頻繁な誤報と無関係に規範の世界で「人を殺めるべからず」とか「報道機関は真実と事実を報道すべきだ」という規範命題が成立しているからこそ、事実と規範の見かけ上の齟齬にもかかわらず、その当該の「人を殺めるべからず」とか「報道機関は真実と事実を報道すべきだ」という命題は効力を持つのですから。而して、「移民がつくった国は移民を排斥してはならない」という規範命題が成立していない、現在の人類史というかアメリカにおいて、上記1)~3)は単なる破綻した論理にすぎないのです。

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畢竟、移民がつくった国、そのルーツは移民であるにせよ、しかし、--1882年の中国人排斥法および1924年の日本人移民排斥法、なにより、識字テスト導入やアルコール愛好者の排除等々、その排斥対象の広範さで有名な「1917年移民法」を想起するまでもなく、この150年間に限ってもアメリカが数次にわたり移民規制を行ってきたことでも明らかなように--現在の国民やその政府がある時点以降は「移民を規制排除」する政策判断を行うことはなんら矛盾ではない。まして、アメリカは移民の国という規定は半ば正しいけれど、半ば間違っている。アメリカがサラダボールやオーケストラなのか、あるいは、メルティングポットなのかというアメリカ社会の文化論議とは別に、アメリカ合衆国は、
 
・キリスト教(メリーランドのカトリックを含め)の各会派の人々が
・自分の会派の信仰を奉じ実践できる各会派のコミュニティーを
・自由に形成でき、他の会派のコミュニティーと共存できる<新天地>
 
として(確かに、旧大陸にルーツを持ってはいる)移民によってつくられた国である。嘘でも本当でもこの、①キリスト教、②会派ごとのコミュニティーの自由な形成、③それらの会派コミュニティーの共存が建国の理念なのです。ならば、これらの理念と無関係な単なる<裸の移民>がアメリカをつくった、などは、リベラル派によるアメリカ理解の無知か詐術に等しい。
 
まして、アメリカは英国(スコットランドを含む)とアイルランド、そして、ドイツ系、および、北欧系の移民が創ったプロテスタント--および、プロテスタントと共存できるタイプのカトリック--の入植者がその基盤を形成したかなり文化的に特徴のある政治社会。

而して、19世紀末からのイタリア系と東欧系、20世紀のアジア系とヒスパニック系の新と新々移民もまた、そのアメリカの基盤的エートスと社会秩序を受諾する限り<アメリカ人>であることを--南部の敬虔なバプティスト等々のキリスト教徒であるアフリカ系の市民を含む--アメリカ国民から認められてきた。すなわち、アメリカは、移民の国ではあるがそれは過去現在においてもすべての移民を無条件に受け入れてきたわけではないのです。ましていわんや将来においておや、です。 


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加之、バートランド・ラッセルの「記述理論」を借用して敷衍しておきます。例えば、「2017年1月30日現在のフランス国王(king)は男性である」という命題は、文法的に正しく、また、命題の内部に論理矛盾は含まれていないとしても、経験的事実に反するという意味では「偽」でありましょう。これと同様に、「アメリカの移民排斥は矛盾している」という命題も、文法的には正しく、また、(例えば、「トランプ大統領は移民の無制限受け入れを命令した、よって、アメリカは移民排斥を強化した」が内部に矛盾を抱えているのに対して)命題の内部に論理矛盾は含まれていないけれども、それは経験的事実に反する。而して、それは論理的にも間違いなのです。

すなわち、

 「2010年3月3日現在のフランス国王(king)は男性である」という命題は、

実は、

 「2010年3月3日現在フランス国王(king)が少なくとも一人存在する」
 「その国王(king)は男性である」

という二つの命題の結合であり、前者の命題が経験的事実と反するがゆえに、
この命題は論理的にも「偽」である。これと同様に、

 「アメリカが移民を排斥することは矛盾している」という命題も、

 「アメリカは移民がつくった国である」
 「移民がつくった国は移民を排斥してはならない」
 「アメリカは移民を排斥してはならない」
 「トランプ大統領の大統領令は矛盾している」

という4個の命題の結合であり、而して、第2と第3の命題は経験的事実に反しており、
よって、「移民の国アメリカが移民を排斥することは矛盾だ」という命題は論理的に「偽」なのです。


・トランプを携えて日本再生―We also make Japan great again!
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/64689a762ef92844d91a75a1df495fe4

・予告&資料:「ドナルド・トランプ米国大統領就任演説(全文)」 de 英文読解のために
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/a04cae0af5c4b82c6b4276f2aea75823

・宗教と憲法--アメリカ大統領選の背景とアメリカ建国の風景
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/3a1242727550e8e31a9133aa154f11bf

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