<アーカイブ>戦争は人為か自然か?

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【解題】
本稿の大元の考察は12年前――1回り前の干支の年!――と、超大昔のものです。けれども、現在、ニューヨークの国連本部で、正にいま「核兵器禁止条約の交渉会議」が開催されている2017年の今こそ、本稿は読み返すに価するもの、鴨。そう感じたので――ここ数年書いた関連記事のリンクURLを加えて――再録することにしました。
蓋し、そう、例えば、核兵器禁止条約の如き発想。「条約をつくれば核兵器、少なくとも核兵器の使用を止めることができる」と考える空想的平和主義の悲しいまでの無内容さを見るとき。確かにその言葉は清楚で優しいけれども、要は、文化帝国主義的の滑稽と傲慢をその条約交渉のプレーヤーの言葉はの端々に感じるとき。なにより、冗談ではなくて――その無内容な条約を最大限利用するだろう支那と北朝鮮が即効で引き起こすに違いない――安全保障体制を巡って世界が不安定化することの危惧を感じたがゆえに! 
5年ぶりに本稿を再録しようと思いました。尚、核兵器禁止条約がその具体的の相貌、その姿を正式にあらわした段階で本稿の続編をアップロードする心つもりです。
 
・被爆国たる日本には核武装する権利がある、鴨
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/5dbbffd0fdb9901b9599883ce21bf038
・濫用される「国際社会」という用語についての断想
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/c3e3691fe42c9648d012251a71018c54
 
・国連は「主体」ではなく「舞台」です
:国連人権委員会の正体 国連は日本を非難しないと出世しない組織 (追補あり)
 
・(再論)ゲーム理論から考える「不幸な報復の連鎖」あるいは
「不毛な軍拡競争」という言葉の傲慢さについて
 
・まずは「加憲」でいいのではないですか
 ――改憲派こそ「憲法」に期待しすぎるのやめませよう
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/9333930d645cf9bb127ad33d72915dd7
 
 
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▼戦争は人為か自然か?
 
2012/01/07 21:01
日々感じたこととか
 
大昔のものですが、私の週刊愛読書『週刊金曜日』でおもしろい文章を見つけました。当時の同誌編集部の成澤宗男さんの筆になる戦争の本性についての記述。笑う門には福来る。同誌を私は健康のために毎週購読しているのですけれども、2012年の今も、この記事は「笑ってすますわけにはいかないもの」とも感じましたた。以下、引用。

この国は、戦争を自然災害と同じように見なすのが伝統なのか。太平洋戦争の空襲や原爆投下などが語られはしても、その「悲惨さ」が誰によってもたらされたのかという議論はこの六〇年間国民にとって関心外だった。「悲惨さ」を嘆くことはあってもそれらをもたらした権力者の行為は不問にされ、あたかも天災犠牲者を弔う感覚だ。

だが戦争や有事は、自然界で突如生じる天災ではない。人間の行為の産物であるから予測が可能で、英知を働かせれば回避や予防もできる。だが。こうした常識は今も通用しないようだ。その代表例が、これから全国津々浦々を包み込もうとしている「国民保護計画」だろう。(後略:「国家はデマで国民を戦争に導くのか 全国各地で始まった「戦時訓練」」,『週刊金曜日』2005年12月9日号pp.17-19所収) 

まあ、昔も今も通用しない主張や認識のことを世間では「常識」とは言わないのでしょうが、この400字原稿用紙1枚にも満たない記事には大東亜戦争後の我が国で跳梁跋扈し猖獗を極めた戦後民主主義からの妄想平和主義の核心とも言うべき<世界観>が込められていると感じました。それは、我が優秀かつ勇敢なる自衛隊を違憲と捉えるだけでなく国家の自衛権をも否定するもの;そして、現在、行政法と憲法と国際法を無視して「無防備地域宣言の条例化」を推進しているカルト思想の基底と見られるものをです。

以下、(甲)「戦争は人為か自然か」→(乙)「人間は戦争を回避予防可能か」→(丙)「戦争に備える行為は戦争を誘発する危険な企てか/戦争を否定し戦争の準備を行わないことは戦争を誘発する危険な企てか」の三点につき検討します。

尚、引用した記事には、ご丁寧に無防備地域宣言運動全国ネットの事務局長・桝田俊介氏のコラム「無防備地域宣言は戦争に協力しない」(ibid, pp.18-19)が付随している。つまり、戦争の本性に関する『週刊金曜日』の考えは<無防備地域宣言運動>とも親近性があると思われるのです。これらを確認するために<無防備地域宣言運動>側の発言を一つ収録しておきましょう;滋賀県でこの運動にコミットしておられる方の提言。以下、「無防備地域宣言をめざす大津市民の会」事務局長・中川哲也さんの提言。

天災と違い、戦争は人間が意図的に引き起こすもの。ならば、人間の英知で戦争をなくすことは可能だ。無防備地域は「軍隊のない地域」の意。国際法と憲法9条を生かし、軍備を持たず、お互いが憎しみあわず多民族が共生できる社会を目指す。「武力で解決する」ブッシュ・小泉的思考から脱却し、「平和を愛する諸国民の公正と信義」(憲法前文)に住民の安全を託し、地域社会で戦争をなくすシステムを住民の手で作る。その核が無防備地域宣言と条例だ(以上、引用終了)


◆戦争は人為か自然か?
世に恐ろしいものの代表として「地震・雷・火事・オヤジ」と言います(尚、ここで本当は「オヤジ」は「大風=台風」なのですが、俗論の「親父=星一徹」のこととします)。而して、「火事」はいささか微妙ですが、地震や雷が自然現象であり天災であるのに対して、オヤジや戦争が「人間の行為の産物」であり「人間が意図的に引き起こすもの」、即ち、人為であることは取りあえずそう異論はないでしょう。

しかし、「自然界で突如生じる天災」は予測ができず予防や回避が難しいのに比して、「人間の行為の産物」や「人間が意図的に引き起こすもの」のすべてが予測可能で「英知を働かせれば回避や予防もできる」のかと問われれば、問題はそう簡単ではない。逆に、自然現象には法則性が見出されるのに対して、人為的事象には主観や運命が介在する余地が多く、寧ろ、自然現象は法則を活用したコントロールが可能なのに対して、「女心/男心と秋の空」の如き人為の制御は難しいとも言えるからです。

更に、根本的な問題がある、鴨。自然現象と人為の差は、実は、(N)その動因を人間以外のものに求めるか人間の行為や意志に求めるのかを基準にしてカテゴリー分けできるだけでなく、(H)その現象を<原因→結果>の因果関係で理解できるか、あるいは、<目的→行動>の目的連関で捉えられるのかという認識論的な違いによってもカテゴリー分けができるということ。そして、世の森羅万象の事物の、この「因果関係-目的連関」という二つの判定基準による自然と人為への分節(振り分け)は、相互に孤立した判定であり、相互に他の判定を否定も肯定もしないということです(老婆心ながら申し述べれば、例えば、大晦日にしこたま飲んだ結果の飲酒運転が引き起こす交通事故の如く、ある一つの同じ事象に因果関係と目的連関の双方が観察されることも希ではないということです。為念)。


◆戦争は回避可能か?
戦争の本性の吟味について「自然と人為の差異」をどのように捉えるか。私は<三次元マトリックス>とも言うべき認識枠組みを提案します。即ち、

世の森羅万森羅万象を(X)動因が人間の意志に起因するか否か、(Y)その現象の中に法則性が観察できるか否か、(Z)その現象を人間が制御可能か否か、という3対の軸でもって位置づければ、少なくとも、戦争の本性を考える作業を生産的にする、鴨と(★)。

★註:三次元マトリックス
三次元マトリックスによれば、地震・雷・台風・火事・オヤジ、そして、戦争は各々次のように表記できる、鴨。尚、下で使用する1行3列表記:例えば、(1:0:0)は(第1列)動因が人間の意志に起因する、(第2列)現象の中に法則性が観察できない、(第3列)その現象を人間が制御不可能という情報に対応するものです。

地震(0:0:0)、雷(0:1:0)、台風(0:1:0)、火事(1:1:1)、オヤジ(1:?:1)、戦争(1:0:0)、と。すなわち、何十年間隔での周期性が確認される幾つかの地震は(0:1:0)になり、あるいは、「雷が神奈川県東部で発生する」という精度なら(0:1:0)でしょうが、「今日の午後2時から5時の間に川崎市麻生区の新百合ヶ丘駅北口ロータリーに落雷する」かどうかという事態になれば(0:0:0)になるでしょう。また、統計的な観察からは火事の発生や交通事故の死亡事故は(1:1:1)かもしれませんが、一件一件の特定の火災や事故は(1:0:0)になるの、鴨。

私は何が言いたいのか。それは、人為だから予防と回避が可能とか、自然現象は予防や回避が不可能とは言えないということです。例えば、世界規模の大恐慌はケインズ革命以前には人為であったのでしょうが(ある程度予測は可能ではあったにせよ)予防も回避もできなかった。なにより、1973年のオイルショック以降、世界の経済成長率とある国家財政における社会福祉コストの増加率のギャップは現在でも基本的には解決されていません。畢竟、あるタイプの戦争もまたそうではないでしょうか。

而して、動因の観点からは戦争は人為かもしれないが制御可能なものばかりではない。このタイプの戦争は予防と回避が不可能という点では台風や地震などの自然現象となんら変わらないということです。


◆戦争に備える行為は有害か有益か?
戦争は人為かもしれないが制御可能なものばかりではないのではないか? 要は、戦争はなぜなくならないのか? 簡単です。領土問題・自国民の保護、国家の正統性の確保・国民経済の存立の確保、このような国家の存在と国民の生存を巡る幾つかのタイプの国際紛争において、人類は「戦争よりも効率的で効果的な紛争解決の手段」をいまだに手に入れてはいないから。畢竟、日本にとっての日清・日露の両戦役および大東亜戦争などはその典型例と言うべきものでしょう。

逆の方向から敷衍します。戦争を地上から消滅させる方法としては大きく次の五つがあるの、鴨と。即ち、1「兵器消滅型」、2「抑止力均衡型」、3「人類消滅型」、そして、戦争をできない<本能>を人類が後天的に獲得する4「突然変異型」。及び、戦争の主体たる主権国家がすべて消滅する5「国家消滅型」の五つです。 

而して、4「突然変異型」と5「国家消滅型」は<問題解決の納期>を30年とか100年とかに制限するとすれば3「人類消滅型」とほとんど差のない理想論というかSFの世界の御伽噺の類でしょう。

また、1「兵器消滅型」での戦争の消滅を実現するためには、すべての攻撃兵器の破棄を全世界が「同時に始め」、また「同時に終了」しなければ意味がないと思います。どこかの国が抜け駆けをすれば、その意図は瞬く間に崩壊するでしょうから。よって、これまた非現実的であり、畢竟、人類に残された戦争をなくす方途は2「抑止力均衡型」しかないと私は考えるのです。 

ならば、「戦争よりも効率的で効果的な紛争解決の手段」が発見されていない現在、戦争がなくなるケースは独り抑止力の上での均衡のみということになる。就中、理想的には、どのプレーヤーも(=主権国家もテロリスト集団も!)現在の状況を悪化させない限り別のより良い状況には入れないという「パレート最適モデルの均衡状態」を、可能な限り長く可能な限り広範な紛争において実現すること。それが「不愉快な正解」とも言うべき<戦争を巡る正しい認識>なのではないでしょうか。而して、実は、それが曲がりなりにも20世紀の二度の世界大戦を通して人類が実現しようと努力してきている方途に他ならないの、鴨。

畢竟、あるタイプの戦争が不可避である限り人類に許されているのは、戦争の発生をミニマムに抑え戦争が発生した場合には戦争が惹起する悲惨をミニマムにすること。言わば<戦争との平和的共存>だけではないか。ならば、戦争の惨禍をミニマムするために次の三点をたゆまず推し進めるべき、鴨。と、そう私は考えます。すなわち、

◇人類と戦争との平和的共存のためのスキーム

・兵器・法制度・国民意識のすべてにおいて戦争に備える努力
・戦争でなくとも解決できるタイプの国際紛争を漸次拡大する努力
・抑止力の均衡を維持しつつ、漸次、武力自体をミニマムにしていく努力

結論:戦争は人為ではあるが制御可能とは言えない。

この認識からは、戦争でなくとも解決できる国際紛争と戦争でなければ解決できない国際紛争の違いを理解せず、また、平和をもたらす抑止力の均衡を否定するが如き、憲法9条教の如き主張は、平和を希求するその美しい言葉とは裏腹に、世界の不安定化を招き戦争を誘発する危険なものである。と、そう私は確信しています。

尚、戦争を巡る現在の国際法の内容に関しては下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。

・集団的自衛権を巡る憲法論と憲法基礎論(上)(下)
 http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/3732bd7bc50e2706143de2f6ef30e0f6

・「核なき世界」なるものを巡る日本と世界の同床異夢 
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-776.html

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大東亜戦争終結後のこの社会で跳梁跋扈し猖獗を極めた戦後民主主義の批判を果敢に推進するための
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2007年9月10日以降の新記事を随時、厳選した過去の自薦稿を漸次アップロードしていきます♪

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