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立川反戦ビラ事件の被告人らの無罪を訴える法学者声明(上)

tachikawatentobook


立川でプロ市民が行った自衛隊官舎でのビラ配りに関する平成17年12月9日の東京高等裁判所の判決の余韻が続いている。被告側のプロ市民は上告して争う構えであり、19日にはこれらプロ市民を応援する『法学者声明』が出された(この事件に関しては下記URLの拙稿もご参照いただきたい)。

・プロ市民の立川自衛隊官舎ビラ配りに<No!>の控訴審判決
 http://www31.ocn.ne.jp/~matsuo2000/E/E62.html


蓋し、表現の自由を健全に育てていくためにも、「表現の自由が尊重されるべきものとしても、そのために他人の権利を侵害してよいことにはならない」(控訴審判決)ということ、そして、どの範囲の他人の権利侵害までは許されるべきか(ある政治的表現に関してどの範囲の不愉快さを互いに我慢すべきか)というポイントはきちんと判断されるべきであろう。

而して、その注目すべき最高裁判決を考える上でもこの『立川反戦ビラ事件の被告人らの無罪を訴える法学者声明』(以下、『声明』と記す。)を若干のコメントともに資料として収録しておきたいと思った。原則、以下、緑色の文字が『声明』からの引用である。

尚、私は刑法に関してはまったくの素人である。よって、以下のコメントには多くの間違いが含まれることになることは覚悟している。その場合、主義主張の違いを超えて詳しい方にはご遠慮なくご指摘いただければ本当に嬉しい。人生もブログの give and takeが肝要でしょうから。


puroshimin004



<声明の項目>
・前書き(原文には「前書き」などの題名はない)
・1経緯
・2犯罪構成要件に何ら該当しない。
・3検察官の公訴権の濫用である。
・4可罰的違法性はない。
・5政治的表現の意義



●立川反戦ビラ事件の被告人らの無罪を訴える法学者声明
2005年12月9日、東京高等裁判所(中川武隆裁判長)は、いわゆる「立川反戦ビラ事件」の3人の被告人(以下、「被告人ら」)に対して、罰金10 万円ないし20万円の有罪判決(以下、「本判決」)を言い渡した。報道等により、この判決に接した多くの市民は、日常的に行われているビラ配布が、「犯罪」とされたことに違和感をもったであろう。


・国民の法意識
ブログやサイト掲示板で見る限り、「表現の自由が尊重されるべきものとしても、そのために他人の権利を侵害してよいことにはならない」という当然のことをはっきりさせてくれたこの判決を拍手でもって受け止めた市民も少なくはなかったと思われる(笑)。これは『声明』を茶化すために言っているのではない。多くの国民が有罪判決を当然と考えている事実は、2005年12月のこの社会の法意識を表すものであり、可罰的違法性や違法性の程度を考える上で重要なポイントになると思うのでここに記しておく。


1 経緯
この事件(以下、「本件」)は、2004年2月27日、市民団体「立川自衛隊監視テント村」のメンバー三人が、東京都立川市内の防衛庁官舎の郵便受けに「イラク派兵反対!いっしょに考え、反対の声をあげよう」という内容のビラを投函したことを理由に、「住居侵入罪」の容疑で逮捕・勾留され、また「テント村」事務所等6箇所が家宅捜索を受け、パソコンや団体の資料などが押収され、同年3月19日に起訴されたことに端を発する。

なぜ、ビラを配っただけで逮捕され、起訴され、75日間も自由を奪われなければならないのか、日本は本当に民主主義国家なのか、という深刻な疑問の声が多く発せられた。また国際的人権擁護活動で名高いアムネスティ・インターナショナルも、被疑者三名を、日本で初めての「良心の囚人」と認定するなど国際的にも注目を集めた。


・「ビラを配っただけ」の事例かどうかが問題である
「ビラを配っただけ」ではなく、「逮捕され、起訴され、75日間も自由を奪われる」に値するようなビラの配り方をしたのかどうかが問題なのである。住人や住居・邸宅の管理者に注意されれば、謝罪した上で速やかにビラ配布を中止する常識ある商業ビラ配りとプロ市民による悪質なビラ配布を同一視する「ビラを配っただけ」などという表現は、真面目に商業ビラを配布している業者の方々に失礼であろうし、それは最初から本事案の被告人プロ市民を擁護する結論ありきの表現であり、本事案をことさらに矮小化するものではなかろうか。蓋し、真面目な商業ビラのポスティングと強盗の下見やプロ市民のビラ配りは法的にも全く異なる事象なのである。

実際、カルト的人権利権団体として国際的にも悪名高いアムネスティ・インターナショナルが、本事案の被告人3名を「良心の囚人」と設定したことは、彼等、被告人プロ市民の行為が単なる「ビラを配っただけ」ではない反社会的で反民主主義的な行為ではなかったのかという嫌疑を多くの市民に抱かせるものであろう。


2004年12月16日、東京地方裁判所八王子支部は、三名の被告人に無罪を言渡した。

この判決は、被告人らの行為が住居侵入罪の構成要件に当たると認定したところに問題を残すものの、本件のビラ配布行為を「憲法21条1項の保障する政治的表現活動の一様態」と認め、「民主主義の根幹を成す」のであり、商業的宣伝ビラと比して「優越的地位」があると明言し、無罪とした。

しかし、検察側が控訴したことにより、被告人らは、さらに応訴をせざるをえない立場におかれ続けた。そして約1年後に、本判決の言い渡しとなった。

私たち、この声明に賛同する法学者は、本判決が法律論として是認できないことを明らかにし、被告人らを無罪であることを多くの人々に対して主張し、同時に自由な表現活動に支えられた民主主義を維持するために発言することが自らの社会的責務と考え、この声明を発表する。


・<二重の基準論>の先が問題である
一般論として、経済的自由などに比べて表現の自由や思想良心の自由、就中、政治的な主張を表現する自由や信仰の自由がより手厚く保障されるべきとする、所謂<ダブルスタンダード/二重の基準論>に私も異論はない。例えば、首相の靖国神社参拝はこの観点からは憲法的にも最大限に保障されるべきなのだろう。

しかし、どのような自由も無制限のものではない。ならば本事案においても、この<二重の基準論>の帰結は、経済的自由と表現の自由に(どのようなガイドラインを援用することで)どの程度の差異がつけられるべきかについての具体的な判断に落とし込まれない限りそう意味のあるものではなかろう。

そして、その具体的な判断とは、少なくとも、①刑罰によってなされる表現の自由の制約は、他のより抑制的な制限手段が不可能な場合にのみ許されるべきであり、本事案についてはその「制限手段」は具体的にどのようなものだったかとか、②表現の自由を予防的に制限することは可能な限り控えするべきであり、まして、国民の表現行為が萎縮するような制約は許されない、よって、本事案の場合にはどのような「警告」や「事前の注意」が取られるべきであったか、あるいは、③その政治的表現行為を「不愉快」と感じる他者がいたとして、彼等は具体的にはどの程度まで我慢すべきだったのか等々に関して、経済的自由と表現の自由における差異に言及するものであろう。

而して、本件のポイントは徹頭徹尾「政治的な主張を表現する自由の限界確定」である。よって、「本件のビラ配布行為を「憲法21条1項の保障する政治的表現活動の一様態」と認め、「民主主義の根幹を成す」のであり、商業的宣伝ビラと比して「優越的地位」がある」というだけでは、本控訴審判決と第一審判決のいずれが妥当かについては実は何も言えないと思われる。

更に、日本の刑事制度が世界でもまれに見る強度の「起訴便宜主義」(どの案件を起訴するか起訴しないかを検察がその裁量で決めることができる制度)を採用していることを鑑みれば、そのゲームのルールに反しているとはいえない検察官の起訴について、「検察側が控訴したことにより、被告人らは、さらに応訴をせざるをえない立場におかれ続けた」と言うのは、とりあえず言いがかりに近い発言ではないかと思う。実際、無罪になる可能性もある難しいこの事例について、虻蚊の如きプロ市民を検察が勇気を持って起訴してくれたことに喝采を叫んだ自衛隊員とそのご家族がけして少なくないことを私は直接知っている。


2 犯罪構成要件に何ら該当しない。
まず、被告人らが立入った部分をどう考えるかである。本判決は、本件官舎の敷地および建物共用部分を刑法130条の「人の看取する邸宅」(以下、「邸宅」)とした。たしかに、最高裁判決には、敷地を「邸宅」とした事例がある(昭和32年4月4日判決)ものの、建物共有部分まで「邸宅」としたものは見当たらない。しかし、本判決が建物共有部分を「住居」と解しなかったことは、この部分に対する住居権の行使が、単純に個々の住人の意思によって決められるものではないことを示唆している。

そこで、かりに被告人らの立入った部分が本判決のとおり「邸宅」であるとすると、検察官の起訴状にある刑法130条の「住居」には被告人らは立入っていないということになる。つまり、居住者のプライバシーの領域である「住居」については、被告人らは何らの侵入もしていないということになる。本判決が、敷地と建物共用部分は「邸宅」としたことは、皮肉にも、被告人らのビラの配布が、居住者の住居権を害したものではないことを浮き彫りにしたのである。


・「邸宅」と「住居」
日本の住居侵入罪の条規(刑法130条)はドイツ法と並んで多様な領域への侵入を犯罪類型として規定している。曰く、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する」、と。そして、「住居」「邸宅」「建造物」「艦船」の各々について、刑法130条が予想する犯罪の類型や可罰的違法性も異なってくると考えられており、特に、「人の看守する」という限定句が「住居」には付けられていないことは、同条の法意が「住居」とそれ以外の領域では明らかに異なっていると思われる。よって、『声明』が「邸宅」と「住居」の違いに着目されたのは十分理由のあることであろう。

しかし、刑事訴訟法256条4項にはこう書いてある。曰く、「罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない」、と。ならば、本事案は「罪条の記載の誤」があったわけでもなく、また、その罪名を刑法130条として起訴したものである以上、被告人のプロ市民のビラ配りに関する公訴事実と訴因(同法256条2項および3項)が不変である限り、プロ市民が立ち入った領域が「住居」であるか「邸宅」であるかによって本判決の妥当性が左右されるわけではない。


次に、被告人らの敷地と建物共用部分への立入りが、管理者の意思に反した「侵入」といえるかが問題である。「反自衛隊的内容のビラの投入又は配布している者を見かけた場合は直ちに110番通報する」ことを内容とする「依頼文書」を管理者が居住者に配布していたこと等を本判決は述べているが、被告人らが知る由もなかったこれらの措置をもって、本件建物共用部分に立ち入る可能性のある部外者に対する管理者の意思表示とみなすことはできない。そうすると、本判決が、被告人らの立入りを管理者の意思に反する「侵入」とした唯一の理由は、防衛庁官舎入り口や各号棟の各出入り口に管理者が掲示した「禁止事項表示板等」で示された管理者の意思に反したということのみである。

集合住宅における「禁止事項表示板等」の存在のみをもって、管理者ないし居住者の意思とする判決は見当たらず、また学説もそのようには解していない。なお、このような表示の存在した事案で「侵入」を認めなかった最高裁判例として、私鉄の駅構内で、駅管理者の再三の退去要請を無視して、約20分にわたり、ビラの配布や拡声器での演説を繰り返した事案で、鉄道営業法35条および刑法130条後段に規定により「不退去罪」の成立を認めた最高裁判決(昭和59年12月18日判決)がある。このような事案でも、「侵入」ではなく、「不退去」となっていることを考えると、「禁止事項表示板等」の存在のみを理由に、管理者の意思に反した「侵入」とした本判決は、安易な形式論を述べたのみで、刑法130条の解釈を誤ったものといわざるを得ない。

さらに、本判決は、管理者の意思に反したことのみをもって、被告人らの立入りを「侵入」としている。しかし、集合住宅において、居住者の意思と切り離された管理者の意思の存在を認めることは疑問である。本判決の論旨では、居住者のいずれかが立ち入りを許容していた部外者であっても、管理者の意思に反すれば立入りを認められないことになってしまい、かえって個々の居住者の意思をないがしろにする結果になってしまう。刑法130条との関係で、集合住宅において尊重されるべき法益は、何よりも個々の居住者の住居権である。それゆえ敷地および建物共用部分についての管理者の意思が、居住者の総意に基づいている場合に限って、管理者の代表する居住者意思の総意としての住居権を害する「侵入」と考えるべきである。本件は、管理者と居住者の間の意思確認は、ほとんどなされていない事案であり、居住者の総意に基づいた管理者の意思つまり住居権に対する侵害があったとは到底認められるものではない。

なお本件では、ビラ配布中に、それを中止するように居住者から注意された被告人がいるが、その際、当該被告人は当該居住者の注意に平穏裡に従っており、また個々の居住者の意思をもって、敷地および建物共用部分への立入りに関する居住者の総意を代表していると考えることは難しい。個々の居住者の意思は、共用部分を利用する他の居住者の異なった意思の可能性を排除することはできないからである。したがって、このような注意のみで、敷地および建物共用部分への「侵入」とすることは到底できない。

以上の諸点を考慮すれば、政治的ビラの投函のための被告人らの本件防衛庁官舎の敷地および建物共用部分への立入りは、共用部分に関する居住者の住居権を侵害したとは考えられず、したがって、敷地および建物共用部分についての「邸宅」への「侵入」とも考えられない。要するに、被告人らの行為には、住居侵入罪の犯罪構成要件になんら該当するところはないのである。したがって、刑法130条に基づく起訴に対しては無罪の判決がなされるべきである。


・「邸宅」と「住居」の差異
本事案の「住居」もしくは「邸宅」は「集合住宅」であろうか? 控訴審判決も確認している通り、本事案が争われた舞台たる自衛隊官舎は「陸上自衛隊東立川駐屯地業務隊長」「航空自衛隊第1補給処立川支処長が管理する」自衛隊宿舎であり、また、同宿舎の敷地は「隣接の土地又は道路と明確に区分され、道路との開口部を除いてはフェンス等で囲まれている」「住居である各号棟の各居室に付属し、主として居住者の利用に供されるために区画された場所」なのである。

ならば、囲繞地を「建造物」と認定した最高裁判決(最大判昭和25年9月2日、最判昭和51年3月4日)および「内部に社宅20数戸があり、門、垣、塀をめぐらして一般民家と区別された場所」を「邸宅」とした最高裁判決(最判昭和32年4月4日)、「人の住居の用に供せられる家屋に付随し、主として住居者の利用に供せられるように区画された場所」を「邸宅」とした大審院判決(大判昭和7年4月2日)を鑑みれば、本事案の「集合住宅」なるものの共用部分が(「住居」ではないにしても、)少なくとも「邸宅」であることは明らかである。そして、再度述べるが、起訴状ではこの宿舎を「住居」と表記されているのに裁判所がこの宿舎を「邸宅」と認定したことは同じ刑法130条の違反が争われた本事案では何の問題もないのである。

次に、「集合住宅における「禁止事項表示板等」の存在のみをもって、管理者ないし居住者の意思とする判決は見当」たらない、あるいは、「居住者の意思と切り離された管理者の意思の存在を認めることは疑問である」という『声明』の記述について検討する。

私にはこれは一般論としては正しいが、その領域を管理する自衛隊に敵対する内容のビラを、しかも、「居住者らからのビラ回収の指示及びビラ投函が禁止されていることの抗議等を受けながら」配布する行為はこの一般論では正当化できないものと思われる。まして、控訴審が認定した事実によれば、本事案を引き起こしたプロ市民に対応するために「立川宿舎敷地・建物の上記管理者らは、関係者以外が地域内に立ち入ることを禁止する旨などを記載した禁止事項表示板等を、道路からの入り口のわきのフェンスや、各号棟の各出入口に掲示」したことを考えればなおさらである。

例えば、トヨタの社宅が集まるある「邸宅」に「トヨタの悪辣な労務管理を糾弾しましょう。トヨタ社員と家族を守るホットライン」などのビラがトヨタのライバル会社によってポスティングされる事例を想起されたい。これは、寿司屋や鰻屋の出前の方の出入り、または、ものみの塔やモルモン教の布教の方の立ち入りとは異質の、組織に対する敵対行為であり、よって、その管理者の意思は「居住者の意思と切り離」された上で法的な保護を与えられたとしても他の一般的な立ち入り事例との均衡を失わないだろう。


・刑法130条の保護法益
「邸宅」と「住居」の違いは、しかし、(ソシュールの用語で喩えれば)犯罪構成要件の<視覚イメージ>に違いをもたらすことはありうる。実際、刑法130条の保護法益としては大東亜戦争前から、大きく、①平穏説、②居権説の両説が争われていることは周知のことであろう;即ち、(不動産の所有権や賃貸借権というその領域を支配できる法的な権利の有無とはとりあえず別にして、その領域における)平穏な生活や平穏な状態を保護法益と考えるか、それとも、「その領域への立ち入りを誰に認めるか」の決定権(自由権)を保護法益とするかの対立である。判例の取る立場は住居権説とされるが、いずれの説を採用した場合でも、「邸宅」に比べて「住居」の方により強い保護が与えられるべきことも(補助線としてプライバシー権や自己決定権を持ち出すまでもなく)大方の論者が認めていることだと思われる。

では、本事案は刑法130条が予定する「邸宅への侵入」という構成要件に該当しないだろうか。否である。先ず、『声明』が言及する井の頭線吉祥寺駅の事例:「私鉄の駅構内で、駅管理者の再三の退去要請を無視して、約20分にわたり、ビラの配布や拡声器での演説を繰り返した事案」は、元来そこへの立ち入りについて黙示の承認が認められる公共施設への立ち入りを扱ったものであり本事案とは無関係である。

蓋し、駅・デパート・区役所・銀行の窓口等々の公共領域については、そこに立入る/そこに居るに至ったことは構成要件に該当しないか少なくとも可罰的違法性は認めらにくいのだろうから、『声明』が掲げた吉祥寺駅事案ではそもそも刑法130条前段の「住居/建造物侵入」は問題にならずただ同条後段の「不退去罪」の成立だけが焦点になる事例である。

さて、判例が住居権説採用の旗幟を鮮明にした事例とされる最高裁判決:組合活動の一環としてビラ張り目的で郵便局に夜中に侵入した行為に「建造物侵入罪」の成立を認めた判決(最判昭和58年4月8日)はこう述べている。即ち、「刑法130条前段にいう「侵入シ」とは、他人の看守する建造物等に管理者の意思に反して立ち入ることをいうと解すべきであるから、管理者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、該建造物の性質、使用目的、管理状況、管理者の態度、立入りの目的などから見て、現に行われた立入り行為を管理者が容認していないと合理的に判断されるときは、他に犯罪の成立を阻却すべき事情が認められない以上、同条の罪の成立を免れないというべきである」、と。

上記の最高裁判決を素直に読めば、郵便局でさえそうなのであれば、それが「邸宅」にせよ刑法130条が保護する諸領域の中で最大限に尊重されるであろう「住居」と正に隣接する共有部分への立ち入りについては、「管理者が予め立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、現に行われた立入り行為を管理者が容認していないと合理的に判断される」事案では、その立入った行為は刑法130条が保護しようとしている「住居権」の侵害であり、畢竟、立川のプロ市民のビラ配りは刑法130条が定める住居侵入罪の構成要件の「侵入」であると解されるべきではなかろうか。まして、当該官舎の管理者は「関係者以外が地域内に立ち入ることを禁止する旨などを記載した禁止事項表示板等を、道路からの入り口のわきのフェンスや、各号棟の各出入口に掲示」していたのだから。

尚、『声明』は「ビラ配布中に、それを中止するように居住者から注意された被告人がいるが、その際、当該被告人は当該居住者の注意に平穏裡に従っており」と述べているが、これは「たしかに被告人は官舎に窃盗に入ったが、家人に注意され居直り強盗にならず財物を持って逃げました」と言っているに等しい言い訳である。何故ならば、居住者から注意された段階で既に被告人のプロ市民は刑法130条の保護法益を侵害していたからである。

ここで今度は、ある広域暴力団の組員の方々とそのご家族が住む「邸宅」に「私達は貴方のご家庭のみかたです。困ったことがあったら連絡ください。山口組ホットライン♪」などのビラが敵対する広域暴力団のロゴマーク入りでポスティングされる事例を想起されたい。このような事例では、「個々の居住者の意思をもって、敷地および建物共用部分への立入りに関する居住者の総意を代表していると考えることは難しい」などの呑気な議論を支持する者は少なかろう。

畢竟、先の昭和58年4月8日の最高裁判決を鑑みれば、その「邸宅」に誰の立ち入りを認めるかについて管理者の意思にせよ居住者の意思にせよ、(組織の利害と住民の不安や不愉快さについて)合理的に推測ができるのであれば充分なのである。而して、本事案は管理者・居住者の意思に反した(住居権を侵害した)侵入であったと言うべきであろう。

以上の諸点を考慮すれば、政治的ビラの投函のためのとはいえ、被告人らプロ市民の本件防衛庁官舎の敷地および建物共用部分への立入りは、共用部分に関する管理者と居住者の住居権を侵害したものに他ならず、したがって、敷地および建物共用部分についての「邸宅」への「侵入」である。要するに、被告人らの行為には、住居侵入罪の犯罪構成要件に完全に該当するものである。したがって、刑法130条に基づく起訴に対して有罪の判決が下されたのも当然と言うべきである。

<続く>


(2005年12月23日:yahoo版にアップロード)

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