首相の靖国参拝を巡る New York Times 大西東京支局長の教条主義

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New York Times (NYT)のMr. Norimitsu Onishi(大西哲光氏)の記事 "A War Shrine, for a Japan Seeking a Not Guilty Verdict"「戦争神社 ーー 無罪評決を求めるための日本ある神社」(2005年6月22日)を紹介します。大西さんの記事は、しばしば強い思い込みの上にご自分が勝手に作られたストリーを展開したものも少なくないと日頃から思っているけれど、この記事などはさしずめその典型と言えるでしょう。

大西氏がこのテクストに込められたコノテーションは「首相靖国参拝反対」であり「大東亜戦争を正当化する日本の右翼的な策動なるものへ警鐘を鳴らすこと」。そして、「中韓両国が靖国神社参拝に反対する正当な理由を持っているというのに、日本がその強気の姿勢を崩さない裏には、支那への警戒感をつのらせつつある(そして、韓国の情緒不安定な盧武鉉大統領への不信感を払拭できないでいる)米国の暗黙の了解があるのではないか」ということだと思います。

しかし、国際法的に見て東京裁判がかなりいかがわしい根拠しか持たなかったこと、首相の靖国神社参拝に中韓が容喙するのは紛うことなき内政干渉であることは自明であり、そして、サンフランシスコ平和条約の第11条を根拠にしては「大東亜戦争の歴史的評価なるものを日本は認めた」→「サンフランシスコ平和条約を破棄でもしない限り、その歴史認識に日本は拘束されている」などとは法学方法論や法概念論の観点からは誰も言えないことなのです。

これらのことを大西氏が踏まえたとすれば、この記事は随分トーンも結論も変わったものになったのではないかと思います。いずれにせよ、東京裁判とサンフランシスコ平和条約を巡るこれらの認識を踏まえる者からは、少なくとも、この記事がそのタイトルに示唆せしめた論点:「靖国神社は東京裁判が認定した歴史観にチャレンジするための装置」であるという論証に成功していないことは確実。よって、本来ならこれはコメントするに値する記事ではないのです。しかも、この記事はNYT の記事とはいえ、実は、日本に駐在する大西氏が、朝日新聞等の日本国内の反日メディアの情報をもとに、朝日新聞本社のビルにあるNYTの東京オフィスで(ニューヨークタイムズ東京支局:東京都中央区築地5丁目3-2 朝日新聞社本社ビル9階)書いた Made in Japan の記事なのですから、相手にするだけ時間の無駄というものでしょう。

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【Mr. NORIMITSU ONISHI 】

しかし、私は "A War Shrine, for a Japan Seeking a Not Guilty Verdict" を俎上に乗せた記事を書いている。なぜか。なぜ、このエントリー記事を書くことにしたのか。

それは、アオハタのブルーベリージャムじゃなかった日本共産党のしんぶん赤旗がこの記事を取り上げたことに象徴されているように(★)、日本発の妄想まみれの記事とはいえ、それが NYT の紙面に掲載された以上、ブーメランよろしく日本の反日勢力に「首相靖国参拝を見る欧米の冷ややかな目線」などと注釈をつけられ利用される事態は静観できるものではないと考えたからです。そうであれば批判するしかない、と。ふりかかる火の粉は掃わねばならないだろうから、と。以下、NYTの著作権を侵害しないよう全体の三分の2程度を引用してコメントと翻訳を行います。


★しんぶん赤旗の紹介記事:2005年6月24日・25日
「首相の靖国参拝問題――米紙も「無罪判決をもとめる戦争神社」と批判」
「「日本の無罪判決をもとめる戦争神社」という題で、第四面の半ページをつかって、靖国神社と首相の参拝を批判する論説を掲載しました。この論説では、中国や韓国への侵略や米国への攻撃を正当化する靖国神社の歴史観は、「アジアやアメリカのほとんどの人々が受け入れない」と手きびしく批判しています」
「ニューヨーク・タイムズのこの記事は、パリで発行され、世界各国で印刷されている国際的英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューン二十三日付にも掲載されました。こうして、アメリカをはじめ、世界のマスメディアが、靖国史観への批判を大きく取り上げたのです」、と。


尚、本記事とその<ブーメラン効果>については下記のブログを参照いただきたい。

・不可視型探照灯
 http://erict.blog5.fc2.com/blog-entry-94.html


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A War Shrine, for a Japan Seeking
a Not Guilty Verdict 


By NORIMITSU ONISHI (NYT)
Published: June 22, 2005

One recent rainy morning, a couple of dozen vehicles belonging to the Patriotic Youth League and other Japanese right-wing groups gathered inside the grounds of Yasukuni Shrine, the Shinto memorial to Japan's war dead. ''Revere the Emperor,'' read a slogan on one truck. Others alluded to enemies unnamed: ''Love and Protect our Motherland'' and ''Kill one, one at a time.''

At 12:30 p.m., the caravan spilled out onto Tokyo's streets, destination unclear. But the targets are usually the same: the Chinese Embassy, the liberal media, anybody daring to challenge the argument that Japan's wars were legitimate and that their leaders were not criminals. Yasukuni Shrine is the symbolic center of Japan's efforts to revise its militaristic past, and lies at the heart of worsening relations between Japan and its neighbors. Not only right-wing extremists, but now also mainstream politicians and the news media are more openly arguing that the 14 war criminals enshrined in Yasukuni were not guilty -- and, because they were not, Japan's wars could not have been that bad.


◆コメント
第1パラグラフ。おどろおどろしい右翼の街宣車を取り上げた冒頭部分からすでに靖国神社理解のパラダイムの硬直性が炸裂している。

ある雨の朝、右翼団体に所属するメンバーが1ダースばかりの自動車で靖国神社に集合すること。そして、彼等が靖国神社の境内で「天皇崇敬」のスローガンを読み上げ、誰とは言わないが<意中の敵>の存在をほのめかしつつ、「愛国・護国」、「一人一殺」を唱えたことが、首相の靖国参拝の是非や中韓両国の不当な内政干渉の正当性と何の関係があるというのか? 彼等が「行き先が中国大使館なのかリベラル派のマスメディア、あるいは、「日本の戦争は正当であり、戦争を指導した国家指導者は犯罪者ではない」という議論にあえて挑戦しているような論者の所なのかは不明ながらも、昼12時半に東京の街に散っていったこと」とこの記事の主題「A War Shrine, for a Japan Seeking a Not Guilty Verdict」(無罪評決を求めるための日本の戦争神社)とどんな関係があるというのか? 

畢竟、第5センテンス "Yasukuni Shrine is the symbolic center of Japan's efforts・・・"「靖国神社は日本がその過去の軍国主義にまつわる歴史認識を改めようとする企ての中心的な象徴であり、また、日本とその近隣諸国との間の関係を悪化させている原因の核心」という認識とその直前の4センテンス"But the targets are usually the same・・・"とは何の関係もないだろう。実際、すぐ後の第6センテンス"Not only right-wing extremists, but now also mainstream politicians・・・" では、大西氏ご自身が「右翼過激派のみならず、政界の主流にある政治家や報道メディアさえも、靖国神社に祀られている14名の所謂「戦犯」は有罪ではなかった。彼等が戦犯ではないのだから、日本の戦争も悪ではありえないという主張を広く展開している」と書かれていることでも明らかなように、冒頭にスケッチされた<右翼>の活動はそれ以下の(全体1,188語中の)1,000語の記事とは何の関係もない。

簡単な話だ。おどろおどろしく右翼の街宣車を取り上げた冒頭の記述によって、大西氏はアメリカの読者に「靖国神社は非合理的でテロを肯定する右翼の総本山であり、首相の靖国参拝を支持しているのは日本の中でもかなり特殊で危ない勢力なんですよ」というバイアスを与えている。けれども、少なくとも日本国民の過半が靖国神社を大切にしたいと思っている現状を(そして、そのような広範な支持があって始めて靖国神社が靖国神社として存立していることを)踏まえるならば、この冒頭の描写はそれが過失とするならば杜撰であり故意に書かれたとすればそれはアメリカの読者と日本国民を共に愚弄する姑息で詐欺まがいの文章というべきであろう。

NYTの記者ともあろう者が(笑)このような杜撰な記事を書いてしまう背景には何があるのか。おそらくそこには、「右翼はどう批判しても文句は言えない」とか「戦争責任を認めない靖国神社やそれを支持する勢力をどう批判しても許される」、「彼等(右翼や靖国神社)が間違っているのは明らかであり、それを批判する根拠などいちいち提示する必要はない」という思い込みがあるのかもしれない。

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◆翻訳 de 紹介

In a face-to-face meeting on June 20, for example, Prime Minister Junichiro Koizumi steadfastly resisted the entreaties of President Roh Moo Hyun of South Korea that he stop visiting the shrine and build an alternate one that would be more acceptable to China and the Koreas, all of them victims of a brutal Japanese colonization.

While the Japanese have received the bulk of the criticism for the shrine, they are not, however, the only ones to have manipulated the meaning of Yasukuni and its war criminals. So have the Chinese, the Taiwanese and the Americans, each according to their own interests.


「例えば、6月20日に行われた韓国大統領との差しの会談において小泉首相は、靖国神社参拝を止めて欲しい、そして、日本の残虐な植民地支配の犠牲者たる支那と南北両朝鮮がより受け入れやすい(戦死者慰霊のための)代替施設を作って欲しいという脳不足大統領からの要請を断固として受け入れなかった」、「諸外国から寄せられる批判の大部分を靖国神社に対する批判として日本人は処理しているけれど、しかし、日本人は靖国神社と所謂「戦犯」の意味を巧妙に操作している唯一の国民ではない。支那も台湾もアメリカも、彼等の個々の利害に基づいて靖国神社と所謂「戦犯」の意味を狡猾に操作している」



During America's six-year occupation of Japan after World War II, Americans spent the first half democratizing the country and prosecuting war criminals. In the second half, with Communists controlling China and the cold war bearing down, Washington reversed course: wartime leaders were rehabilitated overnight in an effort to make Japan strong. Some Class A war criminal suspects, after barely escaping the noose, became postwar Japan's political and business leaders; one, Nobusuke Kishi, even became prime minister.

The mixed messages from America -- as well as the highly politicized Tokyo Trials that tried the Japanese leaders but avoided mentioning Emperor Hirohito, whom America had decided not to depose -- laid the seeds of confusion here. They also left open the door for the Japanese to argue that the overall verdict -- that Japan had led a war of aggression -- was also false.


「第二次世界大戦後の6年にも及ぶ占領期、その占領期間の最初の半分をアメリカは日本の民主化と所謂「戦犯」の訴追にあてた。けれども、共産主義支那の誕生と冷戦の開始を受けた占領期後半、ワシントンはその占領方針を変更した。ここにおいて、日本を強化すべく大東亜戦争時の政治指導者の社会復帰があわただしくとり行われた。絞首刑をすんでの所で免れていた所謂「A級戦犯」の中には戦後の日本の政界や実業界のリーダーになった者も少なくなく、その中の一人、岸信介は首相にさえなったのである」

「アメリカの相反する内容を含むメッセージは、アメリカが退位させない方針を固めていた昭和天皇の訴追を避けた上で行われた東京裁判での日本の政治指導者の審理とあいまって、戦争責任追及に混乱の種を蒔いた。それはまた日本人が(東京裁判の)評決を総合的にとらえ返して、日本は侵略戦争を行ったという評決の全体的な構図自体が実は違いだったと主張する余地を残したのだ」

★KABU註:
 国際法から言えば、日本は「侵略戦争」など毫も行っていない。




''It was a war of self-defense,'' Yuko Tojo, the granddaughter of the wartime prime minister who was executed as a Class A war criminal and is enshrined in Yasukuni, said in a telephone interview. ''China claims it is unforgivable that the head of state visits Yasukuni, where those responsible for causing trouble by conducting a war of aggression are enshrined. But if we agree with China, it would mean that we recognize it as a war of aggression. So we can't.''

Visits to Yasukuni have long been regarded as coded endorsements of conservative nationalist views like hers.・・・


「「大東亜戦争は自衛の戦争だったのです」;所謂「A級戦犯」の一人として処刑され、現在、靖国神社に英霊として祀られている戦時下の宰相の孫娘、東條由布子氏は電話でのインタヴューでそう答えられた。「支那は国の最高指導者が靖国神社に参拝することは容認できないと主張しています。侵略戦争がもたらした災難に指導者としての責任を負うべき者を祀っているような靖国神社に時の日本の首相が参拝することなど断じて認められないと。しかし、もしこのような支那の主張を日本が承認するなら、それは先の大戦を我々が侵略戦争と認めることになるのではないでしょうか。よって、我々は断じて支那の要求に屈するわけにはいかないのです」、と東條由布子氏は語られた」、そして「靖国神社参拝は、東條由布子さんのような保守的な民族主義者のものの見方を支持推奨する典型的な行動であると長らく考えられてきている」(中略)

★KABU註:
東條由布子さんの主張は国際法の通説を踏まえた極めて穏当なものであり、それを「保守的な民族主義者」と規定する方が戦後民主主義の妄想で目が曇っていると言うべきである。


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Yasukuni's war museum argues that America forced Japan into attacking Pearl Harbor as a way of shaking off the Depression, saying that ''the U.S. economy made a complete recovery once the Americans entered the war.'' A video shown at the museum, called ''We Won't Forget,'' describes America's postwar occupation of Japan as ''pitiless.'' But the museum makes no mention of Japan's own occupation of Asia. As for the Rape of Nanjing, the museum blames the Chinese commander and adds that, thanks to Japanese actions, ''inside the city, residents were once again able to live their lives in peace.''

In a written statement, Yasukuni officials said, ''The exhibition is not based on any special historical viewpoint, but is based on clear evidence.''

Yasukuni's view of history is one that few Asians or Americans would accept. But like Japanese politicians, foreigners also appear to recognize the shrine's political value.


「靖国神社の資料館(遊就館)は、大恐慌から脱出するためにアメリカはわざと日本に真珠湾を襲しめた。それであればこそ、アメリカ経済は戦争にアメリカが突入するやいなや完全に回復、と主張している。資料館で上映されているビデオ『我々は決して忘れない』は大東亜戦争後のアメリカによる占領政策を「無慈悲なもの」として描いている。しかし、日本によるアジアの占領については資料館は口を閉ざしている。所謂「南京大虐殺」に関して、資料館は中国人の兵士を非難した上で「日本の作戦行動のお蔭で、南京の市内において住民は平和的で秩序ある生活を取り戻すことができた」という説明を付け加えている」

「靖国神社の当局者はその公式な文書の中で、「(資料館の)展示は何か特定の歴史観に基盤を置くものではなく、誰しも否定できない所の明確な証拠に基づいています」と述べている」、 「靖国神社のこの歴史認識を容認する者はアジアにもアメリカにもほとんどいないだろうけれど、さりとて、日本の政治家ばかりでなく外国人の多くもまた靖国神社の政治的価値を認識しているように思われる」

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・・・While the Chinese and the South Koreans have legitimate reasons to oppose the shrine, they have been accused of using it to shore up domestic support by appealing to nationalist sentiments.

・・・American officials raise an eyebrow at Japanese comparisons of Yasukuni to Arlington National Cemetery. But they tend to defend, albeit somewhat uncomfortably, Japanese visits to Yasukuni, or maintain a studied silence. The cold war may be over, but China's rise alarms America just as much as did the rise of Communism in the 1940's. So better a strong, remilitarized Japan, no matter what the Japanese say about Yasukuni or war criminals.


(前略)「支那も韓国も靖国神社に反対する正当な根拠を持っているにもかかわらず、民族主義的な感情に訴えて国内政治体制を安定させるために靖国カードを使っていると非難されている」

★KABU註:
だって事実でしょうが、それがなにか?


(前略)「靖国神社と国立アーリントン墓地を日本人が比定するたびにアメリカの当局者は眉をひそめている。しかし、それがいかに不愉快であろうとも、彼等は日本の靖国参拝を擁護するか、あえて沈黙を守ろうとする。冷戦は多分終わったのだろうが、支那の勃興はちょうど1940年代に共産主義が勃興した時と同じような危機感をアメリカにつのらせているからだ。(その現下の東アジアの状況下では)日本が靖国神社や所謂「戦犯」について何を言おうとも、再軍備した強い日本という事態の方がアメリカにとっては望ましいことだからである」


(2005年7月3日:yahoo版にアップロード)

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