NYT社説紹介★首相の靖国参拝は「無意味で無益な挑発」だと?

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10月17日に行われた小泉首相の靖国神社参拝は近隣諸国、就中、支那に対する「無意味で無益な挑発」(Pointless Provocation in Tokyo)だ。米紙 The New York Times がそう述べた。2005年10月18日付の同紙社説(Editorial)。彼の地において、The New York Times (NYT) はカルト的なリベラル系新聞として有名であり、米国のサイレンとマジョリティーたる保守派からは真面目に相手にされていない(実際、批判どころか読まれさえしません)。それは、米国東海岸のインテリリベラルグループ内の<学級新聞>といったところでしょうか、つまり、これらの点でそれはアメリカの朝日新聞とも呼ばれるべき新聞と言えると思います。

ただ、NYT の名誉のために直ちに補足しようと思うのですが、もちろんNYTの記事は朝日新聞とは違って事実の改竄や虚報ばかりではない。また、記事の誤報性が明らかになった場合、朝日新聞と違ってNYTは速やかに読者と取材対象/批判対象に謝罪し責任者は責任を取る。その意味でNYTは世界の極普通の新聞の一つなのです。しかし、日本の戦争責任/戦後責任へのNYTの理解、あるいは、19世紀後半から大東亜戦争終結までの帝国主義の時代、そして、大東亜戦争後のアジアの政治外交史に関するNYTの知識が極めてプアーでシャビーであることは朝日新聞と同等だと言わざるをえない。

そして残念ながら(というか予想通りではあるのですけれど)この10月18日の社説も酷いものだった。以下、社説ということもあり(出典を明記した上で)、このブログ読者の参考になればと思い全文紹介します。尚、この社説への評価は読者諸賢各位が各自で行うべきことでしょうが、ここで二つだけコメントして置きます。

第一、日本国内の戦後民主主義流の絶対平和主義を信奉する勢力と異なり、NYTの社説子も、5度繰り返された首相の靖国神社参拝に関わらず、「今日の日本が帝国主義的な対外征服に再び乗り出すなどと真面目に心配している人はほとんどいない」と認識していること。この点で、「イラクに陸上自衛隊が行けば日本は戦争できる国になる」「教育基本法が改正されれば戦前の軍国主義が復活する」等々を真顔で語るような、朝日新聞に代表される日本の戦後民主主義勢力よりもNYTの方が格段にまともということ。

第二、他国・他民族に対する残虐行為について帝国主義時代の欧米列強の所業を棚に上げて、米国の新聞から日本が批判される筋合いはあまりないのではないかということ。これは、「他の帝国主義諸国もやっていたではないか(だから、日本の許されるはずだ)」という<悪戯した子供の言い訳>ではないのです。土台、国際関係や国際政治に「帝国主義=悪」などという善悪の判断を持ち込むこと自体が<書生論>の域を出ないということなのです。

また、日本の<国家神道>は近代国家日本の社会統合のイデオロギーが神道的の言語で綴られたものでもあり、それは百歩譲っても、西洋のそれら(=近代国家の社会統合のイデオロギー)がキリスト教やカルト的な人権思想を基盤とすることと五十歩百歩である。ならば、西欧政治思想の観点から<国家神道>がそう簡単に否定されるわけではないだろうということです。いずれにせよ、「今こそ日本は20世紀の自国の歴史に正面から対面すべきである」という指摘は正しいでしょう。NYTとおそらく現実具体的な方向は少し違うのでしょうが私もそう考えています。以下、紹介・翻訳。

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◆Pointless Provocation in Tokyo;「無意味な東京の挑発」
 The New York Times, Editorial, October 18, 2005


Fresh from an election that showcased him as a modernizing reformer, Prime Minister Junichiro Koizumi of Japan has now made a point of publicly embracing the worst traditions of Japanese militarism. Yesterday he made a nationally televised visit to a memorial in central Tokyo called the Yasukuni Shrine. But Yasukuni is not merely a memorial to Japan's 2.5 million war dead. The shrine and its accompanying museum promote an unapologetic view of Japan's atrocity-scarred rampages through Korea, much of China and Southeast Asia during the first few decades of the 20th century. Among those memorialized and worshiped as deities in an annual festival beginning this week are 14 Class A war criminals who were tried, convicted and executed.

近代化を推進する改革者としての自分をアピールした選挙が終わったばかりだというのに、日本の小泉純一郎首相はまたしても日本の軍国主義の最も悪しき伝統を大っぴらに顕彰する挙に出た。彼は昨日(10月17日)、全国にテレビ放映される中、東京の中心にある追悼施設に(それは靖国神社と呼ばれるのだけれども、)参拝した。しかし、靖国神社は単に250万人の日本の戦死者の追悼施設ではない。

この神社と神社に併設されている博物館は、20世紀の最初の数十年の間に朝鮮全土と大部分の支那および東南アジアに残虐行為の爪痕を残しながら展開された日本の侵略行為に対して謝罪する必要を認めないとする史観を推奨し推進するものである。今週始まった同神社の例大祭において追悼され英霊として祀られる御霊の中には、裁判に掛けられ有罪を宣告され刑を執行された14人の所謂「A級戦犯」が含まれている。

★註:ここはお祀りされている英霊を指しているのだから、「14人」ではなく「14柱」と記すべきであるが原文の流れに従った。

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The shrine visit is a calculated affront to the descendants of those victimized by Japanese war crimes, as the leaders of China, Taiwan, South Korea and Singapore quickly made clear. Mr. Koizumi clearly knew what he was doing. He has now visited the shrine in each of the last four years, brushing aside repeated protests by Asian diplomats and, this time, an adverse judgment from a Japanese court.

首相の靖国参拝は日本の所謂戦犯の所業の犠牲となった(アジアの人々の)子孫に対する確信犯的侮辱行為である。それは、支那・台湾・韓国およびシンガポールの指導者達が素早く侮辱に対する抗議を発したことでも明らかだ。そして、小泉首相も彼が何をしようとしているのかを明確に意識していた。その上で小泉首相はこの4年間毎年1回、アジア各国の外交筋から繰り返される抗議を払いのけつつ、今回は日本の裁判所が出した参拝に反対する判決を歯牙にもかけず靖国神社に参拝してきた。

★註:"an adverse judgment from a Japanese court"はこの社説筆者の誤解である。先月の大阪高裁判決も昨年4月の福岡地裁判決も、「首相の靖国神社参拝」そのものの憲法的性質/憲法的状態ついては法的には何の判断も下してはいないからである。


No one realistically worries about today's Japan re-embarking on the road of imperial conquest. But Japan, Asia's richest, most economically powerful and technologically advanced nation, is shedding some of the military and foreign policy restraints it has observed for the past 60 years.

今日の日本が帝国主義的な対外征服に再び乗り出すなどと真面目に心配している人はほとんどいない。しかし、アジアでも最も富んでおり最も経済力を持ち、かつ、最先端のテクノロジーを誇る国家である日本は、それ自身がこの60年間遵奉し続けてきた軍事的と外交的な自己抑制的態度を脱ぎ捨てようとしつつある。


This is exactly the wrong time to be stirring up nightmare memories among the neighbors. Such provocations seem particularly gratuitous in an era that has seen an economically booming China become Japan's most critical economic partner and its biggest geopolitical challenge.

火かき棒を使って炎を起こすことに似た、近隣諸国の中に伏在する悪夢のような記憶を呼び戻すには現在はいかにも時期が悪い。このような(首相の靖国参拝という)挑発は特に、経済ブームの途上にある支那が日本の必須かつ枢要なる経済活動の相手国となり、また、地政学的に見た場合には日本の挑戦者として立ち表れてきたこの時代においては何の意味もない無益なことのように思われる。


Mr. Koizumi's shrine visits draw praise from the right-wing nationalists who form a significant component of his Liberal Democratic Party. Instead of appeasing this group, Mr. Koizumi needs to face them down, just as he successfully faced down the party reactionaries who opposed his postal privatization plan. It is time for Japan to face up to its history in the 20th century so that it can move honorably into the 21st.

小泉首相が靖国神社に参拝するたびに、彼率いる自民党で多数を占める右翼-民族主義者は喝采を叫んできた。しかし、小泉首相はこれらのグループを宥めるのではなく(首相が唱導した郵政民営化の法案に反対した党内の反動保守勢力をそうすることに成功したように、)彼等を威圧させ屈服させる必要がある。日本が尊敬を受けつつ21世紀に移行するためには今こそ日本は20世紀の自国の歴史に正面から対面すべきである。



(2005年10月19日:yahoo版にアップロード)

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