亀田家を僕が嫌いな理由

kame2



プロボクシングの亀田家が嫌われている理由? 簡単だ、彼等がやっているのはボクシングではないから。今回の「内藤 Vs 亀2」戦。10月11日のWBC世界フライ級タイトルマッチ、内藤大助対亀田大毅戦ではっきりした。亀2こと亀田大毅選手のプロレス紛いの投げ技や両者がリングのキャンバスに倒れこんでいる時の亀2のヘッドロック攻撃等々、ボクシングのルールの許容範囲を遥かに逸脱する反則の嵐を見て納得した。

「ルール違反」を咎めるのは奇麗ごとすぎる? ボクサーに「聖人君子」性を求めるのは愚の骨頂? 否です。私は別に、ボクシングに「武道の精神性」なるものを求めているわけではない。もちろん、ボクシングにせよ将棋にせよ、ソープにせよAVにせよ、そこに精神鍛錬と人格向上の<契機>を見いだす人がいてもいいだろう。けれども、逆に、空手にせよボクシングにせよエンターテーメント・ビジネスやサーヴィス業と割り切って何が悪いと思う。つまり、派手な立ち居振る舞いや非常識な言動で世間の耳目を集め、big mouth でもって big moneyを稼ぐボクシング一家がいたっていいじゃないか、というくらいの世間知は持ち合わせているつもりだ。

では、内藤戦というか昨年の亀1の世界タイトル戦以来、亀田家はなぜ嫌われているのか。他の人の心の裡はわからないけれど、私が嫌いな理由が「内藤 Vs 亀2」を見て自分ではっきりわかった。それは、親亀こと亀田史郎氏、亀1こと亀田興毅選手を含む亀田家にとって「ボクシング」なんかどうでもいいことであり、「ボクシング」より大切なものが(それこそ、亀2や親亀・亀1の心理はわからないけれど。おそらく、勝敗やビジネスや面子なのだろうか。その大切なものが)危うくなるようなら当然、ボクシングのルールなど遵守してなんぞおられへんがな、というのが見え見えになったからだ。要は、

亀田家はボクシングをしているのではなく
ボクシングより大切な something のために
ボクシングのもの真似をしているだけではないのか。


そう私は感じたのだ。なに? そんな、プロ野球の選手もJリーガーも、ソープ嬢やAV嬢だって、好きでそのプレーをしているのではなく、その生業より大切な something (それは大部分の場合には、 moneyであり money に象徴される快楽、あるいは、自分と家族の生活の維持向上)のためにプレーを文字通り<演じている>にすぎないではないか、ですと? もちろん、そうです。その意味では(「ヒラリーマン」から衆議院議員になった小泉チルドレンの一人、杉村太蔵氏を想起するまでもなく)「サラリーマン」にせよ「寿司職人」にせよ、すべての人はその生業より大切な somethingのために<自分の職業>を演じているにすぎない。

けれど、どんな職業に従事している人でも、正に、その職業に従事しているその瞬間に、「わしはこの仕事、しとうてしとるんちゃうんねん」と公言することはないし、そこでそう公言するような輩は、(お客や納税者から)moneyをいただく資格のない「アマチュア」か「世間知らずの子供」のいずれか、あるいはその両方だろう。これは、大工見習いから割烹の花板、サラリーマンから国会議員、ソープ嬢からAV嬢、プロ野球選手からJリーガー、大相撲の序の口から横綱に至まですべての職業に当てはまることだと思う。而して、

亀2が「プロボクサー」ではない単なる「ボクシングが得意な子供」にすぎないこと。そして、親亀も亀1も、ことこの「プロ」と「アマ」、「大人」と「子供」を分つ基準については亀2と同じ「アマの餓鬼」、そう、「天の邪鬼」ではなく「素人の子供さん」である。このことが今回の「内藤 Vs 亀2」戦ではっきりした。そのように私には感じられた。蓋し、リング上で致命的なルール違反を繰り返しておいて、誰に謝罪するのか/何について謝罪するのかさえ不明確な、見当はずれの<謝罪コメント>しか出せないということは、彼等がボクシングの世界に住んでいるのではなく、ボクシングを利用する方に遥かに大きな関心のある人々であることの証左に他ならないだろうから。

ならば、話しは簡単。単なる金儲けの道具や機会として、ボクシングの真似をしているような輩にボクシングを語って欲しくないということ。そんな、自分都合のことしか考えられず、お客が見たいのはボクシングであるというのに、自分達の都合で勝手にボクシングでない something を世界タイトル戦のリングでやりだす「単なるお子様一家」を公共の電波に乗せるなよTBS、ということだ。

もう一度、書いておく。私は big money をつかむためにリングに上がるボクサーがいてもいいと思う。また、big mouth でもって big money を手にするボクサーがいてもいい。それは人生というか浮き世の<スパイ>みたいなものだろう。けれど、それはボクシングの「プロ」や「大人」についてのみ言えること。ボクシングの試合中に(しかも、TVで全国放送されている世界戦の試合中に!)ボクシングを見せることより、moneyか面子か知らないけれど、ボクシング以外のsomethingにしか関心がないことをあからさまにする餓鬼やその餓鬼の親餓鬼にはうんざりという他ない。そして、ボクシングの試合と銘打ちながらボクシングの真似事を全国放送したTBSに対してもこれと同じことが言えるだろう。


畢竟、多少の反則はボクシングの伎倆の一部分。プロレスに至っては反則はプロレスという文化の不可分なる重要部分(the essential part of it)。その通り、アメリカには「野球と政治では法に触れない限りあらゆる行為が許される」という箴言があるらしいけれど、蓋し、多少の反則やずる賢いプレーもありであってこそ、正当なプレーや正々堂々たる勝利の価値は一段と高まるというものだ。けどね、往年のプロレスのヒール(悪役)、タイガージェットシンやアブドラザ・ブッチャーがホークや模造サーベルではなく、本物の「日本刀」や「ピストル」を持ってリングに上がったとしたらそれは最早「プロレス」ではなくなってしまう。

たかだか、亀2の投げ技やヘッドロックに大仰なと言うなかれ。プロボクサーは殴り合いの専門家であり、まして世界チャンピオンはボクシングに関しては鬼のように強い。けれど、ボクサー体は精密機械と同じなのだ。内藤チャンピオンが最後まで余裕で戦いきったし、判定も当然の判定で終わったからいいようなものの、もし、亀2の投げ技でチャンピオンの肋骨にヒビでも入ったらどうしたね。

ことほど左様に、ボクシングを街の腕自慢による街頭格闘(Street Fight)と区別するものはボクシングのルールである。そして、そのルールを本質的に逸脱している点ではプロセスの投げ技も日本刀の持込みもなんらかわらない。日本刀の持込みが銃刀法違反であり殺人未遂罪なり殺人予備罪という法律違反であるのに対して、プロレスの投げ技はそうではない(その違法性が大きい場合、理論的には「社会的相当性」や「被害者の同意」にもかかわらず「傷害罪」の成立する可能性もゼロではないけれど)。しかし、日本刀もプロレス紛いの投げ技も「ボクシングの試合」を「ボクシング以外の something」に変える力を持つ点ではなんら変わらないからである。

つまり、「内藤 Vs 亀2」戦を現地にせよTVにせよ観戦した我々は、(1)ボクシングに似たsomethingをボクシングと偽って見せられたのであり、それは、(2)ボクシングの試合の最中に「自分はボクシングには興味も関心もあらへんねん」と言い放つ、アマの餓鬼のシャビーなパフォーマンスにつき合わさせられたのだ。

これまた再度記す。ボクシングをボクシング足らしめるのはボクシングのルールであり、(カンニングしてテストで100点とっても「つまらない」のと同様)そのルールを遵守するプレーを通して、優劣と勝敗を競うからこそボクシングは見る者をして感動させるのではなかろうか。而して、レフリーに見えない所で行う反則の艶っぽさなどとは無縁の、満座の中でプロレス紛いの投げ技を繰り返す行為は感動も呼ぶことはないだろうし、興ざめである。なにより、そのようなものはボクシングでもない。


おそらく、亀田家のお子様達は、ボクシングのルールに従うこと獲得保持される(ボクシングのコミュニティーの一員であることの)プライドやアイデンティティーとは無縁の人達なのかもしれない。マスコミ報道によれば、最初に目をかけてくれた大阪のジムを金銭問題で離縁され、今度また(良きにつけ悪きにつけ、この間、苦楽を共にしてきた)協栄ジムからの移籍を水面下で親亀が画策していたのが発覚し、協栄ジムの会長を激怒させたという。もちろん、親亀は「移籍を画策した事実ない」と言っているらしいけれど、「李下に冠りを正し倒してきた」亀田家の日頃の行いから(この報道が事実にせよ誤報にせよ)、親亀の抗弁を信じる人は少ないだろう。

このような亀田家のビーヘービアを見聞きするにつけ、彼等はボクシングの世界のエイリアンのように思われてくる。蓋し、エイリアンとは客観的にも主観的にもそのコミュニティーのメンバーではなく、また、メンバーであることにプライドもアイデンティティーも感じない人々のことであれば、この「亀田一家=ボクシング界のエイリアン」説も満更暴論ではないのかもしれない。私にはそう思われる。


尚、ルールがボクシングをしてボクシングたらしめるということ。ルールを守れない心性はルールによって始めて成立するゲームを楽しめないだろうし、そのプレーは観衆に感動を与えることもありえないということ。そして、ルールを守れない者はそのゲーム文化とゲームの世界のエイリアンである。これら本稿を貫く私の認識と主張については、ミラーブログ海馬之玄関FC2版に加筆した上でアップロードした次の拙稿を併せてご一読いただければわかりやすいと思います。17歳の高校生の素敵な投書を俎上に乗せたもの。亀田一家とTBSの下らなさに辟易している向きには(月並みな言い方ですが)「一服の清涼剤」になるかもしれません。

「法哲学」の核心を穿つ17歳の高校生の投書 


(2007年10月22日:yahoo版にアップロード)

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内藤大助 2007/10/23

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