「台湾=国家」の外相発言で中国を援護射撃する朝日新聞

chinatenan
【Beijing, June 1989】

今日、平成18年3月11日の朝日新聞社説「日中関係 これでは子供のけんかだ」は久々のヒットだと思った。最近、朝日の社説が元気がないと感じていた所なので、「ファン」としては堪えられない。流石、朝日新聞、ファンの期待を裏切らなかった。その、論理の支離滅裂さ、倒錯した状況認識、そして、ほとんど朝日歌壇と見分けがつかない文学的で空疎な言辞と修辞の多用は、朝日社説完全復活もそう遠くはないものとファンに感じさせる。その社説を引用しておく。

(前略)外相は国会答弁で、台湾について「民主主義が成熟し、経済面でも自由主義を信奉する法治国家」であり、「日本と価値観を共有する国」と述べた。実態はそれに近いだろう。台湾では96年の総統選以来、直接選挙で政権トップが選ばれ、自由経済も栄えている。だが、ことが外交となると、何という名で呼ぶかは決定的な意味を持つ。

72年の日中国交正常化で日本は台湾(中華民国)と断交し、外交の相手として中華人民共和国を選んだ。(中略)そのときの日中共同声明で、日本は次のような約束をしている。

中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。台湾が中華人民共和国の不可分の領土であるとする同国政府の立場を理解し、尊重する。

この「ひとつの中国」路線に基づいて、以来、日本政府は台湾を「国」とは呼んではいない。それは、世界の多くの国も同様だ。「国」発言は先月、福岡市での講演でも飛び出した。中国は今回、「共同声明に違反する発言だ」と批判した。日本外交の基本政策をもてあそぶかのような外相の姿勢は著しく思慮に欠けたものだ。(中略)

折しも、中国の李肇星外相が他国の政府当局者の言葉を引く形で、小泉首相の行動を「愚かで不道徳」と言い、安倍官房長官が不快感を表明した。日本側が在京の中国大使を呼ぼうとしたところ「多忙」を理由に断られ、電話で抗議を伝えざるを得なかったという。

中国外務省は北京で、日本側の不快感表明にさらに反論した。なんと不毛な応酬だろうか。こんな子供のけんかのようなことが続くのでは、外交と呼ぶにはほど遠い。両政府とも早く頭を冷やして、大人の対応を取り戻してもらいたい。



◆認識の倒錯
この社説のどこが論理の破綻であり、どこに状況認識の倒錯があり、そして、どの言葉が指示対象を欠く空疎な言辞なのか? 簡単である。

麻生外相は国際関係論や政治社会学的な話として台湾を「民主主義が成熟し、経済面でも自由主義を信奉する法治国家」「日本と価値観を共有する国」と表現している。社説が言うように「ことが外交となると、何という名で呼ぶかは決定的な意味を持つ」というのは正しいだろうが、麻生外相は、別に、国連総会の出席国の例として台湾を挙げたのでもなく、また、日中共同声明の解釈変更を論じているわけでもない。

ならば、たとえその発言の主が外相であれ首相であれ、そのような政治学的や社会学的な議論の中でどの地域を「国」と呼ぼうがその「国」の定義が明確である限り誰からも - ということは、支那からもその日本における代理人たる朝日新聞からも - とやかく言われる筋合いは全くない。

実際、例えば、竹内啓一『データブック世界各国地理 第3版』(岩波書店・2004年9月)でも台湾は「国」として扱われており、世界の多くのData on Countries of Worldでも同様である(参考↓)。そして、2006年3月10日現在、国際法の部面でも支那の執拗な嫌がらせに係わらず20数カ国の「国」が台湾を「独立国」として承認し国交を維持している。

http://www.infoplease.com/countries.html

ドイツ国家学の泰斗イェリネックによれば、「国家とは主権と国民と領土を持つ組織」である。中学校でも習う基礎的な - しかし、実は奥の深い - 国家の定義である。また、20世紀最高の法学者の一人ケルゼンは、「国家とは法体系であり、法体系とは国家である」という法国家同一説を唱えた。すなわち、ケルゼンによれば、他の法体系に組み込まれない独自性をもつ最高独立の法体系が国家に他ならない。

まさか、いくら朝日新聞の社説子でもこれらの定義を知らなかったはずはないだろう。そして、イェリネックの定義にせよケルゼンの定義にせよ、あるいは、マルクスやレーニンの定義にせよ、ラスキの多元的国家論からも現代分析法学の慣習と重層的な法規範のシステムとしての国家のイメージからも、政治学的や社会学的に観察された場合、台湾が紛うことなく「国」であり「国家」であることは誰の目にも明らかなことである。

故意か過失か知らないけれど、朝日新聞の社説は麻生外相の「国」発言がなされた文脈を見落としている。而して、これがすなわち状況認識の倒錯である。


◆論理の破綻&文学的言辞
支那が、しかし、政治社会学的や国際経済学的等々のどのよう議論の文脈であれ、日本の政治指導者が台湾を「国」と呼ぶのを批判すること自体は支那の勝手であろう。実際、支那 - および韓国の盧武鉉大統領 -は、箸の上げ下ろしならぬ他国の指導者の言葉使いにまで容喙できる権限を持っていると本気で信じている節もある。

これこそ言葉の正確な意味での「中華思想」と言うのだろうけれど、その中華思想が21世紀の国際関係の中で通用すると考えている中韓朝の特定アジア諸国に対して、我々はそれが実害を及ぼさない限り嗤っていればいいと思う。正に、子供相手に大人が本気になるのは大人気ないことだろうから。

さて、この社説が呈している論理の破綻はここに端を発している。蓋し、子供が喧嘩を売ってきているにすぎない「どんな種類の議論の文脈でも台湾を国と呼ぶな」という言い掛かりを、国際慣例上、支那側が激しく咎められて当然の - ということは、それがその国にとって有利なら、支那との国交断絶を宣言する契機にその発言を使っても支那は文句が言えない -他国の指導者を侮辱する無礼な発言と等価に扱う論理の破綻である。

小事たる子供の言い掛かりと大人の世界の大事の混同。小事と大事の喧嘩両成敗。朝日新聞の社説は - これまた故意か過失か知らないけれど - この両者を混同することで、論理的にもなんら問題のない、また、朝日新聞も「実態はそれに近いだろう」と書かざるを得なかったように経験的事実ともよく符合する麻生外相の発言を攻撃し、他方、世界の失笑を浴びて当然の支那の言い掛かり、ならびに、攻撃されて当然の他国の指導者への侮辱を免責するものに他ならない。

それは、不当な喧嘩両成敗であり、それはあたかも、法律を遵守した吉良上野介と野盗集団の逆怨みにすぎない赤穂浪士の蛮行を同一視する心性とパラレルな非論理の妄言でさえある。


この社説に上記の如く認識の倒錯と論理の破綻を見る場合、この社説の提言は空虚な文学的言辞そのものと言わざるをえなくなる。すなわち、「中国外務省は北京で、日本側の不快感表明にさらに反論した。なんと不毛な応酬だろうかこんな子供のけんかのようなことが続くのでは、外交と呼ぶにはほど遠い。両政府とも早く頭を冷やして、大人の対応を取り戻してもらいたい」の中の「不毛な応酬」と「子供のけんかのようなこと」及び「大人の対応」は指示対象を欠いた無価値な文芸的な表現にすぎない。

なぜならば、支那による他国指導者の侮辱→日本側の不快感表明→その侮辱に対する抗議の無視&逆怨み的反論は、日本側が当然行うべき行動を取ったのに対して、支那が国際慣例上の応答を拒否するという事態に他ならず;それは、(イ)日本側に非はなく一切の責任と落ち度は支那にあること、さらに、(ロ)支那は国際的慣例を無視していることの2点で「不毛な応酬」でもないし、これは大事であり「子供の喧嘩」が意味する小事では断じてないからである。

畢竟、朝日新聞の社説が言うように、支那の対応は「外交と呼ぶにはほど遠い」ものなのであり、よって、日本政府は「早く頭を冷やして」この国 - 韓朝を併せた特定アジア諸国 - が大人の付き合いができるような相手なのかを検討してみるべきであろう。

整理する。この社説は、本来、相殺すべきでもない事柄を相殺するために、「支那の無礼=大事」を「子供の喧嘩」という文学的表現で小事に矮小化している。そして、それは、本来、問題になりえない(再度記すが、支那が騒ぐのは勝ってであるけれど)麻生外相の「台湾=国家」発言を、あろうことか「大事=日中共同声明違反」に仕立て上げるために状況認識の倒錯と論理破綻を犯している。

それは故意とすれば読者を愚弄する狡猾な行いであり、過失とするならばそれは極めて拙劣でお粗末なものと言うべきであろう。けれども、故意か過失か知らないけれど、朝日新聞のこの社説が、支那のお話しにもならない - 文字通り餓鬼の言い掛かりのような - 横暴に対する日本国民の目を眩ます効果を持っている点で、それが日本の国益を損なう機能を果たしかねないことだけは確かであろう。畢竟、それは傍若無人な支那外交への援護射撃である。私はそう考える。

尚、最後に、朝日新聞の擬似論理と世間で通用する普通の論理を図式化しておく。

朝日新聞の擬似論理:
支那の無礼 ≡ (日本側の不快表明+麻生発言)

普通の論理:
支那の無礼 > (日本側の不快表明+麻生発言)


∵「日本側の不快表明」は(残念ながら、外務省のチャイナスクールが支那に何をどう言っているのかわからないから)ゼロか限りなくゼロに近く、「麻生発言」間違いなくゼロである。



(2006年3月11日:yahoo版にアップロード)

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