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懐かしい英語教材☆東進ブックス『CD・英語を話そう』シリーズ

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「自慢じゃないが英語なんて高校卒業以来やったことなかったのだけれど、冗談抜きにあと3ヶ月で英語をなんとか話せるようにならないといけない」「TOEICのスコアは845点と同僚に比べて低い方ではないのだが、会話は全然できないんすよ」
という方に是非とも推薦したい一書があります。特に、事情があって英会話スクールに通えない独学をメインにせざるを得ない方には最高の教材でしょう。【例えば、今年、賞金女王になって、来シーズンからはアメリカのLPGAトーナメントツアーにも参戦する方や、その追っかけファンの方々には、最適かも(笑)】

それは、『CD・英語を話そう 日常英会話編』『CD・英語を話そう オフィス英会話編』『CD・英語を話そう トラベル英会話編』:いずれも東進ブックスから出ている3冊本の英会話教材。出版社に問い合わせた所、『トラベル英会話編』は絶版状態で『日常英会話編』『オフィス英会話編』も在庫わずかということですが、【2007年11月19日現在、三冊とも絶版とのことです。残念! ただ、】ユーズド本はまだ比較的容易に入手できると思います。本書を<懐かしい英語教材>のコーナーで紹介する所以です。

東進ブックスは大手予備校の東進ハイスクール・東進衛星予備校を経営している株式会社ナガセの出版部門でもありもともと語学を含め学習教材制作には定評があります。しかし、特にこの『CD・英語を話そう』は出色のできばえだと思います。理由は次の4点。

(1)音声教材のボリュームが凄い
(2)異文化のバリアーを打ち破る配慮が行き届いている
(3)厳選された短文のみを収録
(4)記憶の定着のための復習を繰り返す内容


本書の長所を説明する前に書いておきますが、本書は古いです。3冊とも1998年9月から10月の出版。英米の英会話教材には(もちろん、改訂を繰り返しながらではありますけれども、例えば、Side by Side『New American Stream Line』のように)初版出版から30年とか半世紀の歴史を持っているものも少なくない。これに対して、日本の英会話教材は「PCと同じで生鮮食料品」とまでは言いませんが、乗用車の新型導入と同じで、やはり7年前のものというと陳腐な印象を消費者にもたれてしまう。

実際、国際線の飛行機の中で使う表現の例として”Do you mind if I smoke?”(タバコをすってもかまいませんか)とか、交通機関を利用する場合の表現として”How do I get to the World Trade Center?”(世界貿易センターにはどのように行ったらいいでしょう)と書いてあるのを見たら(いずれも『トラベル英会話編』から)、誰でも購入をためらうのではないでしょうか。<9・11>からでももう何年経っていると思っているんだよ、と。しかし、教材の古さと教材内容の陳腐さは必ずしも対応しない。ある意味、日本で英語教育を重視する中学・高校で使われている英語教材、『Progress in English』とともに本書はこのことの実例だと私は思っています。


本書の長所。『CD・英語を話そう』シリーズには3冊で計6枚のCD(約6時間の音声を収録)がついています。これは、1冊1,260円、3冊でも3,780円の英会話教材としては非常に大きなボリュームでしょう。しかも、ナレーションは、幾多のTOEIC模擬問題集やNHK出版から出ている英会話教材のナレーションの常連でもあり、その道では日本でも最も有名な「吹き込み手」の一人であるダン・コフリン氏やヴァレリー・ケイン氏があたっておられる。制作コストは大丈夫だったのかね、と他人事ながら心配してしまいました。

蓋し、この収録音声の質と量に、本書が英会話の雰囲気というか「自分が英会話を勉強している気分を読者に味わってもらう」ための<入門書>ではなく、あくまでも「何がなんでも読者に英語を話せるようになってもらう」ための<学習参考書>であることが端的に現われていると思います。「可愛い顔してあのこ わりとやるもんだねと♪」という歌を昔、アミンという当時女子大生のデュオが唄っていましたが、『CD・英語を話そう』は「入門書の体裁してこの本 かなりやばいんじゃないすか」です。


本書の第2の長所は異文化のバリアーを打ち破る配慮が行き届いていることですが、この説明は最後に回して技術的なポイントについて先にコメントします。すなわち、「厳選された短文のみで構成されていること」と「記憶の定着のために復習を繰り返す内容構成」の2点です。

『CD・英語を話そう』の各課は、①二人の登場人物の間で3回から4回交換される会話、②その会話に関連する表現の紹介、③最初の会話を少し変えた会話の三部構成になっています。そして、関連する課が4個から10個集まって章になり、④章末には確認テストが置かれている。お分かりでしょうか、②→③→④はすべて①の復習になっている! 

また、『CD・英語を話そう』に収められている英文はすべて8語前後、最長でも15語くらいまでの短文ですから、英語に自信のない方にも敷居の高さを感じさせません。要は、英語力の比較的低い読者でも続けられる。しかも、課を構成する6~8の英文(∵ 各課では二人の登場人物の間で3回から4回応答が交換される)は一貫したストリーがあり、内容がはっきりしているので個々の例文を読んでいく作業は無味乾燥ではありません。

『CD・英語を話そう』は学習参考書である。それは、各課で平均7個の表現を学び一冊では約210個の表現を学び、そして、『CD・英語を話そう』シリーズ3冊では各課の最初の会話例の箇所だけでも優に600個の英文を覚える仕組みになっています。而して、重層的な復習の構造を組み込むことで、かなりの程度、本書は読者が600の英文を覚え記憶に定着することを可能にしている。これらが本書の第3と第4の長所です。

実際、英会話スクールに通われた経験をお持ちの方や英会話スクールで勤めておられる方ならお分かりでしょうが、600の英文を覚え記憶に定着する作業は最少でも英会話スクールの150レッスン分に匹敵する学習内容の量だと思います。しかし、この記述にはある種の詭弁が含まれてる。お気づきですか? 

それは、もし書籍に含まれている情報量と英会話スクールを比較するのなら、例えば、「1冊3,360円の研究社『英和中辞典』は数万時間の英会話レッスンに匹敵する」と言えるでしょう。しかし、英会話スクールの悪口で盛り上がるネット掲示板でもBLOGを見てもそんなことを言う人はまずいない。つまり、あくまでも『CD・英語を話そう』の素晴らしさは、学習者が(読者とは最早いいません!)記憶を定着する上での工夫と学習を継続していく心の体勢を維持する工夫にあるのだ、と私は考えています。そして、重層的な復習の仕組みと1個1個は簡単な短文による<課→章→編→シリーズ>の有機的な編成がその工夫の一つであると。

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この「学習を継続していく心の体勢を維持する工夫」の一つが本書の第2の長所、異文化のバリアーを打ち破る配慮だと思います。私は本書『CD・英語を話そう』シリーズを幾つかの顧客企業で初級英会話研修用の教材として使ったことがありますが、研修後に受講生の皆さんから寄せられる声やアンケートを見る限り、本書に結晶している「異文化のバリアーを打ち破る配慮」は満更私の贔屓目ではないと断言できます。

街の書店に行けば異文化紹介の書籍は平積みになっていて、Web書店で「アメリカ 生活」や「イギリス 社会」をキーワードにして検索をかければ各々1,000件近い書籍がでてくる現在の日本で(実際、外国のことより自国のことをもっと知ろうよ、と思わないではないです!)、たかだか初級英会話の学習参考書に対して「異文化のバリアーを打ち破る配慮」などの言葉は大仰ではないですか? そんな声が聞こえてきそうですが、私が言いたいことはそんな大仰なこと、あるいは、そんな抽象的なことではないのです。

簡単な話しです。例えば、”My name is KABU. Please call me KABU. Nice to meet you.”とかいう英語を知らない/辞書を引いても理解できない英会話学習者は少ないと思います。けれども、海外経験が皆無で異文化経験も乏しい英会話学習者にとって問題なのは、訪問先の企業に行ったときに”My name is Miyuki Nakajima.”とかの英語表現をそのTPOで使っていいのかどうか;「そのビジネスのコンテクストでは他にふさわしい表現があるのじゃないか」という不安なのです。

そして、この不安はどれくらい断片的に英語表現を学んでも解消してくれない。お洒落でスマートな会話表現をどれほどインプレッシブに紹介する英会話参考書を読んでもやはりこの不安は解消しない。つまり、その英文の文法的や語法的な正しさを判定するための知識をどれほど積み上げてもその不安は一つも解消しないのです。蓋し、その不安の解消には、「コンテクストにふさわしい表現かどうかを判定する知識」が必要なのではないでしょうか。それは間違いなく「異文化のバリアーを打ち破る知識」の一つだと私は考えます。逆に言えば、これを身につけるために英会話スクールの存在意義はあると言ってもよいのかもしれません。

会話のコンテクストにふさわしいナチュラルな例文を積み上げて<課→章→編→シリーズ>を編成することで、本書は見事にこの初級英会話学習者の不安をかなりの程度解消している。これが本書には「異文化のバリアーを打ち破る配慮がなされている」と私が考える理由です。

最後に補足。英語のネーティブスピーカーの講師の方は、解説が日本語で書かれた本書のような教材を使うのを嫌う傾向があります。そりゃー、自分が間違った説明をした場合に言い逃れできないですからね。私の企画書とカリキュラムに沿ってレッスンを担当していただいた外国人講師の方にとって本書は嫌な本だったと思います。

しかし、本書をテキストにした企業研修をお願いした、私の昔の同僚講師達も本書の効果についてはレッスンが進むにつれ一目置くようになられた。英語を英語で教えるというダイレクトメソッドが不可能なような条件下では:つまり、受講者のレヴェルが低い上に予習・復習の時間を確保することが業務的に困難:レッスン時間が十分に確保できない:かつ、限られた期限までに成果を出さないと困るという条件下では、英語のネーティブスピーカーの講師と本書の組み合わせも悪くはないと思います。而して、研修の需要側だけでなく研修の供給側に対しても、もし古書店等で本書を目にされる機会があれば購入をお薦めいたします。



(2006年2月4日:goo版「英語と書評 de 海馬之玄関」にアップロード)

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