松尾光太郎 de 海馬之玄関 FC2版 | アメリカ大統領選挙観戦情報★「政党・民族・宗教」
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松尾光太郎 de 海馬之玄関 FC2版海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙
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アメリカ大統領選挙。アメリカ大統領選と夏のオリンピックは4年に一度の閏年(leap year)に行なわれる世界的なイベントですよね。それらが闘われている最中は新聞でもTVでもこれでもかというくらい報道されるけれど、終幕と同時に「祭りの後」的な寂しさや「兵どもが夢のあと」的な虚しさを漂わす点でも両者は似ている。

実際、前回のオリンピック、男子100メートル走の銅メダリストを覚えてますか? 前々回のアメリカ大統領選挙で破れた民主党の副大統領候補が誰だったかまだ覚えていますか? 正直、これらを知っているのは日本人の少数派ではないでしょうか。 

ことほど左様に、オリンピックもアメリカ大統領選挙も熱狂を持って迎えられ、喧噪とともに体験され、速攻で忘れ去られる。そんな<祭り>なのでしょう。それは、短い夏に縄文人的のDNAが炸裂する青森のねぶたにも比すべき<夏祭り>なのだと思います。

他方、多くの日本人にとっては、現在、アメリカがいかに一番親しい外国だとしても、所詮そこは異質な法制度と価値観が支配する国。日本人とは異なる文化を呼吸する人々が暮らす社会。つまり、アメリカ大統領選挙という<祭り>を楽しむための情報や知識が欠けているケースもいまだに少なくないのではないか。もしそうなら、それは、例えば、オフサイドのルールを知らずにサッカーやラクビーのゲームを観戦するに等しいことだよ。

こう考えて、今までもこの書庫「海外報道☆08年米国大統領選挙」に収録する記事には、その英文報道を理解する上で必要と思われる 「アメリカ大統領選挙観戦Tips」を 可能な限り盛り込んできました。

しかし、何かが足りない! アメリカ大統領選を普通の日本人が楽しめるようになるためには根本的な知識と情報が不足しているのではないか。それは、アメリカ政治というよりアメリカ社会の枠組み自体に関する情報の欠落に違いない。ここ2回、英文記事を紹介した結果、私はそう考えるに至りました。それが、アメリカの「政党」「民族」「宗教」に関する情報を本稿で紹介しようと思った所以です。

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◆政党
アメリカは英国と並び「二大政党制」の国だとよく言われます。確かに、アメリカには民主党(The Democratic Party)と共和党(Republican Party)という二つの巨大政党がある。

けれども、(大統領選挙の予備選挙や党員集会(Primary Election or Caucus)はもちろん「共和党の予備選挙」や「民主党の党員集会」なのですから論外ですが)、実は、11月に行なわれる本番の大統領選挙(Presidential Election)、そして、大統領選挙の年と大統領選挙の中間の年に実施される連邦議会の上下両院選挙には民主党と共和党以外の立候補も認められており、実際、両党以外の独立系(independent)連邦議員も極めて少数ですが存在しているのです。要は、アメリカの「二大政党制」は、英国と同様、小選挙区制という選挙制度を苗床に自生的に育ってきた制度ということです。

両党の政策の違いとして人口に膾炙する内容を下にまとめてみましたが、その差はそう大きなものではない。例えば、1980年代の半ばのことですが、民主と共和の両党の違いについて私の恩師達、日本におけるアメリカ憲法研究の最高権威のお一人とアメリカ外交史の最高権威のお一人は異口同音に「自民党の田中派と福田派の違い程度のもんや」と仰っておられました。

アメリカの民主党と共和党の違いは、
日本の民主党保守派と自民党ANA枢軸の違い程度のものだ


その後、全米の40州近くで20年近くビジネスを行ない多くの連邦議員(Lawmakers)と接した私の経験からもこの恩師達の認識は正しいと思います。要は、二大政党制とは、安全保障や国家のアイデンティティーの根拠、および、対外関係構築の枠組みという国の基本政策に関しては共通の核を持つ政権交代可能な二つの政党による政権争奪のシステムでなければ国民生活の安定を担保できないということでしょう。この点は日本の民主党と自民党との今後の盛衰を占う上で極めて示唆に富むポイントになるかもしれません。

◎民主党:
・都市労働者とマイノリティーが主要な支持層
・環境と福祉と人権に敏感
・同性愛と妊娠中絶を是認するリベラル色が濃厚
・モンロー主義的な外交姿勢

◎共和党:
・大企業と保守的な白人層、キリスト教右派層が主要な支持層
・環境や福祉よりも自由競争と自己責任の原則の貫徹を指向
・家庭とキリスト教信仰の価値を重視する保守色が濃厚
・同盟国との協調重視


民主党と共和党の違い。アメリカ政党史を通観するとき、両党の違いは、もともと「各州の自治権」を尊重するか「連邦政府の権限」を拡大するかを巡って生じたと考えるのが便利です。つまり、

・民主党:連邦政府の権限拡大→中央集権志向
・共和党:連邦政府の権限縮小→地方分権志向



ここでアメリカ政党史の有名なエピソードを一つ。合衆国の建国期には、(党の名前だけですが)「民主党」が地方分権志向で「共和党」が中央集権志向だった、と。

具体的には、初代大統領ワシントンや第2代大統領アダムズを含め中央主権志向のフェデラリスト(federalist)が、「共和党」(Republican)を名乗り、第3代大統領のジェファーソン以来の州権擁護派が「民主党」や「民主共和党」を名乗っていたのです。大雑把に言えば、南北戦争まではこの意味の「民主党」がアメリア政治の保守本流でした。多様な意味で今とは正反対!

ちなみに、英字新聞などで共和党がRepublican Partyと表記されるのは稀で、大概はGOP(Grand Old Party)という美称で呼ばれます。これは、アメリカ大統領人気ランキングで、初代ワシントンとともに常に首位を争うリンカーン大統領が「共和党」出身だったからかもしれません。リンカーンは死して「共和党」を残す、です。


◆民族
「移民」という「移民」はアメリカには存在しません。移民は必ず「・・・系アメリカ人」であり各自固有の文化的ルーツを持っている。また、あたり前のことですが、アメリカ合衆国に、現在のアメリカ国民のエスニカルな人口比と同じ比率で現在のアメリカ人の祖先達が一斉に(あるいは、五月雨式に)移ってきたわけではない。

社会的影響力を保持する古くからの移民の層の上に新しい雪が降り積もるよろしく新手の移民がやってきたのです。ご案内の通り、アメリカ合衆国の建国時に支配的だったのは英国系(イングランド系)移民とその子孫達でした。アメリカの支配的なエスニックグループを指すWASP(White-Anglo-Saxon-Protestant)という言葉は合衆国の成立期に遡るのです。

「黒人」(アフロ系アメリカ人)を除き、移民の第2の波は19世紀前半、英国−アイルランドの産業革命に起因する農民の都市流入と(1848年革命をはさむ)1840〜1860年の欧州の動乱期に生じました。第2波最大の勢力はアイルランドとドイツ。

そして、第3波は「新移民」と言われる1900−1920年のイタリアやロシア−ポーランドなどの南欧や東欧からの移民の流れ。映画『ゴッドファザー』(シシリー系マフィア)や『ウェストサイド物語』(ポーランド系とプエルトリコ系)は、実に、この「新移民」のコミュニティーを舞台にしたものだったのです。

ちなみに、1840〜1860年の20年間にアイルランドとドイツからはそれぞれ300万人と150万人の移民がアメリカに渡って来たとされ。1900〜1920年の20年間ではイタリアから315万人、ロシア−ポーランドからは250万人がアメリカに渡った。これは1900年のアメリカの人口が7600万人であったことを考えれば巨大な数字だったと思います。

◎1980年 アメリカ合衆国のエスニック構成比Top 5
  祖先      人口    比率
01 イングランド  4959万    21.9%
02 ドイツ       4922万    21.7%
03 アイルランド  4017万    17.7%     
04 フランス     1289万    5.7%
05 イタリア     1218万     5.4%
(S. Liberson and M.C. Waters, From Many Stans, 1988)


◆宗教
欧米では「パーティーの際の話題」として、政治と宗教の話は避けた方がよいと言われます。もちろん、政治は大学のカフェテリアや寮では定番の話題なのですが、「まだ、あまり親しくない方と同席する、しかも酒席では政治と宗教の話題は避けた方が無難」というのは、宗教改革の泥沼を生抜いてきた欧米の人々の生活の知恵なのかもしれません。

けれども、宗教という契機を抜きにアメリカ社会を理解できないのも事実。例えば、共和党のブッシュ大統領はメソジスト教会の信仰篤いことで有名ですが、なんと、民主党のヒラリー・クリントン上院議員も敬虔なメソジスト教会の信者。彼女は、生まれてから現在に至るまでメソジストの宗旨に則った生活習慣を守り続けているそうです。尚、メソジスト教会は英国国教会(聖公会)から分かれた宗派で、英国では専ら労働階級で流行していたものの、それが大きく発展したのはアメリカにメソジスト教徒が移住してからになります。

ちなみに、1789年、アメリカ大陸で初めて上下両院ができたとき、この第1期の上下院議員(上院29名+下院66名)のキリスト教セクト内訳は、

聖公会が37名, 組合教会派が11名, 長老教会派が6名, オランダ改革派4名, クエーカー教徒4名, カトリック3名, メソジスト教会とルター派が各2名, ドイツ改革教会、ユグノー、カルヴァン派が各1名。未確認が25名。

これは今から約220年前のものですが、第109期(2005-2006年)の米国上下院議員(上院100名+下院435名)のセクト内訳は、

カトリックが158名、バプテスト教会が75名、メソジスト教会は61名、長老教会派が52名、聖公会が42名、ルター派は21名、モルモン教が16 名・・・不明4名、および、ユダヤ教が37名。つまり、ユダヤ教を除き、キリスト教以外の信仰を保持していると答えた(coming outした)議員は一人もいないということ。

蓋し、アメリカはハンバーガーとコーラとポップ音楽だけの社会ではなく、欧州に比べても極めてキリスト教信仰の篤い土地柄だということです。大統領選挙観戦をする上でもこのことは理解しておいた方がよいことだと私は思います。


(2008年1月24日:yahoo版にアップロード)

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2008.01.25(08:48)|海外報道☆2008年アメリカ大統領選挙コメント(0)トラックバック(2)TOP↑
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