立川のプロ市民ビラ配り最高裁判決について書かれた朝日新聞の「負け惜しみ社説」

yasukunifilm



予想通り「正義は勝つ」の理を示す判決が出ました。昨日、2008年4月11日、所謂「立川のプロ市民ビラ配りにおける住居侵入事件」に下された最高裁の「上告棄却」判決。これで被告側の住居侵入罪での有罪が確定したわけです。

この判決結果を受けた朝日新聞の社説も予想通り本日掲載されました。しかし、それはこの最高裁判決に対する「負け惜しみ」を綴ったものにすぎず、当初の【予告】とは違い正面から俎上に載せるようなものではなかった。それこそ、この社説を3週間待ちわびた私にとっては「肩すかし社説」。而して、この記事では当該の社説を引用紹介し幾つか私の感想を記しておくにとどめざるをえません。尚、当該の最高裁判決全文とこの「住居侵入事件」に関する私の基本的な考えについては下記URLをご参照いただければ嬉しいです。以下、社説引用。

▲最高裁判決(全文)
 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=36282&hanreiKbn=01

▲KABUのこの住居侵入事件に向けた基本的な考え
【予告】立川のプロ市民ビラ配り最高裁判決☆「正義は勝つ」かな?
 
プロ市民のビラ配りにNOの判決☆「長期勾留-ビラ配りで75日とは」ってか?
 
立川ビラ配り控訴審判決批判の朝日新聞の投書を嗤う
 
立川反戦ビラ事件の被告人らの無罪を訴える法学者声明(上)
 
立川反戦ビラ事件の被告人らの無罪を訴える法学者声明(下) 


●ビラ配り有罪―社会が縮こまっていいか
戦後の混乱の続くイラクに自衛隊が向かった04年1月、東京都立川市の防衛庁宿舎で、市民3人がビラを各戸に配った。

ビラには「自衛官・ご家族の皆さんへ/自衛隊のイラク派兵反対!/いっしょに考え、反対の声をあげよう!」と書かれていた。3人のうち2人は翌月も別のビラを配った。

宿舎からの被害届を受けた警察は3人を住居侵入容疑で逮捕した。3人は起訴された後も保釈されず、75日間も警察の留置場などに入れられるという異常な捜査だった。

自衛隊派遣への反対運動を狙い撃ちした捜査としか思えなかった。

3人は公判で、ビラ配りを住居侵入罪に問うことは、表現の自由を保障した憲法に違反すると主張した。

しかし、最高裁は次のように述べて3人の主張を退けた。

表現の自由は憲法で無制限に保障されたものではない。官舎は一般人が自由に出入りできる場所ではなく、管理者の意思に反して立ち入ることは住民の私生活の平穏を侵害する。

これで罰金20万~10万円の有罪が確定する。

ビラが配られたのは、自衛隊のイラク派遣をめぐって世論が割れ、様々な論議が起きていたころだ。自衛官やその家族が派遣反対のビラをドアの新聞受けから入れられて動揺したり、いやな思いをしたりしたというのは、その通りかもしれない。知らない人が勝手に敷地に入ってくれば、不安になるのも無理はない。

ビラを配る側も、1階の集合ポストに入れたり、宿舎前で配ったりする気配りをすべきだったろう。

しかし、だからといって、いきなり逮捕し、2カ月余りも勾留(こうりゅう)したあげくに刑事罰を科さなければならないほど悪質なことなのだろうか。度を超した捜査や起訴をそのまま追認した最高裁には、失望してしまった。

気がかりなのは、今回の最高裁判決で、ビラ配りなどがますますやりにくくなり、ひいては様々な考えを伝える手だてが狭まっていくのではないか、ということだ。これでは社会が縮こまってしまう。

そうでなくても、このところ、言論や表現の自由をめぐって、息苦しさを覚えるようなことが相次いでいる。映画「靖国」が、トラブルを恐れる一部の映画館で上映中止になった。右翼の街宣活動を理由にホテルが日教組の集会を断った。

だれもが自由に語り、自分の意見を自由に伝えることができてこそ、民主的な社会といえる。そこでは、自分とは異なる意見や価値観を認め合い、耳を傾けることも求められている。

そんな寛容さや度量を社会として大切にしていきたい。(2008年4月11日所収)



yasukunicome



<KABUの感想>
黙秘する権利は憲法上の権利ですが(それは「黙秘」したことにより量刑等で不利な扱いを受けないということであり)、勾留の可否を決める裁判所たる裁判官が「黙秘」を貫く容疑者の態度に「証拠隠滅の恐れ」や「逃亡の恐れ」を感じることはありうる。ならば、その恐れに基づき「75日間の勾留決定」が下された経緯は特に「異常な捜査」と呼ばれるものではない。私はそう思います。


「しかし、だからといって、いきなり逮捕し、2カ月余りも勾留したあげくに刑事罰を科さなければならないほど悪質なことなのだろうか」、と。朝日新聞は書いていますが、別に「いきなり逮捕」されたわけではない。逮捕は裁判所が発給する「逮捕状」に基づき粛々と行われたのであり、なにより、自衛隊官舎の管理者からは数度にわたり被告プロ市民側に「ビラ配布の中止」が要請されていたのですから。

而して、「刑事罰を科さなければならないほど悪質なこと」かどうかこそが(=刑法の住居侵入罪が想定する違法性の程度を本件のプロ市民側が越えたかどうかの判断こそが)この「立川のプロ市民ビラ配りにおける住居侵入事件訴訟」の第一審・控訴審・上告審の三判決を貫く主旋律であり、今回、最高裁も当該判決文の大部分を使い(PDFファイル9ページ中のほぼ8ページを使い)緻密に論証したことなのです。

簡単に言えば「政治的な表現の自由といえども公共の福祉の観点から制限を受ける」という原則を確認するために、本件において最高裁は判決文の80%以上を割いて具体的事実を検討している。畢竟、朝日新聞の社説子はこの判決文の全文および控訴審の東京高裁判決の原文に目を通さずにこの社説を書いたのではないか。「刑事罰を科さなければならないほど悪質なことなのだろうか」という紋切り型の判決批判の字句を見て私はそう疑わざるをえませんでした。


「気がかりなのは、今回の最高裁判決で、ビラ配りなどがますますやりにくくなり、ひいては様々な考えを伝える手だてが狭まっていくのではないか、ということだ。これでは社会が縮こまってしまう」と書いた朝日新聞の社説子は、おそらく、商業ビラのポスティングの現状をあまりご存じないのだと思います。宅配ピザにせよ宅配寿司屋、あるいは、個別塾やエステサロンのポスティングにせよ、現在、業者側は居住者や住居管理者からのクレームには極めて敏感に対応しています。少なくとも「官舎等の管理者から数度にわたりポスティングの中止要請」があったにもかかわらず当該官舎へのポスティングを継続することなどまずない。

つまり、配る方にそのような配慮があったのであれば、本件が刑事事件になることはなかった。而して、「居住の安心」を求める国民世論(=国民の法意識)を鑑みた場合、本最高裁判決は国民の切実な期待に応えたものではあっても、毫も、「様々な考えを伝える手だてを狭める」結果を招来するようなものではないと言えるでしょう。

尚、「映画「靖国」が、トラブルを恐れる一部の映画館で上映中止になった」こと、および、「右翼の街宣活動を理由にホテルが日教組の集会を断った」ことは、純粋な私企業のビジネスジャッジメントであり表現の自由とはなんら直接の関係はありません。否、右翼にせよ(法に従う限り)表現の自由はあるのですから、この朝日新聞の記述は単なる危惧を根拠に右翼の表現の自由を狭めようとする主張であり、それは憲法の人権論から見て容認されるものではないのではないか。

右翼の妨害を危惧しての映画「靖国」の上映中止などは映画館側の「口実」にすぎないでしょう。映画館は儲かる作品と思えば上演はします。例えば、平成の美獣・沢尻エリカ嬢主演の「パッチギ」にせよ「リンダ・リンダ」にせよ(利敵行為を繰り返す「国粋馬鹿右翼」の)嫌がらせは想定できたし、実際、それも若干あったけれど堂々と全国ロードショーが敢行されたのですから。また、繰り返しになりますが、(法に触れない限り)右翼にも表現の自由はあるわけだし、誰にも抗議する自由はある。そう考えれば、この上映中止問題を「憲法上の表現の自由の危機」などと言い募る朝日新聞等の議論は完全に破綻している。私はそう考えます。


「だれもが自由に語り、自分の意見を自由に伝えることができてこそ、民主的な社会といえる。そこでは、自分とは異なる意見や価値観を認め合い、耳を傾けることも求められている。そんな寛容さや度量を社会として大切にしていきたい」という社説の文言自体には我々保守改革派からも特に異論はありません。

思い起こせば、当時、世界の通説的な法概念論と法学方法論を愚直に展開しただけの、今では護憲派の主張としても極普通の(社民党の公式見解よりもラディカルな)「自衛隊は違憲だが合法的な存在である」と述べた小林直樹さんの著書『憲法第九条』(岩波新書・1982年6月)は(当時の社会党と労働戦線統合に向けた護憲派の内部抗争にも連動して)学界・言論界・護憲運動戦線の中で徹底的に批判されました。また、憲法9条に関する憲法変遷論を明記された当時中央大学の橋本公旦さんの教科書『日本国憲法』(有斐閣・1980年)は上梓後直ちに絶版に追い込まれた。正に、「だれもが自由に語り、自分の意見を自由に伝えることができてこそ、民主的な社会」といえる。而して、「自分とは異なる意見や価値観を認め合い、耳を傾けることも求められている。そんな寛容さや度量を社会として大切にしていきたい」と我々保守改革派こそ切に願う者だからです。

けれども、東京高裁・最高裁が本「住居侵入事件訴訟」において下した判決は、ビラ・チラシの内容に踏み込むものではなく、それは「住居侵入」の手段と様態に着目したものなのです。而して、居住者や管理者が何を理由に配布側に(具体的には、ビラ・チラシの内容を理由にしたにせよ)「ビラ配布の中止を要請」するかしないかは居住者や管理者の自由であり、その「ビラ配布の中止要請」が数次にわたり出されていたことを根拠に裁判所が「住居侵入罪が想定する違法性の程度の逸脱」を認定することは極めて穏当かつ中庸をえた現実的な判断と言えるでしょう。

畢竟、そのような行為を繰り返したプロ市民のポスティングは、居住者や管理者の配布中止要請にもかかわらず、いかがわしいピンクチラシ配布を継続する住所不定の<業者>のポスティングと同様、「自分の意見を自由に伝えることができる」権利、すなわち、表現の自由の埒外の事象というべきではないか。私はそう考えています。



(2008年4月12日:yahoo版にアップロード)

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