海外報道紹介☆世襲政治を巡る日本の現状




国会議員であった親族の跡を継ぎ、父祖と同じ選挙区から立候補して国会議員になる、所謂「世襲議員」が少なくないことを問題にする風潮がこの社会に蔓延しているようです。而して、「同一選挙区からの連続出馬」の制限を打ち出した民主党に対して自民党も一定程度の世襲制限を行なう方針を明らかにした。例えば、今日の毎日新聞はこう伝えています。以下、引用開始。

●<世襲制限>自民、次期衆院選は見送り 次々回適用で集約
自民党の党改革実行本部(武部勤本部長)は2日、国会議員の世襲制限について、次期衆院選からの適用は見送る方針を固めた。早期導入には民主党に対抗する狙いがあったが、党内の混乱を避けるため現職議員を対象外としたことで、かえって世論の批判を招きかねないと判断した。10日にとりまとめる改革案は「次の次の衆院選からの実施」で意見集約する。

同本部の「党改革に関する委員会」は先月、新人候補だけを対象に、国会議員の親族が同一選挙区から連続して立候補することを次期衆院選から禁止するとの素案を作成。小泉純一郎元首相の次男進次郎氏(神奈川11区)と、臼井日出男元法相の長男正一氏(千葉1区)が、党公認を得られない可能性が出ていた。

党内で世襲問題の議論を主導する菅義偉選対副委員長らは「次の次から」を検討してきたが、武部氏が、改革色をアピールするため、前倒し導入に意欲を示していた。

一方、民主党は「無所属で立候補しても、当選後に入党すれば抜け道になる」と批判していた。

こうした状況の下で同本部幹部は2日午前、「次の次からでいい」と語った。改革案もその方向でとりまとめ、麻生太郎首相に答申する。ただ、世襲議論が大詰めになってぶれてしまった印象はぬぐえない結果となった。

民主党は既に、「次期衆院選から、3親等以内の親族の同一選挙区からの立候補禁止」との方針を決めている。(毎日新聞:6月2日、以上引用終了)



世襲批判。いわば、これはニーチェの言う意味での「ルサンチマン」と言えるのかもしれませんが、少なくとも、社会思想的には、この世襲批判は民主主義の概念や理念とはほとんど何の関係もないことではないかと思います。

けれども、事実は事実。現実は現実。「普遍妥当な自然法が存在するかどうかは解答不可能としても、(自然法が存在すると考える)自然法論が歴史上存在したこと」は事実であるという井上茂先生の言葉を引き合いに出すまでもなく、また、「イエス・キリストが実在の人物であるかどうかは解答不可能としても、「ナザレのイエス」と呼ばれた男がイエス・キリストであり、ゴルダゴの丘の十字架で処刑された後に彼は復活したと信じる人々が西暦紀元1世から2世紀にかけて存在したこと」は厳然たる事実。ならば、現実の政治においては、内容としての論理だけではなく事実としての論理と拮抗せざるを得ず、よって、この「世襲批判論」は無視できないことだと思います。

而して、この事実としての論理としての世襲批判を考える上での好個の海外報道を目にしました。世襲国会議員を巡る日本の事情をスケッチした海外報道。以下紹介します。出典は、New York Timesの” Japan’s Political Dynasties Come Under Fire but Prove Resilient”「批判の集中砲火を受けるもののしたたかに生き残る気配も濃厚な日本の世襲政治」(March 15, 2009)です。少し古い記事ですが、目にした限りでは最も包括的なもの。尚、所謂「世襲政治」に関する私の基本的な考えについては下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。


・世襲批判の批判的考察
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/57994382.html


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YOKOSUKA, Japan — By almost any measure, Katsuhito Yokokume should have at least a fighting chance in the coming parliamentary elections, which could decide Japan’s future.

A truck driver’s son who graduated from the nation’s top university, Mr. Yokokume, an energetic 27-year-old lawyer, is a candidate for the main opposition Democratic Party, which has ridden rising popular discontent with the long-governing Liberal Democratic Party. Yet, on a recent chilly morning of greeting voters with deep bows and handshakes at a train station, he got the same apologetic but blunt rejection he gets every day.

“I’m sorry, but this is Koizumi country,” one commuter explained.

He was referring to Junichiro Koizumi, the popular former prime minister whose family has represented this naval port an hour southwest of Tokyo for three generations. In announcing his retirement last autumn, Mr. Koizumi anointed his son, Shinjiro, as successor — making the son’s election as a fourth-generation lawmaker all but a foregone conclusion here.


日本の横須賀市―― 日本の将来を決めかねない、来る国会議員選挙で横粂勝仁氏は、どのような基準からも、少なくとも戦うチャンスは手にしているものと看做されるだろう。

この国でも最高の大学の卒業生でありトラック運転手の息子である、この精力的な27歳の弁護士の横粂氏は最大野党・民主党の候補者である。而して、長らく政権与党の座を守ってきた自由民主党に対する不満の世論が澎湃として起こっており、逆に民主党には追い風が吹いている。それにもかかわらず、例えば、数日前の凍みるような朝、鉄道の駅頭で深くお辞儀をして握手しながら有権者に挨拶をしている時に、横粂氏は異口同音に申しわけなさそうな、しかし、単刀直入な拒否をいつものように受けた。

「申しわけないけど、ここは小泉王国なんだよね」。そうある通勤者は説明した。

その通勤者が言及しているのは小泉純一郎氏。東京から1時間余りのこの海軍の軍港の街からその一族が三代にわたって選出されてきた極めて高い人気を誇る元首相その人のことである。昨秋、自身の引退表明に際して、小泉氏は彼の息子、進次郎氏を後継者に指名した。而して、ここ横須賀では、小泉氏による息子の後継者指名は、選挙の結果を見るまでもなくほぼ、四代目となる国会議員の当選を意味している。



Such family dynasties are common across Japan, the product of more than a half-century of Liberal Democratic Party control that allowed lawmakers to build powerful local political machines and then hand them down to children and grandchildren.

Now, as the party faces its biggest challenge since its founding in 1955, such de facto hereditary control of parliamentary seats is coming under unprecedented criticism here. But it is also showing stubborn resilience.

Such inherited seats have fallen under increasing attack by voters and many political scientists. They say the practice has helped create an inbred version of politics that has contributed to the leadership paralysis gripping this nation, slowing its response to the current financial crisis and Japan’s longer economic decline. Political analysts have also thrust into public view the fact that powerful political and business families exert more control here than this proudly middle-class society likes to admit.


横須賀の小泉家のように親族内で国会議員の議席を継承することは日本の至ることで観察される現象である。而して、それは半世紀を超える自由民主党支配の結果でもある。すなわち、長年にわたる自由民主党の支配の中で国会議員は地方に強力な選挙マシーンを造り上げることができたし、その議席を子や孫に直接手渡すことが可能になったのである。

けれども、現在、1955年のその創立以来最大の危機に自民党が直面していることもあって、このような実質上の世襲体制による国会議員の議席の確定に関しては、ここ日本でもかって見られなかったような批判が起きている。しかし、実質的な世襲制度を擁護する側もまたしたたかに批判に対応しつつある。

畢竟、このような国会の議席が相続される現象に対して有権者や政治学者からの批判は益々強まっている。批判を口にする人々は、国会議員の世襲は政治の世界における謂わば近親交配を促進してきており、その政治的な近親交配によってこの国を掌握すべき指導力が麻痺するに至っている。而して、現下の金融危機に対する対応や日本の長期にわたる経済低迷は政治が指導力を発揮できていないことの証左であると述べる。政治学者は、誇るべきこの中産階級社会がそれを受け入れてもよいと感じているよりも遥かに大きな影響力を強力な政治家と経営者の一族が行使していると世間一般的では受け取れられていること、そのような公衆の意識をも俎上に載せている。



This has fed a fear of rising social inequalities, and the feeling that unseen barriers are preventing new talent, new ideas —literally, new blood — from entering politics, and from helping Japan find a way out of its morass.

“It takes a blood test to get elected these days,” said Sota Kato, a senior fellow at the Tokyo Foundation, a private research organization. “It is a symptom of how Japanese society has lost its postwar dynamism and become more rigid and less democratic.”

While second-generation lawmakers are common elsewhere — they make up some 5 percent of the United States Congress, Mr. Kato and others said — they are unusually numerous here. Some 40 percent of Liberal Democratic lawmakers are descendants of lawmakers. Of the past seven prime ministers here, all but one were the sons or grandsons of former lawmakers.


このことは社会的な不平等が拡大する危惧をこの社会に広めつつあり、【制度上は不平等ではないものの、実質的には生まれによって国会議員になれる可能性に天と地の違いがある、謂わば「議席の世襲制」とも言うべき】目に見えない壁が、新しい才能やアイデア、文字通り、新しい血が政治の世界に参入することを妨げており、而して、それらの新しい才能やアイデアや血が、日本がはまり込んでいる泥沼から脱却する方途をこの国が見出すことに寄与する道を閉ざしているという感覚が日々昂進しているのである。

「今日では選挙で当選するためには血液検査が必要になっている」と、民間の研究団体、東京財団の加藤創太上席研究員は述べている。「世襲の現象は、日本が戦後の活力をいかにして失ってきたか、また、社会階層間の移動性に乏しくより民主的でない社会になってきたことの兆表なのです」とも。

もちろん、二代目の政治家など世界中どこでも見られる現象ではある。例えば、アメリカの議会でも世襲議員は5%を占めている。けれども、世襲議員の数がこの国では尋常ではない。と、そう加藤氏や他の研究者は語ってくれた。畢竟、自由民主党所属の国会議員の凡そ40%が国会議員の子孫であり、過去7人の総理大臣は【森元首相の】一人を除き全員が国会議員の子か孫なのである【KABU註:正しくは「子か、子かつ孫」であるけれど原文に従った】。



The issue was thrust into public view recently by the back-to-back resignations of two prime ministers, Shinzo Abe and Yasuo Fukuda, the grandson and son, respectively, of former prime ministers. The fact that both men stepped down so quickly in the face of falling approval ratings was widely criticized here as a weakness of character seen in “botchan” or “brat” politicians.

Despite such public disgust, it is unclear whether this will influence the coming elections, which must be called by early September and which polls show the Liberal Democrats could lose. The opposition Democrats, for one, also have their share of second-generation or higher lawmakers: 20 percent.

Also, as Yokosuka shows, old practices die hard. Often, the families’ founding members are still revered in their districts for bringing public works projects that helped raise living standards. ・・・


この問題は、最近、続けざまに二人の首相が退陣したことにより世間の関心を集めた。その二人の首相とは、それぞれ元の首相の孫と息子である安倍晋三氏と福田康夫氏である。この両元首相が政権支持率の降下に直面するや大方の予想より早く退陣したことは、「坊ちゃん」すなわち「お子様」的な弱い人物の対応として広範にこの国で批判された。

このように、世間が世襲現象に対して愛想をつかしているにもかかわらず、世襲問題が来る総選挙に影響を与えるかどうかは不透明である。而して、その総選挙は9月早々までには実施されることになっており、そして、世論調査の結果からは自由民主党が議席を減らすことが予想されているけれども、実際、野党の民主党も二世以上の国会議員比率は20%に達しているのだから。

更に、【冒頭で紹介した】横須賀の事例でも明らかなように、長く続いた慣行はなかなかなくならないものだ。その当該の地域では世襲の起点となった元国会議員は、地域の生活蘇水準を向上させるのに与して力があった公共事業を持ってきた人物として今もなお崇敬されているだから。(中略)



Mr. Koizumi’s decision to hand his seat to his son was greeted with disappointment in urban areas, where the criticism of hereditary seats is highest, and where the former prime minister was widely popular for his vows to change the Liberal Democratic Party’s entrenched ways. ・・・

Despite the fact that Shinjiro Koizumi has yet to announce a political platform, his father’s supporters say they are enthusiastic to vote for him. They say he inherited his father’s telegenic charisma. Perhaps more significantly, he will also inherit his father’s roughly 5,000-member support group, which financed and organized his election campaigns.・・・

Mr. Yokokume said he was hoping to benefit from some kind of negative reaction to hereditary politics. Still, he is reluctant to criticize his opponent directly for fear of offending Japanese sensibilities that frown on self-promoters. ・・・Mr. Yokokume admits that it is hard to battle an opponent who seems invincible・・・What keeps him going, he said, is a hope of parlaying even a defeat into an eventual career in politics, and a touch of indignation at hereditary politics.

“Why can’t a regular person be a politician?” he asked. “Politics shouldn’t be a family business.”


その議席を息子に継承させるという小泉元首相の決断は都市部の有権者から失望をもって迎えられた。この国の都市部では議席の世襲に対する批判の強さは際立っており、また、自由民主党の牢固なやり方を変えるという自身の誓約によってこの元首相はその都市部で幅広い人気を享受していたのだから。(中略)

小泉進次郎氏はいまだにその基本的な政治的な立場を発表していないにもかかわらず、彼の父親の後援者達は進次郎氏に断乎投票する意向を隠そうとはしない。後援者達によれば進次郎氏は父親譲りのテレビ受けする才能を持っているとのこと。而して、更に重要なことは、進次郎氏は彼の父親の5,000人にも達する後援組織を引き継ぐことになることだ。この後援組織が進次郎氏の選挙運動に資金を提供し選挙活動を推進するものであることは言うまでもない。(中略)

横粂氏は、世襲政治に対する否定的な風潮がなんらかの形で彼を利することを期待している。彼はそう吐露してくれた。けれども、それにもかかわらず、横粂氏は彼の競争相手【小泉進次郎氏】を直接に批判することは躊躇している。なぜならば、自己宣伝に長けた人物を好ましく思わない日社会特有の感情を刺激したくないからだ。(中略)而して、横粂氏は無敵と思える相手と戦うことが実に困難なことを認めている。(中略)横粂氏の言葉を借りれば、畢竟、彼を突き動かしているものは、それが敗北に終ろうとも政治領域での実績作りに賭けたいという気持ちと世襲政治に対する義憤である。

「どうして【親族が政治家ではない】普通の人間が政治家になれないのでしょうか」「政治は家業ではないはずです」と横粂氏は語ってくれた。





(2009年6月2日:yahoo版にアップロード)

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