海外報道紹介☆北朝鮮に対する国連制裁決議とその背景(上)

nucleraweapon


2009年6月12日(日本時間13日未明)、国連安全保理事会(United Nations Security Council)は、北朝鮮が去る5月25日に実施した核実験に鑑み、それを非難する制裁決議を可決採択しました(同決議、「United Nations Security Council Resolution 1874:国連安保理決議1874号」の原典テキストは下記URL参照)。

・UN press release
 http://www.un.org/News/Press/docs//2009/sc9679.doc.htm

・United Nations Security Council Resolution
 http://www.un.org/documents/scres.htm
(但し、本記事アップロード時点では未収録)

今回の制裁決議を日米両国政府は「極めて強い決議」「very robust resolution」と評価していますが、他方、その制裁の実効性に疑い呈する向きも少なくありません。

例えば、「当初、アメリカが起草した決議案では、公海上(on the high seas)における北朝鮮船舶に対する「臨検の義務」が明記されていたにもかかわらず、そのような措置は北朝鮮を過度に刺激するとして難色を示した支那の反対により、強制力を持たない「要請」に変えられた。更に、臨検には「船舶旗国の同意」という条件までつけられているではないか」、あるいは、「前回の北朝鮮制裁決議に関しても、それを遵守する国は日米を除いてほとんどなかった。今回も、臨検等が強制力を伴う「義務」ではなく「要請」であってみれば、今回の1874号決議に関する運用もまた前回の1718号決議に関するそれの繰り返しになることは自明であろう」、更には、「畢竟、今回の制裁決議は、政治的なセレモニーの小道具にすぎず、単なるつじつま合わせのお題目にすぎない」というような主張を目にすることも稀ではありません。

けれども、土台、国際法上、①無条件の強制的臨検は、被臨検側に対する「宣戦布告」に等しいものであり、また、②国連加盟国対して「臨検実施の義務」を課したところで、究極の所、その「義務」には「義務違反に対する制裁」を当然のようには含ませることはできないことから、多くの国連加盟国にとって安保理で採択された決議に含まれている文言が「義務」であるか「要請」であるかは実際の所大差ないのです。要は、臨検することを怠ったからといって特に制裁が自国に加えられないのだから、それこそ6ヵ国協議(six party talks)のメンバー国以外の国が、本心では誰も関わりたくない北朝鮮から「臨検は宣戦布告ニダ!」と難癖つけられる面倒を引き受けて臨検を実施すると考える方がナイーブであろうと思います。

而して、(支那とロシア、あるいは、韓国にとって北朝鮮の暴発も崩壊もそれが自国に及ぼす影響にほとんど差はないのでしょうから)6ヵ国協議の構成国である支那とロシアは、臨検を怠ることで失う北朝鮮問題に関する発言権の度合と臨検実施によって北朝鮮が暴発または崩壊することの期待値の比較考量によって「曖昧な臨検の形態」を取るだろうことはほぼ確実でしょう。例えば、New York Timesは今般の決議採択を報じた” U.N. Security Council Adopts Stiffer Curbs on North Korea”「国連安保理、断固とした制約を北朝鮮に課す」(June 13, 2009)の中でこう述べています。

The Chinese reluctance to implement stronger measures was based largely on concern about destabilizing North Korea and sending a flood of refugees across the border. Ultimately, a collapse in the North Korean government, and a possible reunification of Korea, could mean having a stronger American ally right on China and Russia’s border.


「より強い制裁手段の実行に支那が積極的になれない最大の理由はそれによって北朝鮮が不安定化する危惧であり、不安定化した北朝鮮から中朝の国境線を越えて難民が洪水のように押し寄せてくる危惧である。而して、北朝鮮の政治体制の崩壊、そして、そうなれば満更あり得ないことではない朝鮮半島の再統一は、本質的な所、強大なるアメリカの同盟国と正にその国境で接することになることを支那とロシアには意味するのである」


けれども、今回可決採択された国連安保理1874号決議は「政治的なセレモニーの小道具にすぎず、つじつま合わせのお題目にすぎない」とは必ずしも言い切れない。而して、この経緯は前回の1718号決議に関しても同じであった。そう私は考えています。

蓋し、むしろ、国連決議などは常に政治的セレモニーの小道具にすぎず(否、国連自体が「常設の国際会議場組織」に他ならず)、それ自体が現実の国際紛争を解決する効能を持っているわけではありません、けれども、例えば、対北朝鮮制裁を強化すべきと考えている有志連合の行動はこれらの国連決議を根拠にして正当化されるのであり、ならば、被制裁国にとっては国連決議は「アクセサリー」や「お題目」どころではないのです。まして、北朝鮮の核と弾道ミサイルの開発の問題は(「北朝鮮危機=自国の周辺地域内の危機」である日本・韓国・支那・ロシアとは別の意味で)多くの国にとって、核不拡散体制の揺らぎと再構築を巡る掛け値なしに重大な問題である。北朝鮮の核開発がイランのそれと背中合わせの問題であることは当然として、畢竟、北朝鮮危機は世界の多くの国にとっても「身近ではないが重大な事態」であることは間違いないと思います。この経緯を先に述べたNew York Timesの記事は上に引用した箇所の直下でこう記しています。

Western diplomats suggested that recent military actions by the North Koreans had sufficiently alarmed Beijing and Moscow, however, for them to back tighter sanctions. “Their concern about it and indeed their anger about it is genuine,” said one Western diplomat・・・

In addition, there was a sense that a message had to be sent to other countries like Iran which has its own nuclear program and has been ignoring Security Council sanctions designed to convince it to negotiate.


「【支那とロシアは厳格な対北朝鮮制裁には積極的ではないけれども】しかし、西側の外交筋によれば、北朝鮮の近時の軍事行動は支那とロシアを不安に陥れるに十分なインパクトのあるものだった。「北朝鮮危機に関する支露両国の危惧とそれを引き起こしている北朝鮮に対する両国の怒りは本物である」と、ある西側の外交官は語ってくれた(中略)

これに加えて、今回の安保理決議が採択されたについては、自国独自の核開発計画を進め、かつ、交渉に戻るよう促すために起案採決された安保理の制裁決議を無視し続けているイランの様な北朝鮮以外の国に対しても【国際社会からの】メッセージを送らなければならないという判断が作用したものと思われる」


もちろん、国連決議が<武器>としてどの程度の効能を発揮するかは(逆に言えば、どの程度は<アクセサリー>であり<お題目>であるかは)有志連合の力量と覚悟をパラメーターとする関数でしかないでしょう。しかし、いずれにせよ、当該の国連決議が「軍事的制裁措置」を定めている国連憲章7章42条「軍事的制裁措置」ではなく「非軍事的制裁措置」を定める国連憲章7章41条であっても、つまり、(「紛争の平和的解決」を定めた国連憲章6章ではなく)所謂「紛争の強制的解決」を定めた国連憲章7章に言及している場合には、「国連決議=アクセサリー」などではないのです。このことは、(その開戦が国際法違反であったかどうかは別にして、安保理決議1441号(更には、678号および687号)に含まれていた)国連憲章7章への言及を有力な根拠の一つにしてアメリカがイラク戦争を開始した故事、また、北朝鮮自体が2006年10月の安保理決議の四ヵ月後には6ヵ国協議に復帰せざるをえなかった事実を想起すれば明らかではないかと思います。

蓋し、国連安保理決議は「国際政治のアクセサリー」にすぎないが、「国際政治を彩るアクセサリー」ではある。而して、例えば、現下の北朝鮮危機に関しても、国際政治のリアルポリティクスにおける国連安保理決議の価値を決めるものは、独り、有志連合の力量と覚悟である。蓋し、その力量と覚悟には(北朝鮮を訪問した外国人の再入国不許可・あらゆる法規を総動員した朝鮮総連の締め付け強化・独自の金融経済制裁・領海内と公海での独自の臨検強化等々の)「日本独自の制裁措置」や「敵基地先制攻撃能力開発とそれをスムースに実行するための法整備」、更には、「核武装の推進」だけではなく、(それらを行なうことで国際政治的に「日本の強い覚悟」を示すことと併せて)有志連合の同心円を漸次広げていく、言葉の正確な意味での「政治」の継続的な営為が含まれるものと考えます。

このような国連と国連安保理決議に関する認識を踏まえるとき、今回の国連安保理決議を与件としつつ我々は北朝鮮危機にいかなる覚悟と方針で臨むべきなのか。このことを考える上ための資料として、以下、今回の国連安保理決議採択を報じた海外報道を紹介したいと思います。出典は、Washington Postの” U.N. Imposes Tough New Sanctions on North Korea”「国連、新たに厳しい制裁を北朝鮮に課す」(June 12, 2009)。このイシューに関するWPSTの第一報です。但し、適宜、同じ記者による第二報” U.N. Panel Adopts Wider Sanctions on North Korea”「国連安保理北朝鮮に対して広範なる制裁を採決」(June 13, 2009)も引用します。もって、第一報の緊張感や臨場感と第二報の制裁採決後のより客観的な情報の「いいとこ取り」ができたのなら嬉しいのですけれども。

尚、国連と日本の安全保障、現行憲法と集団的自衛権を巡る私の基本的な考え、そして、現下の北朝鮮危機の状況認識に関しては本稿末尾にURLを記した拙稿をご参照ください。




gunfreedom



The U.N. Security Council unanimously voted Friday to impose a broad range of additional financial, military and trade sanctions on North Korea in response to its recent nuclear and ballistic missile tests, and called on states for the first time to seize banned North Korean cargo on the high seas.

The Security Council's action marked a significant escalation in the United Nations' effort to coerce North Korea into halting a barrage of ballistic missile tests and to prod it back into six-nation talks aimed at denuclearizing the Korean Peninsula. The 15-nation council is now set to begin negotiations over imposition of an asset freeze or travel ban on additional individuals and state companies linked to North Korea's nuclear and ballistic missile program


国連案保理は金曜日【2009年6月12日:日本時間13日未明】、北朝鮮に対する追加の金融・軍事・貿易に関する幅広い制裁措置を課すことを全会一致で可決採択した。これは、北朝鮮が最近行なった核実験と弾道ミサイル実験に対する制裁であり、国連安保理は国連加盟国に対して北朝鮮の禁止されている船荷を公海上で押収することもまた初めて公式に要請した。

今回の安保理の決議採択は、北朝鮮に一連の弾道ミサイル実験を止めてさせ、もって、北朝鮮に対して朝鮮半島の比較化を目指している六者協議への復帰を促す国連の努力が一層明確に形になったものと言える。決議を採択した後、15ヵ国によって構成されている安保理は、現在、北朝鮮の核と弾道ミサイル開発計画に関連している個人や国営企業に対して、新たな資産凍結や旅行の禁止を課すことに関する話し合いを始めた。

◆参考資料:
上に紹介したNew York Timesの記事(以下、「NYT」と記します)は今回の国連安保理の対北朝鮮制裁決議についてこう総評を記しています。

The resolution condemned the latest nuclear test, ordered a halt to all such future tests and to the building of ballistic missiles. It also said the country should rejoin the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons.(NYT)

「今回採択された決議は、最近行なわれた核実験を厳しく非難しており、また、今後一切核実験を行わないこと、そして、弾道ミサイルを製造しないことを北朝鮮に命じている。決議はまた、北朝鮮が核不拡散条約に復帰すべきであると述べている」


<続く>





(2009年6月13-14日:yahoo版にアップロード)

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