就職活動で失敗しないための思考の基礎技術

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今、就職しない若者のこと(実は、職につかないのではなく、働くための能力自体が欠けている若者のこと)について考えている。結構しつこく考えている。で、真剣に何かを考えているときは、その考えていることに関係する言葉が目につくし耳にも入るものだ。数日前の帰宅の際も小田急ロマンスカーの中で3列前に座った男女の就職談義が妙に気になった。どうも、25~26歳の既婚のプータロー君が最近麻生区に引っ越して、その新百合ヶ丘の引越し先に仲間何人かで押しかける所らしい。

18のときから「風営法の下で働いてきた」22歳のしっかり者の女性がこの既婚プータロー君にアドヴァイスしている。街金の職員、ホスト倶楽部やソープランドの職員、出張ホストにゲイバー、キャバクラやラウンジの黒服(「トレンチ」とか「お盆君」と歌舞伎町では言うらしい)、はたまた、テレホン風俗におれおれ詐欺業務やAV嬢のスカウト等々、プータロー君の質問に応えてしっかり者のお姉さんは新宿歌舞伎町と新宿三丁目界隈でポピュラーな職業を挙げ、それらのメリット・デメリットを平明簡潔に説明していく。

新宿から新百合ヶ丘までの25分余り話は尽きなかった。歌舞伎町にはいろんな職業があるんだね。福沢諭吉先生が仰るとおり「職業に貴賎なし」だね。そして何より、この娘さんは頭がいいなと思った。そうこうする内に残念ながらロマンスカーホームウェイ73号は目的地のホームに滑り込む。

しっかり者の彼女は「もうここ、降りる系?」と言い立ち上がる。で、最後の一言。「まあ、何をするんでもどこで働くんでも。お金をもらうんだからな。自分がそこで役に立つんじゃないと速攻で居場所なくなるよ。なんちゃって。でも、ちゃんと働いて自分で生活している私、偉くない?」、と。全く、その通りと思った。22歳の君。風営法の下で5年近くちゃんと働いて自立している君。無断欠勤はもとより遅刻なんか一度もしたことがないことを自慢していた君。君は間違いなく偉いです。私は本当にそう思いました。日本の若者も捨てた者ばかりじゃなぞ、と神様が教えてくださったのかもしれない。そこで、今日は、就職と就労で失敗しがちなタイプの若者のために幾つかアドヴァイスを書こうと思う。


目的や進路が決められないことと他者と協働できないこと(よって、職場で成果を上げられないこと)の両者は、「自分のために世界はある」という世界観を共有している。この世界観に縛られて、就職や就労に連敗するあるタイプの若者は、就労目的も進路指針も周りや世間が与えてくれるものと思い込んでおり、はたまた、職場での自分のタスクの内容も、あるいは、タスク達成のためのスケジュールもスキルも総て上司や先輩が用意してくれるのが「当然ジャン」と勘違いしているのではないか。

社会では自分のことは自分でしなければならない。否、社会に出るということは、今後自分のことは自分でやるということ、即ち、自立するということだ。而して、自立するためには自律しなければならない。こんな自明のことはワザワザここで言う必要もあるまい。実際、就職と就労で失敗し続けるあるタイプの若者の大部分も「世界は自分のためにあるという戦後民主主義の教えは間違いかもしれない」ということまでは何度かの敗北を通して理解する。

よって問題は、大東亜戦争後の戦後民主主義教育のイデオロギーが間違いだと早晩気づいたとしても、彼等が社会で自立し自己を自律するための思想も技術も持ち合わせていないことである。その結果、逞しい精神は持つが自分の脳髄をフル稼働する資質を持ち合わせていないタイプの者は体力の続く限り100社どころか200社を超える応募先企業から不採用通知を(あるいは、無回答という「不採用通知」を)延々と受け取ることになり、他方、繊細で豊かな感受性は持つものの状況にトライする闘争心に乏しいタイプの者は僅か数社から採用を拒絶された後、ひきこもりの生活に入っていく。これが我が国の現状の一斑ではなかろうか。

400万人のフリーターと100万人のひきこもりに象徴される(内閣府による2001年=平成13年現在の調査)、若者を巡る就職と就労の現下の忌々しき状況の原因は戦後民主主義教育である。大東亜戦争後、猖獗を極め跳梁跋扈した戦後民主主義が撒き散らした「自由と平等と個性の尊重」というイデオロギーの毒素が若者の世界観を劣化させたのである。要は、就職と就労で失敗しないかどうかは(将来的にも成功し続けるかどうかは、運と、更に高次の能力と資質の有無によるだろうけれど、)、私の見るところほぼ家庭の教育力と相関関係にある。しかし、現下の若者を巡るこの忌々しき事態の原因が戦後民主主義だと言うだけでは、今そこにある問題を解決することには結びつかないだろう。彼等が反省したとしても、彼等にはある種の思考の技術が圧倒的に欠けているのだから。そう私は考えている。以下、目的を構築するための基本的な思考の技術の紹介を行なう。


◆働くための技術としての目的の構築
須らく「目的」というものは、足を動かして情報を集め脳髄に汗をかいて自分で構築しなければ見つからない。幸福の青い鳥は元から家の中にいたのかもしれないが、彼等が自分で悩み考えながら歩き廻ったからこそ見つけることができたのではないか。キャリアゴールの構築とキャリアプランの設計という知的営みに着眼する場合、正に、「人間は考える葦」ではなく「考える脚」なのだと思う。要は、ハートと脚の動かない奴には青い鳥は見えない。

目的構築の思考は2重の構造を取る(もちろん、これ以外にも多様な目的の構造分析が可能だろうから、私は他の理解の仕方が間違いとは言わない)。即ち、①情報の種差の観点から見た目的構築の営為と、②行動への影響の種差という観点から見た場合とを私は分けている。


(1)情報から見た目的構築の営為
行動の目的や行動を選択する場合に参考となる情報にはどんなものがあるだろう。それは、現在と将来の状況認識、認識したそのような状況の中で自分が達成したいと願う事態の認識、その達成したい事態を具現するためにクリアしなければならない項目、それらのクリアすべき項目間の関係とクリアすべき項目の細目、および、これらの言わば重要な情報とそれ以外の情報を峻別するための情報であると私は考えている。即ち、

●目的を構築するための情報のカテゴリー(情報の種類★内容)
Assumption (現在と将来の状況)
Objective (自分が達成したいと願う事態)
Major Factor(Objectiveを具現するためにクリアしなければならない諸項目)
Minor Factor(諸 Major Factor 間の関係とある Major Factor の細目)
Other Information (上記の重要な情報とそれ以外の情報を峻別するための情報/ならびに、重要ではない情報)


これらの情報の種差を自覚した上で、AssumptionからMinor Factorまでの4種類の積み木を何度も何度も何度も積み上げ、自分が納得できる作品(=就労目的の思想体系)を作ることが就労目的の構築という作業である。その最後の自分が納得できる作品のObjective部分が応募先企業人事担当者に提出する狭義の「就労目的」そのものではあるが、それは他の3種類、否、Other Informationを加えた他の4種類の情報と緊密に結びついている。蓋し、就職面接とは応募者が提出する狭義のObjectiveがどれほど多くの情報にサポートされているか、そして、Objectiveと他の項目がどれくらいきちんと結びついているかが確認される機会のことである。

冒頭で紹介した22歳のしっかりものの風俗嬢の方は、既婚のプータロー君がそろそろ親の収入があてにできなくなったので本格的に働かねばならないこと、普通のサラリーマンとしては就職も就労も難しいという状況認識(Assumption)の下、彼女が知っている(あるいは紹介できる)幾つかの職業をリストアップして(Major Factor)、その各々の職業のメリットとデメリット(収入、精神的・肉体的しんどさ・次のステップを考えた場合の有利不利)を分析していたのである(Minor Factor)。この作業を経た後に彼がどんな職につくべきか(Objective)をアドヴァイスすることは彼女にとっては容易いことだったに違いない。もっとも、25~26歳のプータロー君が彼女の目的構築の作業に、残念ながら、そして、残酷ながらついていけたとは思わないけれども。

而して、何を考えれば就労目的が構築できるか、自他ともに納得せしめうる就労目的を構築するためにはどんな情報が足りないか(私がキャリアカウンセリングの際によく使う表現で言えば、「今、あとどんな駒があったら敵玉を詰ますことができるか」、あるいは、「どんな情報がわかればこの数学の問題を解くことができるか」)を脳髄に汗して考え脚を棒にして情報を入手することが大切なのである。


(2)行動から見た目的構築の営為
目的は行動から生じ、行動は目的達成に向かい収斂する。では、行動に影響を与える目的(ここでは用語の混乱を避けるために「目標」と呼ぼう。)はどんな意味構造を取っているのだろうか。私はそれを、目標(狭義の目標=Goal)が生み出される、原体験や実体験(Motivation)、目標達成が可能か不可能かの状況判断の資料となる実体験(Achievement)、および、そのような目標を達成することの世間的と社会的な意義(Contribution)の統一体と考えている。蓋し、MotivationからAchievement、および、Contributionが作り出す思考の編物の中にその作品の一部として組込まれて初めてGoalは自覚的な自分の行動を導く「導きの星」たりうる。私はそう考えている。

残念ながら、そして、残酷ながら、就職と就労で失敗を繰り返すタイプの日本の若者には、素材としての体験(即自的な記憶や体験)はあっても自己の行動の指針となる反省され体系化された経験(自覚的で向自的な知識や経験)は乏しいと私は断言する。件の小田急ロマンスカーで一緒になった22歳のしっかりものの方は、自己の行動の指針としての目的-目標の体系化を自力で達成したのだと思う。「何、(どんなに困っても出張ホストとかで、)、身体を売るのは嫌だと。そんならお前死ねや」とか「朝早いのは自信がないし、遅刻とか欠勤する自分が許せんから、私、パパ(パトロンかつ彼女の職場のオーナー)に頼まれても<早朝>は断るもんね」、あるいは、「結局、お客、喰いもんにしたら2~3年で店もあたしらも終りさ。店も女の子も回転速いよ」という言葉の断片を聞いただけだけれど、私はそう確信した。

就職採用面接とは、君は何をやりたいの(Goal)。また、何でそう思ったの(Motivation)。ところで、君は我社にどんな貢献をしてくれるの(Contribution)。そのGoalとContributionはどんな関係にあるの。最後に、君のContributionとかGoalを君が達成できるという根拠を教えてよ。そして、今自分に足りないと思う能力とか経験とか知識があればそれも教えてくれるかな、ついでに、何で自分にはそんな能力が足りないと思ったかもね(Achievement)ということを応募先が聞く機会である。それは、行動を導くであろう応募者の目的-目標の体系を確認する作業に他ならない。

新宿歌舞伎町と新宿三丁目で自立されている件の22歳のしっかりものの娘さんは、文字通り、18の頃から身体をはって自分でこのような目的構築の技術を獲得し、行動の指針となる目的-目標の体系を構築されたと私は思う。だからこそ就職相談に適確に応じらたのだろう。



(2005年2月27日:yahoo版にアップロード)


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秀逸なショートストーリー

これは、就職にちなむショートストーリーの体裁を取っていますが、人生で決断を迫られた時の、思考の技術でもあるような気が致しました。「思考の技術」と呼ぶと、何か安手な響きもありますが、高級な思考というものが、もし、あるとすれば、それもまた、深く分析・思考すれば「思考の技術」の積み重ね、もしくは高度な「思考の技術」に過ぎないのかなとも、考えた次第です。ミケ

写真も秀逸

エントリの冒頭にありますリクルートスーツに身を包んだ女性の後姿の写真ですが、これもまた背景と響きあって秀逸な作品だと思います。

まことに失礼なお尋ねですが、松尾先生が、ご自身で撮影されたのでしょうか?
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