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法律の<KABU>基本書披露




前々から「KABUの法律の基本書を教えて欲しい~!」という要望をいただいてきました。ただ、『合格者1,000人に聞きました! 司法試験合格者が使った基本書』とかなら、(流行廃りを知ると言う点でも)まだいかほどかの意味はあっても私個人が使った基本書(≒「専門家の卵用の体系的入門書」)を披露しても何の意味があるのと思い記事にしてきませんでした。而して、今回、「海馬之玄関ブログの記事を読む上で<著者>のバックグラウンドが分からないと気持ちが悪い、だから教えて欲しい」と重ねて要望いただき背中を押された。ということで、There you go♪

■前口上あるいは取り説
①KABUの修業時代は「1980年~1990年」と今から約30年~20年前の大昔のこと。他方、②KABUは、一応、憲法・法哲学の研究者を目指していた者であり、また、実務家としては民事訴訟法が専門。よって、それらの領域では、逆に、現在最新のテキストも含め大凡の「基本書」には目を通しています。而して、下記リストは次の基準で選定することにしました。

いずれにせよ、下記リストは「資格試験受験者」用というより、ブログ等で時事を俎上に載せるためもあり、「法律を(もう一度)勉強したい、鴨」という法学再入門希望の方に参考になる(鴨)という程度のものであることは予め明記しておきます。尚、法哲学に関しては選定基準の下にURLを記した拙稿をご参照ください。

・その領域の体系的知識を習得する上で使用した
・現在でもその領域の諸問題を考察する際の体系的理解の基盤となっている
・専門書は除き、基本書(専門家の卵用の体系的入門書)に限定
・概説書的基本書(A)と本格的基本書(B)に分ける
・現在の初心者に薦めるもの(C)が別にあればそれも記す
・リストの性格から「絶版」であるかどうかは気にしない
・私自身の専門性が低い商法と行政法、マニアックな著作権法と国際私法は割愛
    

・法哲学の入門書紹介 でも、少し古いよ(笑)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/136992.html



■KABUの法律の基本書リスト
▼法学入門-実際は少なくとも民法・憲法・刑法の(A)を読んだ後に読むべき、鴨
・(A)伊藤正己   『近代法の常識』(有信堂)
・(A)林修三    『法令解釈の常識』『法令用語の常識』(日本評論社)
・(A)末弘厳太郎  『法学入門』(日本評論社)
・(A)末弘厳太郎  『民法雑記帳(上)(下)』(日本評論社)
・(A)我妻栄    『法律における理窟と人情』(日本評論社)
・(A)碧海純一   『法と社会』(中公新書)
・(A)井上茂    『現代法』(日本放送出版協会)
・(A)イェーリング 『権利のための闘争』(岩波文庫)
・(B)麻生建    『解釈学』(世界書院:KABUの種本の一つです)
・(B)ヴィノグラドフ『法における常識』 (岩波文庫)
・(B)カー     『歴史とは何か』(岩波新書)
☆最後の2冊は原書(英語)も容易に入手できますので、是非、英語でも
 読まれることをお薦めします。

▼憲法
・(A)山本浩三 『憲法』(評論社:同志社大学の当時の教科書)
・(A)宮澤俊義 『憲法』(有斐閣全書:小品だが今でも読むに値する名著)
・(B)橋本公旦 『憲法』(青林書院新社:ドイツ流憲法学の秀峰)
・(B)伊藤正己 『憲法』(弘文堂:KABUが最も好きな一冊)
・(B)佐藤幸治 『憲法』(青林書院)
・(C)長谷部恭男『憲法』(新世社:2010年現在の通説を体現する基本書)

▼民法
・(A)我妻・有泉『民法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(一粒社→勁草書房)
・(B)四宮和夫 『民法総則』(弘文堂)
・(B)我妻栄  『民法講義』(岩波書店)の『総則』『物権』『債権総論』
・(B)星野英一 『民法概説』(良書普及会)の『序論・総則』『物権・担保物件』『債権総論』
・(C)内田貴  『民法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』(東京大学出版会:チャート式みたいで実に読みやすい)

▼刑法
・(A)藤木英雄 『刑法(全)』(有斐閣双書:小品だが今でも読むに値する)
・(B)団藤重光 『刑法綱要総論』(創文社:KABUが法学部生の最初の3年間嵌った一書)
・(B)大谷實  『刑法講義各論』(成文堂:KABUの師匠筋の一書)
・(C)林幹人  『刑法総論』『刑法各論』(東京大学出版会:KABUと感性の相性が抜群)

▼民事訴訟法
・(A)中田淳一 『民事訴訟法概説』(有斐閣双書)
・(B)三ヶ月章 『民事訴訟法』(弘文堂)

▼刑事訴訟法
・(A)平場安治 『刑事訴訟法』(日本評論社:学燈上はKABUの師匠筋)
・(A)平野龍一 『刑事訴訟法概説』(東京大学出版会)
・(B)平野龍一 『刑事訴訟法』(有斐閣全集)
・(B)団藤重光 『刑事訴訟法綱要』(創文社:本書の理論の形式美に三島由紀夫が惚れた話は有名)
・(C)田宮裕 『刑事訴訟法』(有斐閣:実務と理論、現実と理想の「架け橋=刑訴」を体感できる一書)

▼その他
・(A)田中和夫 『英米法概説』(有斐閣:恩師の推奨「教科書」でしたが結果All rightでした)
・(B)伊藤正己 『英米法』(筑摩書房:2ヵ月でボロボロになるまで読み、買い換えた思い出の一書)
・(B)兼子仁  『教育法』(有斐閣全集:敵ながら天晴れの一書)
・(B)田畑茂二郎『国際法Ⅰ』(有斐閣全集:これまた敵ながら天晴れの一書)
    

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■法律オタクの小言、あるいは、老婆心的アドバイス
昔、司法試験委員(憲法3名+刑法1名+刑事政策1名+刑事訴訟法1名)をされていた先生方と飲んでいるとき、「基本書なんかなんでもえーねん」という話をしばしば伺いました。もちろん、()最低限の情報が網羅されていること(司法試験にせよ公務員試験にせよ、法律に造詣の深いビジネスマンになるにせよ、その目的にあった「最低限の情報」ですが)、()(()に含まれるかもしれませんが)一応、最新の学説の動向や現下の現実的課題について触れられているか、それらが鳥瞰・予感・復元できる情報が盛り込まれていることは「基本書」のマストでしょう。しかし、現下の日本の出版環境下であってもそのようなマストを満たした「基本書」はどの分野でも複数存在する。そして、TOEIC対策でも法律の学習でも、「10冊の書籍を読むよりも、1冊を10回、それが少し不安なら2冊を5回通り読むほうが遥かに知識は身につく」ことは常識でしょう。

そうなれば、基本書を選択する基準としては、むしろ、選択する側の主観的・個別的な要因が大きくなると思います。それはある意味、そう、兎と出合ったアリスが全く偶然に不思議の国に迷いこんだのと同じことなのかもしれません。そして、その要因とは、例えば、次のような理由です。

・履修科目の教科書に指定されていたのでとにかく一度は読んだことがある
・著者が「恩師筋/親戚筋/親の友人」だから親近感を感じる
・少数説より多数説や通説の立場で書かれたものが安心安心
・多数説や通説より少数説の立場で書かれたものが興味津々
・大部のものが安心感もあり「彼氏/彼女」にも自慢できる
・小部のものが気楽でもあり「彼氏/彼女」との時間も多く確保できる
・著者の感性や理路と相性がよいのか読むのが苦にならない
・ページ割や註付けが読みやすくて好感がもてる
    


私の場合、権威主義的で、かつ、身内贔屓の小賢しい人間ですので、最初は「恩師筋の基本書」か「当時最も読まれていた基本書」から入りましたが、結局、「好き嫌いは説明できない」「好きなものは好き/嫌いなものは嫌い」という当然の理屈からか、大体、どの法域でも半年足らずで一生涯の「基本書」というか「基本書の著者(の系統)」が見えてきたように思います。

さて、法律の学習。これこそ「基本書なんかなんでもえーねん」という箴言の「真意=顕教」なのだと思いますが、要は、法律の学習というのは「法」を学ぶことであり、基本書はあくまでもそのための道具に過ぎないということ。つまり、学ぶべきは「法規の条項」であり「判例」であり「行政やビジネスの実務のあり方」ということ。これがよく誤解されている点だと思います。蓋し、法律の基本書は「観光ガイドブック」や「地図」に過ぎず、大切なことは「現地の風景=法規・判例・実務慣行」ということです。すなわち、基本書はそこそこにして、何より(諸外国の法制も加えた)法規と判例を学ぶべきでしょう。

・法律の基本書=観光ガイドブック
・法規・判例・慣行=観光地の風景


而して、「基本書なんかなんでもえーねん」という箴言の先にはもう一つの教えが、「顕教」ではなく「密教」とも言うべき言外の認識があるのではないか。すなわち、法規・判例・慣行さえも、実は、学ぶべき<法>そのものではなく、<法>を知るための<メディア>に過ぎないという経緯が横たわっているのだと思います。蓋し、実際に、ある観光地を訪れても「見れども見えず」「聞けども聞こえず」という人は少なくない。禅家がよく口にする「花は紅、柳は緑」(出典は 蘇東坡「柳緑花紅真面目」)ではありませんが、法規・判例・実務慣行をいかに勉強しても、


(甲)裁判所が国会が実務慣行がどのような判断・立法・取り扱いをあるイシューについて行なうのか
(乙)裁判所や国会や実務慣行の新たな判断・立法・取り扱いによって社会がどう変化するのか
(丙)ならば、裁判所は国会は実務慣行は本来どのような判断・立法・取り扱いをすべきなのか
    

これらを、事実と根拠を挙げながら整合的・論理的に語ることができなければ、その人は「花=法規」や「柳=判例」を見ても「花=紅」であることも「柳=緑」であることも分かっていないのではないかということです。畢竟、「法」を通して<法>を「見る=予見」できる、具体的豊富で論理整合的な「力=知識」を法学の知識というのではないか。と、そう私は考えています。ならば、正に、「基本書なんかなんでもえーねん」なのです。




と、書いてしましましたが、結果的には、上に挙げた基本書は現在の私にとってはかけがえのない「恩師」であり「相棒」であり、少なくとも、<戦友>です。蓋し、唯物史観的な「歴史法則」なるものや労働価値説的な「(少なくとも共時的には)普遍的な交換価値」なるものは存在しないけれど、歴史的偶然性や歴史的特殊性・非対称性の中で自生的に展開した「生態学的社会構造」は諸国民や諸民族の生きてある現下の社会の中に成立している。また、個人の行動選択もまた偶然の集積ではあるが、その選択の「結果=事態」はその個人の責任であり、また、その「結果=作品」はその個人の人格と一体化しており分離不可能である。

ことほど左様に、私にとってこれらの基本書を選択したことが偶然の帰結であっても、これらが現在の私の思考や思想の一部を構成していることもまた事実。ということで、「豚もおだてりゃ木に登る」式の記事でしたが、改めてリストアップしてみると<戦友に対する初恋>のようなアンビバレントな情を感じないではないです。而して、よろしければ、いろんな分野での皆さんの<初恋の戦友>を紹介していただければ嬉しいと思います。

It's your turn, please(笑)







(2010年3月15日:yahoo版にアップロード)

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