密約と民主主義の正常な関係




些か旧聞に属しますが、所謂「米軍艦船による核持込密約」を俎上に載せた海外報道を紹介します。而して、この記事を批評する私の切口は「密約と民主主義」。蓋し、本編記事タイトルでも想像できると思いますが、私は「すべての密約が民主主義の理念から見て否定されるべきだ」とは考えません。このことを念頭に置きながら当該の海外報道を読んでいきたいと思います。

紹介する報道の出展はNew York Timesの”Japan Says It Allowed U.S. Nuclear Ships to Port”「核兵器を搭載した米軍艦船の入港を容認していたと日本政府が認める」(March 9, 2010)。New York Times東京支局長Martin Fackler氏の署名記事。あの有名な反日支局長のOnishi氏の後任の方。

而して、(イ)Fackler氏が(普天間問題で米国世論が鳩山民主党政権に爆発寸前の現在でも)極めて稀な民主党応援団の一員である経緯、そして、(ロ)国際法の観点からは、「米軍艦船による核持込の密約」なるものは<密約>などではないこと(要は、日米の協定を読めばソ連も支那も、英国もフランスも「核兵器を搭載した米軍艦船の日本領土内の港湾施設に入港すること」は当然のことと考えていたこと)、よって、例えば、所謂「非核三原則」の提唱を主な理由とした佐藤栄作元首相へのノーベル平和賞授与は今回の「密約暴露」によっては、少なくとも、国際的には何の影響も受けない経緯、更に、(ハ)日本の核武装と現行憲法を巡る私の考え、および、(ニ)民主主義に関する私の基本的理解。この四点に関しては下記拙稿をご参照いただければ嬉しいです。

畢竟、所謂「公開外交」なるものの限界性の根拠たる「国内政治モデル」と「国際政治モデル」の差異は、実は、国内政治においても認められるのではないか。この点が本稿で皆さんと一緒に考えたいポイントです。


・民主党政権を評価する稀有な海外報道
 ☆鳩山政権は脱官僚支配ですでに成果を上げている?(上)~(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59421755.html

・「佐藤首相は米国に対支那核攻撃の準備を要請」
 ☆核兵器の物神性から自己を解放して日本は可及的速やかに核武装に着手せよ(上)(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59321403.html

・核武装反対と核武装研究の同時推進論
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/41156737.html

・護憲派による自殺点☆愛敬浩二『改憲問題』(1)~(8)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/34986878.html

・民主主義とはなんじゃらほい(上)~(下)
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/53753364.html


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Japan ended decades of denials on Tuesday by confirming the existence of secret cold war-era agreements with Washington that, among other things, had allowed American nuclear-armed warships to sail into Japanese ports in violation of Japan’s non-nuclear policies.

The existence of the pacts, known in Japan as the “secret treaties,” has long been known from declassified documents in the United States and the testimony of former American and Japanese diplomats. But successive prime ministers denied their existence, turning the agreements into a symbol for many Japanese of how Liberal Democratic governments had turned their country into a stunted democracy run without full consent by the public.

After ending the Liberal Democrats’ nearly unbroken 54-year grip on power last summer, the new Democratic Party government opened an investigation into the pacts as part of their promised housecleaning of Japan’s postwar order. Exposing the truth about their nation’s secret dealings with the United States was also part of Prime Minister Yukio Hatoyama’s pledges to put Tokyo on a more equal footing with Washington.


火曜日【2010年3月9日】、日本が何十年間もその存在を否定してきた冷戦期の米国政府との秘密協定の存在を認めた。而して、他の一連の秘密協定の一つであるその問題の協定は、日本の非核三原則を破るものであるにかかわらず、核武装した米軍艦船が日本の港に寄港することを容認する取決めなのである。

この秘密協定の存在は、ちなみに、日本では「密約」と呼ばれているのだけれども、その「密約」の存在は、機密情報扱いから除外された公文書類、そして、日米両国の元外交官達の証言によってアメリカでは長らく周知の事実だった。しかし、日本の歴代の首相はその存在を否定してきたのであり、而して、その秘密協定は多くの日本人にとって、自民党政府がいかに民主主義が未発達な状態にこの国を止まらせてきたか、換言すれば、自民政権下においては、日本における民主主義がいかに一般の国民大衆からの同意、すなわち、十全な情報を与えられた上でなされた同意を欠いた所で運営されてきたかを象徴する事象になっていた。

昨夏、54年もの間ほとんど途切れることなく続いた自民党支配が幕を閉じた後、新しく政権の座についた民主党政権は、第二次世界大戦後の日本の支配秩序を大掃除するという彼等の公約を実現する一環としてこの秘密協定の調査を開始したのだ。他方、アメリカと日本が結んだ秘密協定が如何なる内容のものであったかを暴露することは、ある意味では、鳩山由紀夫首相が公約してきた、日本をアメリカとより対等な立場に立たせるという彼の方針の一部面でもある。
  


This fed concerns among some in Washington, particularly conservatives, that revealing the treaties was part of an effort by Mr. Hatoyama’s administration to push away from the United States.

On Tuesday, the foreign minister, Katsuya Okada, emphasized that exposing agreements made in the 1960s would not affect Japan’s current security alliance with the United States, which has some 50,000 military personnel based here. Rather, he said the investigation was about restoring public trust in the government by ending decades of dishonesty and backroom dealings by Liberal Democratic leaders. ・・・


日本の民主党政権が推し進める日米間の秘密協定の調査と暴露という動きを目にして、米国政府の中には、就中、保守派の中には、それらの協定の開示は、鳩山氏の政権がアメリカから距離を取ろうとする(push away from)試みの一斑ではないかという懸念を一層強くしている関係者も存在する。

しかし、火曜日、岡田克也外務大臣は、それら1960年代に結ばれた協定を開示することが、現在の日米の同盟関係に影響を与えることはあり得ないと強調した。ちなみに、日米間の安全保障協定に基づき、アメリカは5万人規模の将兵を日本に駐留させている。而して、岡田氏は、秘密協定の開示は現在の日米安全保障体制に影響を与えるどころか、秘密協定の調査とその結果の公表によって、この何十年かの間、自民党政権による不名誉な、かつ、密室での取決めが続いてきた事態が終わることで、一般国民の政府に対する信頼が回復しつつあると述べた。(中略)
    


Political experts agreed that exposing the pacts would have no immediate effect on the alliance with Washington, which in the early 1990s removed nuclear weapons from most of its warships.

However, they said Tuesday’s findings could push the Japanese public to face one of the biggest contradictions in Japan’s postwar diplomacy: the reliance of this avowedly non-nuclear nation on the United States’ nuclear deterrent for its security. ・・・


政治に詳しい識者もこれらの秘密協定の公表が直ちに米国と日本との同盟関係に影響を与えることはないと考えている。というのも、米国政府は1990年代の初頭にはその大部分の軍の艦船から核兵器を撤去したのだから。

他方、火曜日に公表された事実によって、日本国民は日本が抱える戦後最大の矛盾の一つに正面から向き合わなければならなくなるのではないかとも識者は見ている。その矛盾とは、すなわち、安全保障に関する限り、この日本という非核政策を名言している国が、実は、アメリカの核抑止力に依存しているという現実である。(中略)
   


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Mr. Okada, the foreign minister, seemed to skirt that contradiction in announcing the findings on Tuesday. He said exposing the pacts would not change Japan’s postwar policy of not making, owning or allowing the entry of nuclear weapons. At the same time, he said the agreements were no longer needed because American ships had stopped carrying nuclear weapons.

But he refused to answer questions about what would happen if the United States were to try to bring in nuclear weapons in the future. He also left vague whether American warships had actually brought nuclear weapons into Japan in the past. He said there was no evidence, but the possibility could not be denied.

Indeed, his comments often switched between reassuring the United States about the security alliance and acknowledging the strong public aversion here to nuclear weapons. Japan is the only country to have ever suffered an atomic attack, when the United States bombed Hiroshima and Nagasaki at the end of World War II.


岡田外相は、秘密協定の確認を火曜日に公表した際、この矛盾を直視するのを避けたように思う。秘密協定の公表によって、核兵器を作らず・持たず・持ち込ませずの三項目を内容とする戦後日本の政策を変えることにはならないと述べ、同時に、アメリカが最早その艦船に核兵器を搭載していない以上、当該の秘密協定もまた最早無用の長物でしかないとも岡田氏は語った。

しかし、岡田氏は、もしアメリカが将来核兵器を持ち込もうとした場合には日本政府はどのように対応するのかという質問には答えなかった。而して、米軍の艦船が過去実際に核兵器を日本に持ち込んだことがあるのかどうかということについても彼は曖昧な対応に終始する。過去の持込の有無についてはそれをどちらかに確定する証拠はないが、確かに、実際に核兵器が持ち込まれた可能性を否定はできない、と。そう岡田氏は答えたのだ。

畢竟、岡田氏の発言は、アメリカに対して日米同盟が盤石であることを確認することと、他方、日本国民の核兵器に対する強い反感を認めることとの間でしばしば揺れ動いている。日本は、第二次世界大戦末期、アメリカが廣島・長崎に原子爆弾を投下した世界で唯一の核攻撃を被った国なのだから。
   


Tuesday’s findings represent the work of two separate teams that searched Foreign Ministry archives: one an internal ministry group and the other a committee of outside scholars. ・・・

The report said the committee had not found a formal signed treaty that allowed nuclear-armed American warships into Japanese ports. But it said there had been “an unspoken agreement” with the United States that Tokyo would not ask whether they had nuclear weapons on board. ・・・

火曜日に公表された事実は、外務省の記録文書を調査した個々に独立した二つのチームの調査結果が反映されたものである。而して、その二つのチームの一つは外務省内部の調査グループであり、他の一つは外部の研究者によって構成された調査委員会。(中略)

火曜日に公表された報告書によれば、核兵器を搭載した米軍艦船が日本の港に入稿することを容認する協定、すなわち、担当者が公式に署名した文書を調査委員会は見つけることができなかったらしい。しかし、報告書は、日本政府が米軍艦船が核兵器を搭載しているか否かをアメリカ側に問合せをすることはないという「暗黙の了解事項」がかって日米間には存在した。と、そう記されている。(後略)
    


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■KABUコメント

ウィルソン第28代アメリカ大統領は、第一次世界大戦(1914年7月28日-1918年11月11日)の末期、1918年1月8日に行なったアメリカ連邦議会での演説の中で「平和14ヵ条:Fourteen Points Speech」を発表しました。その劈頭第1条に曰く、

Open covenants of peace must be arrived at, after which there will surely be no private international action or rulings of any kind, but diplomacy shall proceed always frankly and in the public view.

開かれた形で到達した開かれた平和の盟約。その締結後は、いかなる種類の秘密の国際的合意もあってはならず、外交は常に率直に国民の目の届くところで進められるものとする。
    

就任早々国連総会に出かけていき、できもしないくせに「CO2の25%削減」を勝手に<公約>してきたどこぞの国の首相とは流石に違い、ウィルソン大統領はアメリカの国際連盟加盟では躓いたものの、彼の「平和14ヵ条」は、()第一次世界大戦の講和原則、()国際連盟の構成原則、そして、()国際連合の運営原則として大きな影響を国際政治に与え続けています。

而して、「平和14ヵ条」第1条から見れば、日米間の「密約」なるものは断じて許されない。少なくとも、(アメリカで機密文書の指定解除された時点か、アメリカ政府が米軍艦船からの核兵器撤去を決断した時点か、その「適当な時期=適切かつ妥当な時期」がいつであったかについては異論があり得るとしても)それが「密約」である必要がなくなった「適当な時期」以降は「密約」は許されないのでしょうか。

より正確に言えば、①「核兵器の持ち込み=核兵器の恒久的な配備」のことであるとアメリカ(も日本を除く世界中の国)が了解していること、②日本はアメリカが「核兵器の持ち込み=核兵器の恒久的な配備」と考えていることを知っていたけれど、国内向けには長年に亘り「核兵器を持ち込ませず=核兵器を搭載した観戦や航空機の寄航・着陸も認めていない」という前提でアメリカにも対応していると<嘘>をついてきた経緯を「適当な時期」に表明すべきだったのでしょうか。「平和14ヵ条」第1条からはそう言えるように思われます。

けれども、国際連盟から国際連合に移行する国際政治のダイナミズムの中で、この「平和14ヵ条」第1条には厳しい反省が加えられた。毀誉褒貶の激しい方ですけれど、ある識者はこう書いておられます。

ウィルソンは、一国の運命にかかわるような重大事が、少数の指導者の独断や秘密の話しあいで決められるのは、近代民主主義の原理とあいいれないことだと固く信じていた。伝統的秘密外交のかもしだす暗さと陰謀的な性格に反逆した彼は、すべてを公開の自由討論で決定する国内の民主主義政治の延長線上に、国際政治を置こうとした。かれの「公開外交」への宿願は、いわゆる「平和14ヵ条」宣言の第1条の古典的表現として結実した。

しかし、ウィルソンには、外交交渉の最終段階において同意された協定や条約を公開することと、交渉の過程において非公開の話しあいをもつことが、民主主義の枠内で両立できることが十分に把握されていなかった。

外交の民主的コントロールは、交渉の基本的な方針を国民的な討論によって決めた後、それにもとづいて結ばれた協定を公開して国民の承認を求めることによってなされるといえよう。だが、交渉の過程そのものを公開してしまうことは、交渉当事者の柔軟な動きやかけひきを不可能にしてしまい、その結果、交渉は大向こうを意識した非妥協的なものになりがちである。つまり、外交のすべてを公開主義でつらぬくことは、可能でもないし、望ましくもない。・・・皮肉なことに、公開外交の原則は、その主導者ウィルソン自身が指導的な役割を果たしたパリ講和会議(1919年)において、完膚なきまでに破られたのだった。

出典:明石康『国際連合』(岩波新書黄版, pp.168-169:cf.新赤飯, pp.97-98)
    


私は、明石さんに同意します。而して、「条約は公開-交渉は公開交渉と秘密交渉の併用」という明石提言の線を越えて、


(a)「条約」の中に「秘密協定=密約」が存在することも、

(b)当該の政治指導者や政権与党が政治的責任を負う覚悟があるのならば、要は、協定相手国からの情報リークや政権交代時に政治責任を追及されるリスク、なにより、協定相手国が「秘密協定」の存在を否定しそれを反故にするリスクを時の政権が負う気概と計算があるのならば、

(c)例えば、ISOの如き文書登録管理制度を導入し、かつ、原則、安全保障と領土交渉は60年、その他の条約は一律30年後の関係全文書の公開等の制度運用を貫徹するならば、憲法と社会思想の観点からも容認されるのではないか
 


と、そう考えています。蓋し、「秘密協定=密約」は民主主義の理念に反する。それは間違いない。けれども、「実定憲法=現行憲法」の運用において、民主主義よりも遥かに重要な価値である「国民の生存」「国家の主権」「民族の伝統」を保持するためには、否、理念レベルではない現実レベルの民主主義を守り抜くためにも「秘密協定=密約」が有効であり必要であり不可欠であるならば時の政治指導者と政権は「秘密協定=密約」を結ぶことが許されるし、結ぶべきでさえある。

畢竟、「秘密協定=密約」の必要性は、冷戦崩壊後の今日でも、否、日本国民を拉致しておいて毫も悪びれないどこぞの国、否、比較的少数のカルト集団やテロリストグループが東京都心の地下鉄構内でサリンを散布し、世界最強の国の中枢にハイジャックした民間旅客機で自爆テロを敢行できる、そんな、資金的にも技術的にも情報的にも「大量破壊兵器入手」の敷居が下がっている冷戦崩壊後の現下の世界でこそ高まっているの、鴨。と、そう私は考えています。



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(2010年4月16日:yahoo版にアップロード)

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