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在特会「京都朝鮮学校抗議事件」を巡る憲法論と政治論




昨年12月、京都市の管理する公園を不法に占拠している朝鮮学校に対する在日特権を許さない市民の会(在特会)が行なった抗議行動に関して在特会のメンバー4名が逮捕されました。本稿は、「①公園の不法占拠→②抗議行動→③威力業務妨害罪での逮捕」というこの一連の事象を憲法を<補助線>にして考えた覚書です。


まずは事実の確認。朝日新聞と読売新聞はこう報じています。


◎在特会幹部ら4人逮捕  京都府警、朝鮮学校の授業妨害容疑

京都朝鮮第一初級学校(京都市南区)の前で、「日本から出て行け」などと拡声機で叫んで授業を妨害するなどしたとして、京都府警は、在日特権を許さない市民の会(在特会、本部・東京)の幹部ら数人から、威力業務妨害などの疑いで近く事情聴取する方針を固めた。

捜査関係者によると、在特会幹部らメンバー約10人は昨年12月4日昼、京都朝鮮学校の周辺で一時間近くにわたり拡声機を使って「日本人を拉致した朝鮮総連傘下」「北朝鮮のスパイ養成所」「日本から出て行け。スパイの子ども」などと怒鳴り、授業を妨害した疑いなどが持たれている。

在特会のホームページによると、在特会は、京都朝鮮学校が、隣接する児童公園に朝礼台やスピーカー、サッカーゴールを無断で設置して「不法占拠」をしていると主張。これらを撤去したうえで街宣活動をしたとしている。(中略)

京都市などによると、京都朝鮮学校は約50年前から、市が管理する児童公園を運動場代わりに使用。市は昨春以降、許可を得ていないとして撤去を求めてきた。府警は、学校側関係者についても、都市公園法違反容疑で立件するかどうか検討するとみられる。

昨年12月の街宣活動に参加した在特会メンバーの一人は、朝日新聞の取材に「公園の無断使用は許されない。自分たちはマイク一つで、ぎりぎりの範囲でやってきた」と話している。

(2010年8月10日 朝日新聞)



◎「在特会」幹部ら逮捕
 
京都朝鮮第一初級学校の授業を妨害したなどとして、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)メンバーら4人が逮捕された10日、同校側の弁護団が京都市内で記者会見。児童らの目前で繰り返された差別的な発言について、「表現の自由を隠れみのにした犯罪行為」と指摘し、改めて在特会の活動に怒りと警戒感をあらわにした。

逮捕容疑となった街宣活動があった昨年12月4日の昼過ぎ。同校によると、校内には1~6年の約90人に加え、ほかの三つの朝鮮初級学校の児童らも訪れ、交流会を楽しんでいた。

メンバーらは同校の前で約1時間にわたり、「スパイの子ども」「日本からたたき出せ」などと拡声機でどなり続け、怖がって泣き出す児童もいた。翌日には「学校に行きたくない」と、腹痛を訴える子もいた。(後略)

(2010年8月11日 読売新聞)
    



而して、12月4日の当該の街宣活動の模様はこんな感じ。




結論から先に述べておきます。京都朝鮮学校抗議事件を巡る私の基本的な考えは次の通り。尚、在特会の主張と「在日特権」という言葉の意味に関しては下記URLをご参照ください。

・在特会
 http://www.zaitokukai.info/


(甲)在特会の基本的な主張は正しい

在特会の基本的な主張、すなわち、「在日特権に断固反対」「在日問題を次の世代に引き継がせ(てはなら)ない」(在特会『7つの約束』参照)という主張に私は全面的に同意します。

(乙)<12・4>の抗議行動は合法かつ正当

当該の抗議行動で、()在特会メンバーが行使した表現の自由は憲法論的にも最も手厚く保護されるべきタイプの「政治的表現の自由」であったこと、また、()朝鮮学校側撮影の動画を見てもそれは相手に生命・身体の危険を感じさせるものではなくまずは穏当な抗議、他方、()50年に亘り公共施設を不当に占拠してきた朝鮮学校側の違法性の大きさと悪質さを鑑みれば、日本国民が朝鮮学校に対して抗議行動を起こすことは当然のこと。畢竟、在特会メンバー4名の逮捕は「不当逮捕」以外の何ものでもないと思います。

(丙)<12・4>の抗議行動は「利敵行為」である

当該の抗議行動で在特会のメンバーが使用している言辞は品性下劣。蓋し、(甲)いかにその主張に正当性があり、かつ、(乙)その「表現行為=街宣活動」が合法で正当なものとしても、その「授業妨害=街宣活動」は、保守系市民の共感を広く勝ち取ることのできるようなものではないでしょう。而して、在特会の街宣活動は、例えば、外国人地方参政権付与の是非、所謂「高校無償化」に基づく朝鮮人学校に対する公的支援の是非を争点にした政治プロセスにおいて、それらに反対する側の主張全体を胡散臭く感じさせる。畢竟、それは正に<利敵行為>と断ずべきものである。在特会メンバーとその支持者には猛省を促したいと思います。

(丁)法廷を「在日特権の暴露と糾弾」の舞台に!

今回の逮捕は、「左翼の常套手段=法廷闘争」の機会を八百万の神々から与えられたもの。そうポジティブに考えるべきではないでしょうか。そして、在日特権を巡る日本国民の憤りは、単に、朝鮮学校や朝鮮総連のみならず、「触らぬ神に祟りなし」とばかりに見て見ぬ振りを決め込んできた京都市・京都府、旧自治省・総務省、国税庁、外務省等々の日本の腐りきった官公庁にも向けられるべきでしょう。ならば、これら諸々の行政庁のこれまでの不埒なサボタージュ振りを世間にアピールするについても「司法=法廷」という舞台は最適、鴨。裁判闘争が楽しみです。   


◆在特会の行動の合法性と正当性

上で述べた(丁)「法廷=街宣活動の舞台」については特に説明の必要はないと思います。また、(丙)「在特会=利敵行為の常習犯」という認識については、下記拙稿をご参照いただければ大凡私の真意はご理解いだけるのではないか。いずれにせよ、「日本からたたき出せ」と街宣メンバーがコールした段階で政治的には負け、すなわち、(少なくともこの件に関しては)世論の支持は在特会から離れた。と、そう私は考えています。

・世論に「外国人選挙権反対派=外国人排斥派」の印象を与える右翼分子は民主党の<別働隊>である
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59238436.html

敷衍すべきは(甲)と(乙)。蓋し、本ブログのスタンスが在特会の基本的主張と親和性があることについては下記拙稿をご参照いただければと思います。ただ、大急ぎで一点付け加えるべきは、私は在特会の多くのメンバーや支持者とは違い「朝鮮人を日本からたたき出せ」などとは毫も考えないということです。否、それは憲法論的には不可能でさえある。

・朝日新聞の「朝鮮学校」援護社説
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/59313744.html


日本が批准している「国際人権規約B規約」(1979年批准・発効)の13条前段「合法的にこの規約の締結国の領内にいる外国人は、法律に基づいた決定によってのみ当該領域から追放することができる」を紐解くまでもなく、また、現行憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規(=慣習国際法)は、これを誠実に遵守することを必要とする」を想起するまでもなく、現在の人権規約B規約の「運用慣習=国際法規」からは、その外国人が(たとえ彼や彼女が不法入国者であったとしても、一度、合法的な滞在者となった場合)、(a)生活の主な拠点を日本においており、(b)その家族もまた日本で生活していて、かつ、(c)その当該外国人が日本国の安全と安寧を脅かす反日活動に従事しているのでもない限り、彼等を追放しようとする「法律に基づいた決定」は(一般的には、主権国家の裁量権を逸脱する国際法違反の決定であり、個別日本においては)現行憲法の保障する基本的人権を侵害する違憲な決定なのです。ならば、一般論として「朝鮮人を日本からたたき出す」ことは、現行憲法下においては、否、旧憲法下であろうが現下の「国際法規=慣習国際法」を与件とする限り我が国の政治プロセスの中では実現不可能なのです。

蓋し、「朝鮮人を日本からたたき出す」ことは一般論としては不可能。けれど、


(イ)それは個別の在日朝鮮人の追放が憲法的に不可能なことを意味しない。要は、その当該の在日朝鮮人が上に記した(a)~(c)のいずれかの条件を欠いている場合(就中、拉致に関わっている、あるいは、北朝鮮ロビーとして違法な手法で日本の政治プロセスに容喙している等々の場合)、彼や彼女を国外追放することは憲法的にも国際法的にも毫も問題はない。   


加えて、確かに「朝鮮人を日本からたたき出す」ことは一般論としては不可能。けれども、

(ロ)それは「在日特権」がすべて正当なものであるとか、まして、「在日特権」の縮小・廃止が不可能なことを意味してもいません。就中、(法的な根拠のある)「特別永住権制度」も含め「合法的な在日特権」の修正や廃止は一重に立法政策の問題であり、憲法がそれらを保障しているわけではない。すなわち、その修正や廃止は政治プロセスの中で解決されるべき問題なのです(だからこそ、在特会の利敵行為は保守系市民から激しく糾弾されてしかるべきと考えます)。まして況や、公的施設の不法占拠や不当な排他的利用、課税免除や減免といった法的根拠を欠く「違法な在日特権」は、むしろ、憲法を頂点とする法体系全体の整合性維持の必要を鑑みれば一刻も早く是正されなければならないのです。   


ことほど左様に、「在日朝鮮人を十把一絡げに「スパイは国に帰れ!」と糾弾すること」は<ヘイト・クライム>タイプの表現行為であり、(繰り返しになりますが、その表現行為が「合憲-合法」としても)少なくとも、世論の共感を得る上では政治的に得策ではないと考えます。他方、「特定の公園を不法占拠している当事者に対する「在日朝鮮人による公園の不法占拠を許さないぞ!」という抗議」は憲法的にも政治的にも正当なものであり、残る課題は政治プロセスにおける「パフォーマンスの度合=世論の支持獲得のパフォーマンス」、すなわち、表現行為の品格に収斂する。蓋し、この点に留意して全体的に見れば、<12・4>における在特会の抗議行動は(「表現の品性=政治的効果」の問題はあるものの)法的には妥当なものであったと思います。


而して、表現の自由の制約の許容限度の裏面として刑法の犯罪成立要件論から<検算>してみた見た場合、京都朝鮮学校抗議事件における在特会の街宣活動は威力業務妨害罪の構成要件該当性がないか、あったとしても、その違法性の度合は可罰的違法性の高見には達していないと言うべきだと思います。実際、朝鮮学校側の動画を見ても、1時間足らずの、しかも、マイク1本の街宣活動で授業ができなかったなどは噴飯ものの言草でしょう。

加えて、朝鮮学校側による50年にも及ぶ公園の不法占拠の事実が「現在進行形」で続いていた以上、それに抗議するのは日本国民の<公民としての義務>でさえある。すなわち、件の街宣活動は違法性を阻却されるべき正当行為とも言えるかもしれません。ならば、(街宣活動が利敵行為にならないようにする配慮と訓練は、今後、不可欠としても)不当逮捕に抗しつつ、これからの法廷闘争を街宣活動の一環として利用するに如かず。と、そう私は考えています。





(2010年8月13日:yahoo版にアップロード)

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