安倍内閣総辞職記念アーカイブ(最終15回):イラク特別措置法反対☆妄想を情緒で綴る朝日新聞社説de小論文指導

iraqgirl


平成19年5月16日の朝日新聞社説 「イラク特措法―反省も総括もないままに」には呆れてしまった。朝日新聞の社説の狡猾で姑息な疑似論理には今更驚かないけれど、この社説の水準は年にそう何回もあるものではない。弊ブログの読者には何人か受験生の方もおられることもあり、小論文対策を兼ねて俎上に乗せることにした。以下、当該社説の引用。尚、先頭の番号は説明の便宜上KABUがつけたもの。

(1)泥沼化するイラク情勢に足をとられる米ブッシュ政権に、日本はどこまでおつきあいするつもりなのか――きのう衆院で可決されたイラク復興支援特別措置法の2年延長案について、こんな感想を抱く人は多いのではないか。(中略)

(2)なぜ、延長するのか。政府は国連やイラク政府などの要請によると説明している。だが、最大の理由はブッシュ政権のイラク政策を支援する姿勢を崩したくないということだろう。

(3)国会審議で、安倍首相らはイラク攻撃に踏み切った米国の判断を繰り返し弁護した。誤った戦争と認めてしまえば、自衛隊派遣の根拠が崩れると心配してのことに違いない。
(4)だが、開戦判断の根拠となった情報が誤りや誇張の産物だったことは、米国や英国自身が認めている。なによりも、開戦の理由とされた大量破壊兵器がイラクに存在しなかったことは明らかだ。

(5)にもかかわらず「正しい判断だった」とばかりに言い募るのは、知的退廃に近いのではないか。

(6)日米同盟への配慮は分からないではない。中東に石油資源を依存する日本にとって、地域の安定は重要だし、イラクの混乱を放置できないのもその通りだ。
(7)それでも、出発点での明白な誤りを認めずに既成事実の追認を続けるのは、責任ある政治のとるべき態度ではない。(中略)

(8)そんな中で、日本では自衛隊の派遣延長がすんなりと国会を通っていく。これといった総括や反省もないままに、大義に欠ける、誤った米国の政策に参画し続ける。なんとも異様と言うよりない。(中略)

(9)さらに懸念すべきことがある。航空自衛隊がイラクで何を運んでいるのか、さっぱり分からないことだ。政府は飛行回数と運んだ貨物の重量以外、何も明らかにしない。どのぐらい国連の役に立っているのか。大半が米兵の輸送ではないのか。そんな疑問も指摘されている。
(10)安全に配慮して隠すのだろうが、使われているのは日本の要員であり、資材、税金である。国会にすら詳細を報告しないのでは、文民統制が空文化していないか。

(11)政府はすみやかに自衛隊を撤収し、イラク支援を根本から練り直すべきだ。(以上、引用終了)


小論文の答案としてこの社説を一読したとき致命的なことは論旨が分断されていることと、結論(11)をサポートする論拠が欠落していることだ。この点に留意してこの「答案」の構造を分析してみよう。

<断片A1>
(1)イラク特措法への疑問→(2)イラク特措法延長の理由の推測
                  ↓                                
<断片A2>          
(3)開戦判断を日本が支持し続ける理由の推測
      ↓
(4)開戦判断の瑕疵の存在→<断片A3>
      ↓         
(5)開戦判断の瑕疵の認容と開戦判断の支持継続は知的退廃
      ↓
(8)イラク特措法の延長が坦々と国会を通過する現状は異様

<断片A3>
(4)開戦判断の瑕疵の存在
      ↓
(6)開戦判断の瑕疵とイラク問題にコミットする実益は無矛盾
          ||
(7)開戦判断の瑕疵はイラク問題にコミットしてきた既成事実
   によって治癒されない                        
―――――――――
<断片B>
(9)航空自衛隊のイラクでの活動詳細は未公表
       ↓
(10)未公表の合理性に文民統制は優先する
―――――――――
<断片C>
(11)政府はすみやかに自衛隊を撤収し、イラク支援を根本から練り直すべきだ。



朝日新聞がイラク特措法に反対しようが(1)、特措法の延長の理由をどう推測しようが勝手であり、よって、それを「ブッシュ政権のイラク政策を支援する姿勢」の堅持と捉えることも自由(2)。同様に、開戦の判断を日本政府が支持し続ける理由を誰がどう推測しようとも自由である(3)。更に、開戦判断に瑕疵があったのは事実だろう(4)。

けれども、開戦判断の瑕疵は開戦の是非判定の one of themの要素にすぎず(★下記補注参照)、瑕疵の存在が自動的に開戦の不当性を決めるわけではない(5)。また、朝日新聞も結果的に認めていることなのだが、開戦判断の瑕疵とイラク復興問題は位相を異にしており、まして、開戦から5年を経過した今、もし開戦が不当なものであったとしてもアメリカ主導のイラク復興支援体制に日本がコミットする施策がこれまた自動的に否定されるわけではないのである(6)(7)。

ならば、開戦判断の瑕疵と現下のイラク政策は1対1の対応関係にはないのだから、「(3)→(4)→(5)→(8)」の系列と「(3)→(4)→{(6)+(7)}」の系列は断絶している。また、「イラク特措法の延長が坦々と国会を通過する日本の現状は異様」(8)という社説の感慨は、(開戦判断の瑕疵が自動的に、開戦の不当性とアメリカ主導のイラク復興体制への参加の不当性を導くと考える論者の頭の中では)上記の2系列の内前者とは連結するのかもしれないが、後者とは没交渉のままである。畢竟、開戦判断の瑕疵と現在のイラク復興体制への参加の是非をダイレクトに連結するこの「答案」の理路は、「知的退廃」などという高尚なものではなく「知能の衰退」に近い。

「文民統制」の意味を間違って使用している他は、<断片B>に特に大きな問題はない。実際、小論文では憲法や経済の専門的な知識が要求されることはない。ただ、専門的な用語に関しても余りにも常識外れの誤解は採点者の印象を悪くすることはありうる。要は、知らない/自信のないテクニカルタームはできるだけ使用しないことだ。尚、文民統制を定めた現行憲法66条2項「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」を見れば(9)(10)が文民統制と直接の関連はないことは自明だろう。

この「答案」の最大の難点は、<断片C>が他のどの命題からも論理的にサポートされていないことである。おそらく、社説子は「(4)→(5)→(8)→(11)」を太い幹に、他をそれから広がる枝葉/それを支える根っ子としてこの「答案」を書いたと想像する。

しかし、繰り返しになるが、開戦判断の瑕疵と開戦の正当性、開戦判断の瑕疵と現在の日本のイラク政策の間には何ら論理必然の関係はない。つまり、(11)はこの社説の中で孤立しており、この34字を述べるためにこの「答案」が書かれたとすれば、他の約800字はすべて無意味な文字列なのだ。畢竟、小論文では朝日新聞の社説のように自己の妄想や願望を情緒的に綴るのではなく、論理を踏まえることが大切。頑張れ、受験生!


iraqsdf11



☆補注:イラク戦争は間違った戦争とは言えない
米英によるイラク戦争の開戦は、自衛権行使のパターンの一つである先制攻撃であった。而して、国際法においては、ある先制攻撃が正当なる自衛権行使とされるためには、簡単に言えば次の二つの条件が満たされなければならない。

・脅威の重大性
・脅威の急迫性


ポイントは、脅威の重大性や急迫性を認定するのは脅威を受けている側であり、しかも、その認定には<一般通常人>が判断して脅威の存在を合理的に推測できることとで十分ということだ。つまり、脅威を感じている国が自衛権を発動するに際しては、毫も本当に脅威が存在することは必要ではないのである。

「脅威の重大性や急迫性を認定するのは脅威を受けている側」である。国連憲章7章を根拠とした武力制裁の場合には、国連安保理決議を得る過程で、(客観的である保証はないけれど)少なくとも一国もしくは一国グループの意図を超える「第三国による判断が加味」される。ところが、純然たる自衛権は国連憲章からも国連安保理とは無関係に行使できる。すなわち、その場合、開戦時に自衛権行使の合法違法を判定する者は、法的には自衛権の発動を主張するその国にならざるをえない。

「脅威の重大性や急迫性の認定能力は一般通常人の判断力」である。つまり、超人的な観察眼や洞察力のある人(国家)ではなく、普通の人(国)がそれまで入手できた「資料」や「情報」をもとに推察して、急迫かつ重大な危機の存在を予想するのであれば、その予想に基づいた先制攻撃は正当で適切な自衛権の発動になるということである。蓋し、合法的な自衛権行使と不法なそれを判断する基準としてのこの「一般通常人」なるものは、具体的な個人や個々の国家ではなく、「判断の能力の基準」を定めたものに他ならない。

さて、イラク戦争の開戦。イラクの大量破壊兵器の存否に関しては、所詮藪の中の事柄ではある。しかし、米英の指導部の立場に立てば、大量破壊兵器が「確実にあるとは言えないが」、さりとて、「ないとも言い切れない」と彼等が判断したことは理解できる。他方、先制攻撃の要件の一つである「急迫性」に関しては私も疑問を持つ。その点ではイラク戦争の開戦は違法な開戦と言われても文句はいえないだろう。

けれども、かってB・C兵器を保有していたイラクには、(国連決議からまた湾岸戦争の終結交渉の協定により)、「現在、それらがないこと」_「それらをどう処理したか」を自分で証明する責任があった。よって、その証明と説明の不作為を原因に米英が開戦した側面に着目すればイラク開戦は違法とは言えない。

まして、武力制裁決議こそ安保理で採択されなかったものの、(強制的措置の行使を予想する国連憲章7章の条規と文言を散りばめた)多数の対イラク決議が採択されていたのであり、法手続きの形式的側面からはイラク開戦は違法とはいえないのである。

大量破壊兵器の不存在・イラクの証明責任・国連決議の積み重ねからは一概にイラク戦争は間違いではなかった。国際法研究者は、開戦違法論者も合法論者も大体、イラク戦争をこのように考えているのではないかと思う。尚、日本では三番目の点で「違法性が強い」と報道されてきた節もあるけれど、むしろ、この三点目が最も「開戦合法論」をサポートしていると私は考える。それもあり、欧州のメディアでは第一の点を突くことで「違法論」や「不適切論」を主張し、それに対して、米国のメディアは第二の点に力点を置いて「開戦合法論」を展開してきたように思われる。

一言で言えば、実定国際法とはこの程度のいい加減で現在の強者に有利なものなのだ。けれど、中央政府があるわけでもないのに、アメリカもロシアも従わなければならない国際的ルールが少しとはいえ存在することは、逆に、素晴らしいことだと私はいつも考えている。尚、私のイラク戦争に関する基本的な考えについては下記「再録☆イラク戦争を支持する10個」を参照ください。

再録☆イラク戦争を支持する10個の理由



(2007年5月16日:yahoo版にアップロード)

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