【自家用資料集】最高裁「国歌斉唱不起立訴訟」判決-宮川裁判官少数意見

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公立学校における、国旗・国歌の起立斉唱を教職員に命じる職務命令について、この一月余りの間に最高裁で陸続と合憲判決が出ています。当然と言えば当然のことですが、この当然の判決が出るまでいかに長い時間がかかったか、そして、石原慎太郎都知事を始め多くの<常識あるリーダー>の指導力がこの当然の憲法判断が確定する上で不可欠であったかを想起するとき、些かの感慨を禁じえません。

本稿は、当然の判決を記録した前稿(↓)に引き続き、二件目の合憲判決(最高裁第1小法廷)に際して述べられた非常識なる少数意見を記録収録するものです。しかし、「偉大なる少数意見」の書き手として有名な、アメリカ連邦最高裁のホームズ(Oliver Wendell Holmes Jr:1841-1935)判事の少数意見が、アメリカ社会が夜警国家から福祉国家に移行する時代を背景とした、「近代法から現代法への転換」を体現していたものであり、また、その法学方法論は「概念法学的な文理解釈ではなく自由法論的な社会学的法学」を志向したもの、換言すれば、「早すぎた預言者」のそれであったのに対して、国旗・国歌判決の三件2名の少数意見は、正に、戦後民主主義の惰眠を貪る者の戯言にすぎない。と、そうとしか私には思えませんでした。

・【自家用資料集】最高裁「国歌斉唱不起立訴訟」合憲判決
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60511403.html


まずは、これら一連の判決を伝える報道の紹介。


◎君が代起立斉唱、また合憲判断…最高裁上告棄却

東京都立高校の卒業式などで、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱するよう教職員に求めた校長の職務命令が憲法に違反するかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は6日、「合憲」との判断を示し、原告の元教職員13人の上告を棄却した、原告の敗訴が確定した。

君が代の起立斉唱命令を合憲とする最高裁の判決は、5月30日の第2小法廷に続き2件目。前回は裁判官4人の全員一致の結論だったが、この日は、5人の裁判官のうち宮川光治裁判官が、「命令は明白に違憲とは言えないが、必要不可欠だったかどうか、さらに厳格に審査する必要がある」とし、審理を2審・東京高裁に差し戻すべきだとする反対意見を述べた。

(読売新聞・2011年6月6日21時54分)   



◎君が代起立「合憲」3件目判決…最高裁

東京都町田、八王子両市立中学校の卒業式や入学式で、起立して君が代を斉唱するよう教職員に求めた校長の命令が「思想・良心の自由」を保障した憲法に違反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は14日、「命令は合憲」として、原告の教員ら3人の上告を棄却する判決を言い渡した。これで原告の敗訴が確定した。

君が代の起立斉唱命令に対する最高裁の合憲判決は、5月30日の第2小法廷、今月6日の第1小法廷に続き3件目。これで、最高裁の全ての小法廷が合憲の判断を示したことになる。

この日の判決は、5人の裁判官のうち4人の多数意見。田原裁判長は、起立命令は合憲とする一方、「積極的に声を出して歌う『斉唱』の強制は、君が代に否定的な歴史観、世界観を持つ人の内心の核心部分を侵害しうる」とし、審理を尽くさせるため、2審・東京高裁に差し戻すのが相当とする反対意見を述べた。

(読売新聞・2011年6月14日23時48分)    



◎君が代起立、4件目の合憲判断…最高裁

入学式や卒業式で、君が代斉唱の際に起立するよう教職員らに求めた校長の起立命令が「思想・良心の自由」を保障した憲法に違反するかどうかが争われた訴訟で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は21日、「命令は合憲」として原告の教職員らの上告を棄却する判決を言い渡した。

同種の訴訟では、すでに最高裁の全ての小法廷が合憲判断を示しており、判決は今回が4件目。

原告は、君が代斉唱の際に起立しなかったことを理由に広島県教育委員会から戒告処分を受けた同県の高校教諭ら42人で、県教委に処分取り消しを求めていた。

判決は、5人の裁判官のうち、4人の多数意見。田原睦夫裁判官は、「君が代斉唱の強制は、国歌に否定的な歴史観、世界観を持つ人の内心の核心部分を侵害しうる」として、審理を尽くさせるため、2審・広島高裁に差し戻すのが相当とする反対意見を述べた。

(読売新聞・2011年6月21日20時9分)  



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◆最高裁判所第1小法廷判決宮川少数意見収録

以下、二件目の第1小法廷(6月6日)判決に付けられた宮川光治裁判官の少数意見。蓋し、三件目と四件目の少数意見、第3小法廷の田原睦夫裁判官の反対意見については、その事実認識部分の「本件各職務命令と憲法19条との関係を検討するに当たっては、「起立行為」と「斉唱行為」とを分けてそれぞれにつき検討すべきものと考えるので、多数意見のように本件各職務命令の内容を「起立斉唱行為」として一括りにして論ずるのは相当ではない」という視点が二件目の宮川少数意見と違っているだけでそう大きな差はないと思います。

ちなみに、二件目と三件目の判決全文は下記で確認できます。

事件番号:平成22(オ)951
事件名:損害賠償請求事件
裁判年月日:平成23年6月6日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
裁判種別:判決
結果:棄却
判決要旨:
公立高等学校の校長が同校の教職員に対し卒業式等の式典における
国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた
職務命令が憲法19条に違反しないとされた事例
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110606165018.pdf

事件番号:平成22(行ツ)314 
事件名:戒告処分取消等,裁決取消請求事件  
裁判年月日:平成23年06月14日 
法廷名:最高裁判所第三小法廷 
裁判種別:判決 
結果:その他(脚下および棄却) 
判決要旨:
東京都人事委員会がした裁決の取消請求に関する部分を却下し、
その余の部分を棄却
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110614181231.pdf



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日の丸3


◆解題
この少数意見が孕んでいる問題は何か。
それは次のような朝日新聞等の認識に顕著、鴨。すなわち、

>最高裁も(ピアノ伴奏訴訟とは違い)職務命令が個人の思想および良心の自由の、
>間接的にせよ、制約になることを認めた   


これは、法廷意見の認識が、当該の職務命令は「思想および良心の制約」になる可能性があることを認めたものであり、毫も、「思想および良心の自由の制約」であることを認めたものではないことを看過している。

畢竟、職務命令が、端的には「思想および良心の自由の制約」ではないからこそ、①合憲判断基準においては厳格なテストは不要とされたのであり、よって、②業務命令には合憲性の推定がなされ、立法事実の合理性の推定がなされるがゆえに、憲法審査基準においては「必要性・合理性」のチェックのみが問題として残った。

また、②においては、その、「必要性・合理性」を否定する(民事訴訟法上の意味では必ずしもありませんが)、いわば<挙証責任>は上告側にある。而して、しかるに、彼等は、当該職務命令の「必要性・合理性」をも凌駕する程の権利侵害性の証明、すなわち、「具体的な原告の思想の中身と当該行動の「不可避的-本質的」な連関性」の証明を放棄している。ならば、憲法訴訟論的にはこの法廷意見ですべて必要な憲法判断は終わっており何も問題は残っていないのです。蓋し、憲法訴訟論的に見る限り、二件目の宮川少数意見は蛇足であり、三件目と四件目の田原少数意見は余興にすぎない。

と、そう私は考えています。

アメリカの憲法訴訟論を専らとする者としては、実は、これら一連の合憲判決が今後帯びるであろう社会的な影響や三件2名の反対意見に大騒ぎするばかりで、多数意見たる法廷意見の理路をなぜ左右の論者ともあまり俎上に載せないのか些か不満です。特に、今後この「国旗・国歌訴訟」のリーディングケースになるであろう5月30日の最初の判決の法廷意見の理路は見事であり、アメリカでも十分に通用する水準だと思いますから。閑話休題。


日の丸2

更に、一点だけ補足すればこの少数意見は、

>思想良心の自由は個人の内面に係わるものだから、その制約の合憲性を
>社会的相当性の観点から見るのは妥当ではない   


と述べている。蓋し、これこそ、朝日新聞レベルの間違い。すなわち、「思想および良心の制約」と「思想および良心の自由の制約」が法的には位相を異にしているように、それが憲法問題として、すなわち、社会的に問題とされる場面では、

>思想良心は個人の内面に係わるものであるが、思想良心の自由は個人の行動の
>社会的意味に係わるものである。よって、思想良心の制約の合憲性の判断においては、
>その行動や思想はあくまでも社会的相当性の観点から見られるべきである   


と、そう考えなければならないからです。この基本的観点を看過した少数意見は、よって、リベラル派からの国旗・国歌を否定し相対化しようとする為にする議論である。と、この点の指摘もマスメディアの報道ではほとんど皆無であり、左右いずれの論者から見てもそれは今後の日本における憲法訴訟の教育のためには生産的ではない。と、そう私は考えています。


尚、最初の最高裁判決。すなわち、停年退職後の再雇用拒否の是非が争そわれた5月30日の最高裁(第2小法廷)判決で最高裁は、「都教委に再雇用の決定に関して広範な裁量権を認めるのが妥当である」との東京高裁の判断を肯定追認しています。よって、年に何度か行なわれるにすぎない国旗・国歌の掲揚斉唱に際しての起立斉唱の有無と、日々の各教科の指導力や生活指導・進路指導の実績を都教委が総合的に判断した上で再雇用拒否を決定した以上は、起立斉唱の重要性自体の吟味から憲法判断は生じなかったと思います。換言すれば、都教委の広範な裁量権をもってしても否定されるべきではない人権の侵害があったか否かに絞って最高裁は判断したということ。

ならば、<国旗・国歌>は、教科・進路・生活の諸指導に比してそう重要ではない等の主張は、要は、都教委の職務命令が違憲ではないとしても再雇用を認めなかったについては裁量権の濫用があったと主張したいのなら、彼等リベラル派は、論理的に遡って広範な裁量権の合理性に踏み込む議論から始めるべきであった。

而して、やれるもんならやってミソラシどうぞ、ということです。


ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿ヽ(^o^)丿



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