松本震災復興大臣の辞職-「野党は与党に協力すべきだ」という主張について

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暴言大臣が一人お辞めになったそうですが、それはまあ論ずるには値しないこととして、彼の辞職会見を聞いていてどうしても違和を覚える言葉がありました。それは、「相変わらず嫌いな与野党」ということ。だって、君もその与党の議員じゃないの、と。当選を何度か重ねてきた与党の議員だからこそ閣僚にもなれたんじゃないの、と。

新聞記者や研究者が「相変わらず嫌いな与野党」と言ったのなら、それはまあ褒めはせんが、満更意味がないことはないでしょう。けどね・・・。

ということで、まずは情報の確認。以下の共同通信配信の記事は、珍しく世界中の大手の媒体に掲載されたものらしいです。要は、欧米の識者が(政治に関して日本関連の記事を読むなんて、ものすごーく、ものすごーく、少数派のマニアックな人を除けば、一応、その国の「識者」と言えると思いますから、)、今頭の中に描いている日本の政治の世界のイメージにはこの記事が少なからず影響していると言えなくもないものです。


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◎Reconstruction minister Matsumoto to resign over gaffes
Japan's disaster reconstruction minister Ryu Matsumoto tendered his resignation Tuesday only about a week after he assumed the newly created post, following a series of remarks that have angered people affected by the March 11 catastrophes in the country's northeast.

The move of Matsumoto, who came under fire over his remarks widely regarded as "high-handed," added another headache upon the unpopular Prime Minister Naoto Kan as opposition lawmakers are set to pursue Kan's responsibility for appointing Matsumoto for the post.

This could even affect the timing of the resignation of the premier, who last month announced his intention to step down once tangible progress is achieved in containing the nuclear crisis and rebuilding Japan.

Matsumoto was handpicked by Kan in late June to the post tasked with implementing reconstruction measures for areas that were hit hard by the March earthquake and tsunami, after enactment of a special law on the disaster reconstruction.

On Sunday, he held talks with Iwate Gov. Takuya Tasso and Miyagi Gov. Yoshihiro Murai when he visited quake-hit areas in Japan's northeast, and made a number of remarks that were regarded by many as arrogant and cold.・・・

Matsumoto told Tasso that the government "will help municipalities that come up with ideas but will not help those without them."

During the meeting, parts of which were open to the press, the minister also said that as he hails from the southwestern region of Kyushu, he is not familiar with where towns and cities in the disaster-stricken northeastern region of Tohoku are located.

(Kyodo/AP, July 5, 2011) 



◎松本復興担当大臣、失言による辞職が確定

日本の震災復興担当大臣の松本龍氏が、火曜日【7月5日】辞職を申し出た。新設されたこの役職に就任して1週間経つか経たないかの段階での辞職でり、日本の北東部を襲った3月11日の大震災の被災者を激怒させる一連の発言に伴う辞職である。

その発言は広範な層に「何様!」ものの反感を与えてしまうものである、自身の発言が批判の十字砲火を浴びていたにせよ、松本氏の辞職は人気の乏しい菅直人首相にとって新たな頭痛の種となった。というもの、菅首相に反対する立場の【与野党の!】国会議員からは、松本氏を震災復興対策大臣に任命した菅氏の責任を追及する声が高まってきているからだ。

松本辞職という事態は首相の退陣時期にも影響を与えることになるかもしれない。というのも、菅直人氏は、先月、原子力発電所の事故と日本の災害復興に目に見える形での成果が上がり次第辞職する旨、表明しているのだから。

松本氏の震災復興担当大臣就任については、6月下旬、菅直人氏自身が松本氏に頼み込んでこの職に就いてもらった経緯がある。而して、震災復興担当大臣とは、3月の地震と津波に手痛い被害を受けた地域の復興支援策を実行する権限を管轄する職であり、震災復興に関する特別法の制定にともなって作られた新しい職である。

日曜日【7月3日】、日本の北東部にある地震の被災地を訪問した松本氏は、岩手県知事の達増拓也氏と宮城県知事の村井嘉浩氏と会談した際に、それらを無礼で冷酷と受け取った向きもけっして少なくない、幾つもの問題発言を繰り返したのである。(中略)

例えば、達増氏に松本氏は、政府は「アイデアを自分から出してくる自治体は助けるけれど、そうでない自治体は見捨てる」と述べた。

而して、この達増知事と松本氏との会談の一部は、報道機関に公開されていてたのだけれど、この会談の中で松本大臣は、彼が日本の南西部である九州の出身者ということもあって、日本の北東部である東北地方にある今回の災害に被災した町や市がどこにあるのか詳しくは知らないとも述べたのである。 



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蓋し、「相変わらず嫌いな与野党」と言うのは松本議員の勝手だけれど、①グローバル化の昂進著しい、②福祉国家における、③大衆民主主義社会の政治においては、松本氏や鳩山由紀夫氏の如き資金潤沢な議員でも、つまり、どんなお金持ちの議員であれ、知識見識抜きん出た議員であれ、政党の一員の形を取らなければ個人の議員ではどうしようもないほど、国会で審議される法案・予算案は多様化し専門化している。

まして、例えば、「生牛肉の下拵えの仕方」にまで国の規制を求める声がけっして小さくはないことを想起するならば思い半ばを過ぎることですが、①②③の帰結としての、現下の行政権の肥大化の傾向の中では、国会で審議される法案・予算案は単に多様化・専門化しているだけではなく、一つの法律案には古き良き戦前とは異なり、広範で錯綜した利害が絡んでいる。

而して、国家が関与容喙しなければならない行政サービスの領域の拡大という誰もが否定できない現実を前にすれば、単に知識や能力の点だけではなく、どんな議員であれ政党の一員でなければ法・予算案に<物象化>するこの社会の複雑な利害を、到底仲介調整できる政治力をもてるわけがない。と、そう私は考えています。

ならば、「相変わらず嫌いな与野党」という松本氏の発言は、政治家、代議士の発言としては、単に、「僕は選挙強いもん、でもって、僕当事者意識ないもん」、と。そう言っているだけのことだろうと思います。


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けれども、問題は個別松本氏の辞任などではない。問題は、どうも彼の辞任という事実を受けてまたぞろ、というか、ここに至ってもと言うべきでしょうか、世の中には「政局や政争は止めろ」「野党は与党に協力しろ」と言う向きが少なくないと見受けられることです。流石に、狡猾な朝日新聞は「野党は与党に協力しろ」とはストレートには言わずに、そう「与野党とも国会で汗をかけ」とかなんとかぼかして書いているけれど。蓋し、このような主張には議会制民主主義が機能する前提条件を危うくしかねない誤謬が孕まれているの、鴨。と、そう私は考えます。

しかし、確かに、

>被災地のことを考えれば野党は与党に協力すべきだ

この命題に異議を述べる人は少ないでしょう。実際、私もそう思います。けれど、内政外交において基本となるイデオロギーや基本政策を異にする複数の政党が世論の支持を競って切磋琢磨する、そんな健全な議会制民主主義においては、この命題の意味は'''「与野党が意見の違いを精力的につめてお互いに妥協して早く法案・予算案を成立させなさい」'''ということであって、毫も、

>被災地のことを考えれば野党は与党の法案に賛成しろ

ということではない。これが、確信犯の菅直人氏を始め朝日新聞も、そして、「政局や政争は止めろ」「野党は与党に協力しろ」と語る論者の少なくない方々が失念している視座ではないでしょうか。もしそうなら、結局、選挙結果の出た次の日からその次の選挙の日まで国会は役立たずの無用の長物ということになるでしょうから。


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而して、自民党は大震災発生以来、菅首相の外国人献金問題を一旦不問にふす等々審議に協力してきた。実際、今通常国会の政府提出法案成立率はすでにここ4年間のどの国会よりも遥かに高いのです。

ならば、バラマキ4Kと不即不離の関係にある特例公債法の成立にも与野党の妥協が必須であり、他方、現在の所、政府与党がなんら妥協案を示さない状況で、「法案を成立させろ」と言うのは「野党に盲判を押せ」というのとなんら変わらない。畢竟、それは異なる政党間の切磋琢磨と妥協を前提とする議会制民主主義の否定でさえあるのではないでしょうか。

畢竟、現下、今の状況は、野党が同意できる妥協案を政府与党が出せばいいだけのこと。ボールは政府与党にある。そして、加之、その前提としての「ルールに従い戦っている相手同士」の信頼関係の再建もまた同様。その信頼関係を無くした張本人が菅内閣である以上、この再建の責任もボールもいずれも政府与党の側にある。蓋し、現下の情勢において「野党は与党に協力すべきだ」という意味は単にこれだけのことである。と、そう私は考えています。



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(2011年07月7日:yahoo版にアップロード)

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