覚書★保守主義と資本主義の結節点としての<郷里>(下)




◆グローバル化の昂進はB29の空襲よりも猛し

私達の郷里は福岡県大牟田市です。帰省する度にしみじみと思うのですが、故郷はやはり心地よい。この郷里に生まれて良かった日本人に生まれて良かったと本当にそう思います。「日本人の皮をかぶったアメリカ人」、より正確に言えば「九州人の皮をかぶったドイツ系アメリカ人」の私でさえそう思う。

しかし、日本では、例えば、今の小学生のほとんどが進学や就職して社会に出るだろう15年後、自分の「郷里」と呼べるコミュニティーを持つ日本人の割合は確実に減ると思います。実際、福岡県最南端に位置する私達の郷里であるこの地方都市の人口は、ここ40年間で約20万人から12万4千人と、38%近く減りましたから。

б(≧◇≦)ノ ・・・寂しい!

三池闘争で知られる、その福岡県大牟田市はかって三井三池炭鉱を擁する総合化学工業都市であり、大東亜戦争では1944年-1945年にかけて都合5~6回の空襲を経験しました。特に、1945年6月の2次に渡る空襲は激烈で各々100機を越えるB29の大編隊によるものだった由。この実質2晩の空襲によって誇張ではなく当時東東洋一を誇った大牟田の化学工場施設、ならびに、三井財閥の城下町たる大牟田市街は文字通り灰燼に帰しました。大牟田が被ったと同様の被害は、しかし、東京・大阪は言うまでもなく、室蘭も木更津も呉も被っている。まして況や、廣島・長崎においておや。

大牟田も長崎も廣島も東京も<B29>によって壊滅的な破壊を受けました。しかし、その後15年足らずで復興した。要は、それよりも早く終戦後10年以内にはそれらは<郷里>として再生を果たしたということ。然るに、(東)石炭から石油にシフトするエネルギー政策の転換、(西)京浜・京葉・中京・阪神エリアへの産業の移転、はたまた、(南)経済活動の東京一極集中という社会変動、そして、(北)企業の日本脱出、つまり、産業の空洞化という国際経済の動向の前には、我が郷里大牟田を含む<地方>の産業、而して、<郷里>は成すすべもなく解体させられています。

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重要なことは、この傾向は<地方>だけではないということ。実際、東京の神田や深川に行ってみなさいって、です。あるいは、神楽坂を歩いてみられたらこのことは誰しも肌で感じることだと思います。

畢竟、1945年12月8日に端を発する大東亜戦争の帰結として、<B29>が焼き尽くした神田も深川も、GHQによる占領が終わるか終わらないうちにほどなく、戦地や疎開先から戻ってきた江戸っ子の末裔や辰巳芸者の子孫達によって<郷里>として再建され復活した。しかし、神田も深川も、そして、山の手線内でほとんど唯一B29による戦災を逃れた神楽坂もバブル期に地上げを被り<郷里>は解体させられました。畢竟、グローバル化はB29よりも猛し、なのです。

バブルはGHQよりも猛し、産業構造の転換は核兵器よりも猛し、経済のグローバル化はB29よりも猛し。而して、「グローバル化はB29よりも猛し」という認識から「地方再生」が抱えている問題の構図はどう理解されるのか。私はそれを次のように捉えています。すなわち、

(1)<郷里>は土地ではなく、そこを<郷里>と感じる人々の心性に基盤を置いている

(2)<郷里>は一時的にはそのメンバーの多くがその土地を離れたとしても持続可能ではあるが、そのメンバーの多くが当該の土地において「社会生活-経済生活」を伴わない状態が持続する場合には、早晩、消滅する

(3)何故ならば、<郷里>の基盤たるそのメンバーの心性が<郷里>から離脱するから
 (そのような<郷里>は「父祖の地=ルーツ」という縁を帯びた<観光地>にすぎなくなるから)

(4)ならば、<郷里>再生の鍵は<郷里>の土地を媒介にして営まれる「社会生活-経済生活」を如何に恒常的にメンテナンスするか。不幸にして、ある郷里が消滅した場合、いかにして<郷里>を再構築するかという1点にかかっている。例えば、奈良県十津川村の人々が「郷里」たるこの母村を離れ、北海道の新十津川町という<郷里>を再構築したように。あるいは、イングランドからの移民が「郷里」を離れ、北米大陸に<郷里>たるニューイングランドの共同体を結んだように。


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それ以前から過大な相続税の負荷に押し出されたこともあり、地上げが横行したバブル期の前後までには、例えば、多くの江戸っ子の末裔は神田を離れ吉祥寺や三鷹、世田谷や杉並に移って行きました。他方、幸か不幸か神田に残った江戸っ子の末裔達は、自家の地所に5階建てなり10階建てのビルを建てそのペントハウスを住まいとしておられる。しかし、双方とも、謂わば「大地=ガイア」との交流を絶った人々にとって<郷里>のメンテナンスは至難を極めています。

春皐月、神田明神の祭りに吉祥寺や三鷹、世田谷や杉並から馳せ参じる江戸っ子の末裔は、最早、DNAを引き継いでいるという意味だけでの江戸っ子の<末裔>にしかすぎず、彼等も、漸次、神田の<郷里>メンバーではなくなるしかないのではないでしょうか。ならば、興味本位や失礼なもの言いに聞こえるとすれば私の本意ではないのですが、<2011年3月11日午後2時46分>に起因する福島の原発事故によって故郷を追われた福島県浜通りの人々が、その<郷里>を維持・復活させるには大変な困難を乗り越えなければならないことは想像に難くないと思います。閑話休題。



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◆資本主義との同衾がもたらすアンビバレントな愉悦

蓋し、「主義」の2文字がついているから紛らわしいのでしょうが、「資本主義」には「制度」の側面と「その制度を容認する理路・心性・主張」の二面があります。そして、(子)制度がすべてそうであるように、それは規範と状態の重層的な構造であり、かつ、(丑)言語や家族という自生的な制度がすべてそうであるように、交換を巡る制度たる資本主義の制度もまた時代によってその内容が変遷するものでしょう。而して、チャーチルが民主主義について語った顰みに倣えば、「資本主義は、所得と資源の分配と交換に関する最悪のシステムである、ただし、「社会主義」を筆頭に今まで存在したシステムを除けば」とは言えるの、鴨。

すなわち、現在の資本主義の制度とは、例えば、(一)所有権の制限、(二)契約の自由の制限、(三)過失責任の制限、および、(四)所得の再配分の導入、(五)ケインズ的な財政と金融における国家権力の政策の導入、(六)種々の国際的な制約という<修正>または<変容>を経た後のものなのです。と、高校の政治経済の復習的なコメントになりましたが、要は、・・・。

要は、これらの与件を<現実>として踏まえるとき、サッチャーもレーガンも、フリードマンもハイエクもある意味立派な「社会主義者-なんらかの資本主義の修正を前提とした社会思想・経済政策の唱道者」であったと言わざるを得ないということ。而して、再々になりますけれども、ケインズ政策の採用、並びに、労働基本権の確立や独占禁止法の導入等々によって資本主義が修正を加えられながらも立ち直ったように、(資本主義よりよりましな分配と交換の制度が登場しない限り)今後、投機的な金融と投資のあり方には大幅な規制と修正が加えられつつ資本主義は三度蘇るのでしょう。19世紀末-20世紀初頭と第二次世界大戦後の二回の復活の際と同様により強固な制度として。

畢竟、ある時代とある国家社会に限定したとしても、<保守主義>とは個々の経済政策のことではなく、経済政策を構成する諸施策のブレンドのレシピ、すなわち、配合比に顕現すると言える。そして、このような時間的と空間的の制約を外した場合、<保守主義>とは政策を構成する要素の配分比ですらなく、それは、(当該の社会と時代を生きる保守主義者に、その当該の時代と社会に最適な「政策の構成要素の配分比」を希求させるであろう)、冒頭の註に記した①~④という、<伝統>の価値を中核とする4個の態度のことに他ならないと私は考えます。以下、所謂「女系天皇制」を下敷きにして、クラインの壺の如き、あるいは、「父」と「子」と「聖霊」の間の三位一体の関係性の如き、<伝統>を巡る「個物と概念」の関係につき敷衍しておきます。

蓋し、<保守主義>が顕揚賞賛してやまない<伝統>は、例えば、「男系による皇位継承ルール」等々、その内容がある時点で固定した個々の伝統だけではなく、まして、「万世一系」という特定の<政治的神話>でもないでしょう。そうではなく、<伝統>としての「皇位継承ルール」とは、生態学的社会構造の変遷とともにそれに拮抗すべく恒常的に再構築される「皇統」の概念とその「皇統」概念の指示対象たる<皇統>の現実相に他ならない。否、より正確に言えば、新たな「個物」を、すなわち、新たな<皇統>を指示対象とする新たな「皇統概念」を再構築し続ける意思と態度と情念が<伝統としての天皇制>に他ならず、而して、そのような<伝統>に価値を置く社会思想が<保守主義>なのだと思います。尚、「女系天皇制」と<保守主義>との関連については下記拙稿をご参照いただければ大変嬉しいです。

・「女性宮家」は女系天皇制導入の橋頭堡
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60907124.html

・覚書★女系天皇制は<保守主義>と矛盾するものではない
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60896992.html


而して、資本主義は、確かに、(甲)利潤の追求が自己目的化する(資本の自己増殖を基本的には制御できない)、(乙)資源と所得の分配が基本的には<市場>に任せられ、<欲望の暴力>が支配する無政府状態的システムではあるが、その不具合を漸次修正しつつも人類は当座それと添い寝するしかない。畢竟、この諦観というか、現世利益を期待しない大人の態度からは(要は、保守主義の立場からは)、「倒産や産業の空洞化こそ資本主義の強靱さ(robustness)と資本主義社会の活気(dynamism and vitality)の裏面」とも理解できるの、鴨。

蓋し、個々の郷里の消滅もまたこの資本主義の強靱さと活気の一斑ではありましょう。けれども、<郷里>が前々項で述べたように人間存在にとって不可欠かつ必須なものとする私の理解が満更根拠のないものではないとすれば、再々になりますけれども、人間には個々の故郷の衰退消滅に関わらず、恒常的に<郷里>を再構築していく他に進むべき道はない。

蓋し、当分の間にせよ、期限未確定のその当分の間は「資本主義との添い寝」は不可避。而して、そういう、不本意な同衾の継続という不愉快な状況下で、しかも、<保守主義>はその憎むべき資本主義との協働作業の<結晶>でもある<郷里>を再構築し続けるしかない。しかし、<郷里>を巡るこのような不本意で不愉快な運命を誠実に生きる誇らしさ、このアンビバレントな愉悦とその希求。これこそが、左右の教条主義が囁きかける現世利益を一切排除する現在の<保守主義>を信奉する者が堅持すべき態度と覚悟であり、かつ、期待してもよい報酬である。

と、そう私は考えます。

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尚、老婆心ながら本記事に用いた画像について一言。
画像の<女神様>は、「中島みゆきさん=天照大神」「キムヨナ姫=神功皇后」と同様、
弊ブログでは「木花咲耶姫」と同一神格のほしのあきさんですよ、為念。


ヽ(^o^)丿


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